子どもの身長で悩んでいませんか?成長をサポートする方法
投稿日: 2024.04.19
子どもの身長がなかなか伸びない、平均よりも低いなど、子どもの身長に関する悩みを持つ人も多いでしょう。
遺伝の要素が大きいといわれる「子どもの身長」ですが、運動や食事に配慮して、生活習慣を整えると結果的に大きな差が出ます。
少しでも「子どもの背を伸ばしたい」と思っているママ・パパは知ってほしい運動と身長の関係について解説します。
もくじ
そもそも成長って? 背が伸びる仕組みについて
子どもの身長が伸びるというのは、いつ・どの部分が成長しているのでしょうか。
背が伸びる仕組みについて、基本からおさらいしてみましょう。
子どもの成長を段階別に見てみよう
子どもは生まれてから体のあらゆる部分が育って大人になっていきますが、全ての部位が同じスピードで成長していくわけではありません。
神経や身体、リンパ、生殖器など、それぞれのカテゴリーで成長のピークが違い、そのピークに合わせて習得させると、吸収しやすいといわれます。
下のグラフは、20歳を100として年齢ごとに成長のピークを表した「スキャモンの発育・発達曲線」です。
スキャモンの発育・発達曲線
(出典:国立スポーツ科学センター)
4つの型・カテゴリーについて解説しましょう。
身長や体重、内臓などの成長・発達を表す線。乳幼児期(0〜4歳)と思春期(13〜18歳)の発達が著しく、学童期はゆるやかな成長を表しています。18歳頃でほぼ100%に達成します。
神経の発達は生まれてから6歳頃までに急激に発達し、大人のほぼ80%まで達します。その後はゆるやかに発達し、思春期以降はほぼ横ばいです。
免疫力を強める扁桃やリンパ節などのリンパ組織の発達は、6歳でほぼ100%、12歳頃に180%にまで達します。その後は徐々に低下し20歳頃には大人レベルまで戻ります。
生殖器の発育曲線で、これにより男性ホルモン・女性ホルモンの分泌が促されます。思春期に急激に発達します。
身長の伸びはこの「一般型」の体の成長のグラフに重なっており、これらの曲線に合った運動を上手に取り入れることで、効率よく心身が育ち身長を伸ばすことができます。
例えば、神経系が著しく発達する3〜8歳の「プレゴールデンエイジ期」には、基本的な体を動かし方やリズム感、バランス感覚を習得するのにベストな時期。
また神経系の発達がほぼ完成する「ゴールデンエイジ期」は、スポーツの複雑な技術を短期間で習得できる、まさに黄金期です。
そして思春期に重なる「ポストゴールデンエイジ期」は、体が大きく発達する時期なので、筋力や体力を身につけるためのトレーングも有効です。
身長が伸びる仕組みについて
「背が伸びる」=「骨が伸びる」ことです。
子どもの骨には、隣の骨と接する端の部分に骨端線(成長線)と呼ばれる軟骨部分(成長軟骨)があります。
この軟骨部分が細胞分裂を繰り返して増殖し、伸びた部分が固まって骨になり成長していきます。
この軟骨部分も年齢と共にやがて骨に変化し、硬くなると成長が止まります。
大人になると身長の伸びが止まるのは、このためです。
身長を伸ばすために大切な要素とは
子どもの身長を伸ばす要素や成長を促す要因は、
【外的要因】睡眠、栄養、運動、生活習慣、環境
などが挙げられます。
なかでも「遺伝」が身長に影響するのは8割といわれ、運動や生活習慣、摂取する栄養によって変化するのは2割なのだそう。
つまりこの2割の部分で、骨や筋肉の「伸び」をサポートし、成長ホルモンが十分に分泌されるよう環境を整えましょう。
身長がグンと伸びる「成長スパート」とは?
