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子どもの学力と運動力向上のカギになる朝食習慣

更新日: 2023.10.17
投稿日: 2023.10.20

朝食を食べた方がいいのは知っていても、朝食が「何に」「どんなふうに影響するのか」を具体的に知っている人は、意外と少ないかもしれません。

エネルギー補給や生活リズム、ホルモンの分泌まで、さまざまな影響がある「朝食」。

なぜそんなに朝食が大切なのか、さまざまな視点から解説していきます。

朝食を摂らない子と毎日摂る子では、こんなに差が出る!


文部科学省やスポーツ庁が「朝食が子どもの学力や体力に与える影響」を調べたデータがあります。

これを見ると、驚くほど一目瞭然に「朝食」を食べるか食べないかの差が出ています。

まずは「学力への影響」から。
小学校6年生と中学3年生で、国語と算数の学力調査平均正答率を比べたものです。

一番左から「毎日食べている(青)」「どちらかといえば食べている(水色)」「あまり食べていない(ピンク)」「全く食べていない(紫)」の順番に並んでいます。

朝食には「エネルギー補給」や「体内時計を整える」などの目的がありますが、このように学習にもダイレクトに影響があることがわかりました。

特に脳のエネルギーであるブドウ糖は長く蓄えておくことができないので、3食きちんと食べて補うことが重要です。

次のグラフは、朝食がどのように体力に影響するかを調べたグラフです。同じく小学校6年生と中学3年生で体力や運動能力を調べたところ、下のような結果が得られました。

体力調査の内容は、「シャトルラン」「50m走」「持久走」「ボール投げ」などの基本的な体力・運動能力を測ったもので、こちらもやはり朝食を毎日食べている子の数値が明らかに高くなっています。

朝食が大切な理由


朝食が子どもの学習や体力に大きな影響を与えることはわかりました。

ではいったい朝食のなにが子どもにプラスの作用をするのでしょうか。

ここでは朝食が大切だといわれる理由を具体的に見ていきましょう。

エネルギー補給で体にスイッチが入る

子どもは体や脳の成長がめざましく、たくさんの栄養が必要になるので、朝食は絶対に欠かせないエネルギー補給です。

寝ている間は糖などの栄養消費が進んでいるため、朝めざめた時の子どもは完全なエネルギー切れの状態。

エネルギータンクが空っぽの状態で、勉強をしたり体を動かしても、本来の力は出せません。

朝食を食べてエネルギー補給をすることで体にスイッチが入り、1日を元気に過ごすことができます。

噛むことで脳が動き出す

食べ物をよく噛むことで、脳内の血液量が増えて、脳が刺激されることはよく知られています。

朝食をよく噛んで食べると、眠っていた脳が動き始め、子どもの意欲ややる気が出てきます。

そして、よく噛むことよって出る唾液によって消化吸収がよくなり、虫歯にもなりにくくなります。

「噛みごたえのある朝食メニューにする」「炭水化物だけで食事を終わらせない」などの工夫をすると、より噛むようになるでしょう。

体温が上がり目が覚める

人はより深く眠るために、体の奥深くの体温(深部体温)を下げます。

それは昼間フル回転で活動していた脳を休ませて、脳の疲労を取り除くためといわれています。

朝食を摂ることで下がっていた体温が上昇し、体や脳の動きを活発にします。

朝食は子どもの体を目覚めさせ、1日のスタートを切るための大切な準備運動なのです。

生活リズムが整い健康になる

朝起きて陽にあたると、体が「朝だ」と感知して体内時計がセットされます。

そして朝食を食べることで、脳内にセロトニンというホルモンが分泌されます。

セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、気持ちを落ち着かせたり、集中力を高めたり、子どもの生活や学習になくてはならないもの。