子どもが生まれてから4歳くらいまでの「乳幼児期」と、小学校高学年くらいから始まる「思春期」、この子どもの背がグンと伸びる2つの時期を「成長スパート」と呼びます。
そしてこの2つをつなぐ学童期(5~12歳ごろ)も身長に大きく影響します。
それぞれの時期の特徴や、身長を伸ばすためのポイントについて説明しましょう。
乳幼児期 0〜4歳頃【第1の成長スパート】
生まれた時に約50cmだった身長は、1歳で約1.5倍、4歳になる頃には2倍の約100cmになります。
この時期、身長に直接影響するのは「栄養」です。
1歳になるまでは母乳やミルク、離乳食などで栄養をたっぷり摂りましょう。
また最初の成長スパートであるこの時期に、好き嫌いなくさまざまな食材を食べる習慣を身につけ、毎日3食しっかり食事をすることが重要です。
この時期に低栄養の状態が続くと、身長の伸びに影響が出る可能性があります。
学童期 5〜12歳頃【成長スパートをつなぐ時期】
身長が1年間に5〜7cmずつ伸びる時期です。
思春期の成長スパート前のこの時期の身長の伸びが、大人になった時の身長を1cmでも大きくします。
学童期には主に「成長ホルモン」の働きによって身長が伸びます。
生活習慣を整えて、適度な運動をすることで深くて十分な睡眠習慣が身につき、ホルモンの分泌を促します。
また成長ホルモンの材料になるアミノ酸、つまり良質なタンパク質を摂取することも大切です。
思春期 13〜18歳頃【第2の成長スパート】
大人になる前の脳と体が大きく成長する、第2の成長スパートの時期です。
思春期の成長スパートには、あまり個人差が見られず、誰でも背がグンと伸びるのが特徴。
女の子は11歳前後、男の子は13歳前後に成長スパートを迎え、大体18歳頃にはゆるやかに身長の伸びが止まるといわれます。
思春期に分泌される「性ホルモン」が成長ホルモン分泌を促し、直接骨にも働きかけることで、身長を伸ばします。
骨や筋肉を刺激し、ぐっすりと眠るためにも適度な運動は欠かせません。
またタンパク質やカルシウム、ビタミン類などの骨や筋肉と作るための栄養摂取も重要です。
気になる最新の平均身長は?
「発達は千差万別」と頭ではわかっていても、やっぱり気になるのが平均身長。
ここでは最新の年齢別・性別平均身長をチェックしてみましょう。
男子の平均身長
- 5歳
- 111.0cm
- 6歳
- 116.7cm
- 7歳
- 122.6cm
- 8歳
- 128.3cm
- 9歳
- 133.8cm
- 10歳
- 139.3cm
- 11歳
- 145.9cm
- 12歳
- 153.6cm
- 13歳
- 160.6cm
- 14歳
- 165.7cm
- 15歳
- 168.6cm
- 16歳
- 169.8cm
- 17歳
- 170.8cm
女子の平均身長
- 5歳
- 110.1cm
- 6歳
- 115.8cm
- 7歳
- 121.8cm
- 8歳
- 127.6cm
- 9歳
- 134.1cm
- 10歳
- 140.9cm
- 11歳
- 147.3cm
- 12歳
- 152.1cm
- 13歳
- 155.0cm
- 14歳
- 156.5cm
- 15歳
- 157.3cm
- 16歳
- 157.7cm
- 17歳
- 158.0cm
子どもの身長について親が知っておきたい基礎知識
遺伝
子どもの身長の約8割が、遺伝によるものといわれます。
両親の身長から子どもの身長を予測する式があるので、「うちの子はあと○cmくらいは伸びそうだ」と想定することができます。
{(父親の身長+母親の身長+13)÷2}+2
● 女の子
{(父親の身長+母親の身長−13)÷2}+2
例えば、父親が175cm、母親が160cmの男の子なら、
{(175+160+13)÷2}+2で、176cmが目安になります。
(出典:文部科学省|令和3年度学校保健統計)
もちろんこれは想定範囲なので、これより大きくなることも、小さいこともあります。
食事
カルシウムやタンパク質を積極的に摂るのはもちろん、一番大切なのはバランスよく栄養素を摂ること。
栄養は互いに影響し合いながら体に吸収されていくので、栄養素単体ではうまく体に取り入れられなかったり、吸収率が落ちてしまうことがあります。
身長の伸びが止まる18歳頃までは、
◯ タンパク質(骨の基質を作る)…肉、魚介類、大豆製品、卵、乳製品
◯ カルシウム(骨を頑丈にする)…小魚、乳製品、海藻類、野菜
◯ 亜鉛(成長ホルモンの分泌を促す)…魚介類、肉、大豆製品
◯ マグネシウム(骨を強くする)…海藻、大豆製品、ナッツ類
◯ ビタミンDやK(カルシウムの吸収促進)…きのこ類、野菜
など、過不足なくバランス良く摂るようにしましょう。
そして、子どもの背を伸ばすための食に関する注意点が2つあります。
① ジュースや甘いお菓子類の摂りすぎに注意
砂糖に含まれる糖分を分解するために、アミノ酸やビタミンB群、亜鉛、カルシウムなどの骨の生成に必要な栄養素を使ってしまいます。
② インスタント麺やスナック菓子はなるべく摂らない
インスタント麺やファストフード、清涼飲料水、スナック菓子などに多く含まれるリン塩酸は、摂取したミネラルやカルシウムと結合して体外に排出させてしまいます。
睡眠
子どもの成長、特に長期に渡って身長を伸ばし続けるには「成長ホルモン」が大きな役割を果たします。
成長ホルモンは睡眠中、特に入眠直後の90分間にもっとも分泌されるので、この時にぐっすり・深く・中断されずに眠ることが大切。
そのため、「寝る前はゲームやスマホなどをしない」「カフェインを摂らない」「食事は寝る2時間前までに」など、質の良い眠りを確保できるようにしましょう。
また眠りの質をアップさせ、成長ホルモンにしっかり働いてもらうには、就寝時間を揃えることも重要。
睡眠リズムや体内時計が整うと、骨の細胞分裂も盛んに行われるようになり、身長をより伸ばしやすくなります。
運動
子どもの身長を伸ばすために、「運動」は欠かせない要素。
なぜなら運動による骨や筋肉への刺激が、身長の伸びにダイレクトに影響するからです。
激しいトレーニングや負担の大きい筋トレなどよりも、子どもが好きなスポーツを楽しみながら行うのが理想です。
子どもが幼い頃は外遊びの時間をたっぷり取ったり、小学生以上になれば習い事や放課後遊びなどで体を動かすのも有効です。
適度な運動は「食欲」や「深い睡眠」にもつながり、結果的に骨を丈夫に育て、身長の伸びも促進することになります。
環境
「友だち関係などに悩みがある」「お母さん・お父さんが喧嘩ばかり」など、子どもに大きなストレスがかかったり、精神的に不安定な状態が続くと、成長ホルモンが分泌しづらくなると言われています。
また子どもの身長を伸ばすには、思春期に入る時期を遅くして、成長ピーク前の期間を長くすることも有効です。
過度な精神的プレッシャーを受けたり、不安定な環境にいると、子どもの思春期が早まってしまうことがあるので、家のなかでは子どもが子どもらしく伸び伸びと過ごせるように心がけましょう。
子どもの身長と運動には、どんな関係があるのか?
子どもの身長を伸ばすには「栄養・運動・睡眠・環境」など様々な要因が、お互いに連携し合っています。
なかでも「運動」は骨を丈夫にしたり、食欲を増進させたり、質の良い睡眠を取るために不可欠なもの。
成長ホルモンを促進するためにも、幼児〜学童期〜思春期にかけては、1日60分程度の運動が適しているといわれます。
ここでは「運動」に注目して、体や身長にどんな影響があるのかを見ていきましょう。
運動と骨の関係
適度な運動は骨を刺激し、成長のための細胞分裂を促します。
バスケットボールやバレーボールなど、「ジャンプの多いスポーツは身長が伸びる」と言われますが、ジャンプで骨に圧がかかることで新しい骨を作る「骨芽細胞」が刺激され、骨が硬く丈夫に育つことと混同されて伝わっているようです。
身長を伸ばすには、体をひねる・そらす・曲げる・ジャンプするなど、全身をまんべんなく動かす運動が理想です。
特定のスポーツでなくても、縄跳びや鬼ごっこなどの全身を使う遊びでも十分なので、日光を浴びて屋外で遊ぶ時間をたっぷり確保したいですね。
運動と筋肉の関係
骨の周囲を覆っている「筋肉」が硬くなっていると、骨の伸びに筋肉が追いつかなくなることがあります。
普段から筋肉をほどよく使い、ストレッチなどで柔らかくしなやかにしておきましょう。
また筋力が弱くなって姿勢が悪くなると、血液やリンパの流れを妨げ、中枢神経や運動神経を圧迫してしまいます。
よい姿勢を維持するための筋肉をつけ、猫背にならないように気をつけましょう。
「筋力トレーニングは背が伸びなくなる」という説もありますが、自重トレーニング(自分の体重を負荷にして行う筋力トレーニング 例:腕立て伏せや腹筋など)程度の筋力トレーニングであれば、身長には影響しないと言われています。
ただし体に合わない長距離走や重すぎるダンベルを使った筋力トレーニングなど、負担が大きいトレーニングは行わないようにしましょう。
運動と生活リズムの関係
適度な運動をすることで、食欲がわきます。
そして夜は早く就寝して、深くて質の良い睡眠が取れ、朝もすっきり目が覚めるでしょう。
この繰り返しによって規則正しい生活リズムになり、子どもの体内時計が整います。
体内時計が整うと、夜は体が「そろそろ眠る時間だ」と自動的に準備を始め、成長ホルモンの分泌や生理的な活動を促してくれるようになります。
毎日寝る時間や起きる時間が違う不規則な生活リズムだと、このコントロールができなくなるため、身長を伸ばす成長ホルモンが出にくくなってしまいます。
子どもの身長でもう悩まなくていい!
子どもの身長を伸ばすために大切なのは下記の6つです。
◯ 栄養バランスのよい食事
◯ 適度な運動
◯ 規則正しい生活
◯ 深くて質のよい睡眠
◯ ストレスのない生活
◯ 甘いものやインスタント食品などを減らす
つまり特別なことは必要なく、毎日の生活を丁寧に過ごすことが、子どもの身長を伸ばしてあげられるということ。
「サプリメントを飲ませた方がいいのか」「牛乳が足りていないかも」などと、悩んだり心配しすぎなくて大丈夫です。
それよりも、子どもが安心して過ごせるような家庭内の雰囲気を心がけ、子どもの生活リズムを整えたり、栄養面でサポートしてあげましょう。
・子どもの身長は8割が遺伝、2割は運動や生活習慣、摂取する栄養によって変化する。
・子どもの背が急激に伸びるのは「乳幼児期」と「思春期」の2回。
・最終的な身長を高くするには、学童期に成長ホルモンの分泌を促し、身長を伸ばしておくことが重要。
・身長を伸ばすためには、バランスのよい食事・適度な運動・質の良い睡眠・規則正しい生活リズム・ストレスのない生活が大切。
(参考文献)
・日本体育協会スポーツ医・化学研究報告 | 日本人青少年の最終身長予測と体力の発達に関する研究
・文部科学省 | 令和3年度学校保健統計(確報値/令和4年11月30日発表)
・ぬかたクリニック | どうすればもっと身長を伸ばすことが出来るのか?
・厚生労働省 | e-ヘルスネット 健やかな睡眠と休養〜快眠と生活習慣
・からだカルテ | 遺伝だけではない! 子どもの身長を伸ばす法方とは?
・すくすくのっぽくん | 子どもの成長のための3大要素とは〜運動編