そしてセロトニンのもう一つの役割は、夜ぐっすり眠るためのホルモン「メラトニン」の材料になることです。

つまり朝起きて朝食を食べ、しっかりセロトニンを分泌させないと、夜の深い睡眠にまで影響が出てしまうということ。

昼間は活動して夜はぐっすり眠る、この規則正しい生活リズムは「朝食」が鍵を握っています。

便秘の予防・解消になる

ストレスの多い今の子どもたちは、「便秘」の悩みも多くなっています。

朝食をしっかり摂ることで、夜の間に空っぽになった胃腸が刺激され、朝の排便がスムーズになります。

便秘解消には「朝ごはん→排便」の自然なリズムを作ってしまうのが、一番の近道。

子どもは学校や園ではなかなかゆっくりトイレに行けないので、できれば自宅で済ませてから登校するのがベストですね。

肥満防止

朝食を食べないと、1日の食事回数が2回に減ります。

すると肝臓での中性脂肪やコレステロールの合成が増えて、体脂肪の蓄積が進んでしまい肥満につながります。

また朝食を食べずに学校へ行くと、前日の夕食からお昼まで何も食べていない状態になり、昼食を食べた瞬間に血糖値が急激に上昇します。

これが糖尿病予備軍につながり、肥満を引き起こすことがあります。

「ダイエットしたいから朝食を抜く」のは、実は逆効果なのです。

朝食で必要な栄養素


朝食が子どもの健康や成長に欠かせないことがわかったところで、朝食で摂りたい栄養素について考えてみましょう。

朝の忙しい時間の朝食の準備は大変なだけに、ポイントをおさえて、手間をかけずに用意したいもの。

毎日似たようなメニューでも、栄養のバランスが摂れていれば十分なので、朝食に必要な3つの柱をしっかりおさえましょう。

ごはんやパンなどの「炭水化物」

エネルギー源になる「炭水化物」は、ごはん、パン、麺類などの主食に多く含まれ、必ず摂りたい栄養です。

炭水化物は食べるとブドウ糖に分解され、体を動かしたり、頭を働かせる時のエネルギーになります。

つまり、炭水化物を摂らないと、ガソリン切れの車状態でパワーが出ないということ。

また、さつまいもやジャガイモなどのでんぷん質も、大切なエネルギー源になります。

肉や魚、卵、牛乳などの「たんぱく質」

たんぱく質は筋肉を作り、皮膚や血液の元にもなる重要な栄養素。

栄養素を体全体に運び、体温を上げたり体を活動的にする役割もあります。

また、ホルモンはそのほとんどがたんぱく質でできているので、ホルモン分泌を助ける意味でも朝からしっかり食べたいですね。

できれば、植物性たんぱく質(大豆・納豆・豆腐など)と動物性たんぱく質(肉・魚・乳製品など)を両方同時に摂ると、効率よく吸収されるといわれます。

野菜やくだものなどの「ビタミン、ミネラル類」

野菜や果物、海藻などに多く含まれるビタミン・ミネラル類も朝に摂りたい栄養。

なぜなら「ビタミン」や「ミネラル」は、炭水化物やたんぱく質を分解したり合成したり、体が効果的に利用できるように変身させるのが役割だからです。

特に成長期の子どもはたくさんの栄養やエネルギーが必要なので、炭水化物やたんぱく質と一緒にビタミンとミネラルを摂らないと、せっかく摂った栄養を活かしきれません。

しかもこの2つは体の中で作れないため(ビタミンDだけが唯一合成できる)、食べ物からの摂取が大前提。

「野菜が無理な時は果物を食べる」など、何かしら代わりのものを摂るようにしましょう。

今、注目されている食品

● グルテンフリー ●

「グルテン」は小麦粉に水を加えてこねるとできるたんぱく質のことで、パンのふわふわした食感などおいしさの元になる成分です。

グルテンを含むパンや麺類、ケーキなどの小麦粉食品はおいしい反面、アレルギーの原因になることもあります。

アレルギー症状が出ていなくても、グルテンフリーの食材を取り入れたら「子どもの肌荒れや頭痛、腹痛が治った」「花粉症や喘息が軽くなった」ということもあり、最近は「グルテンフリー」のパンや麺類などに注目が集まっています。

最近は米粉などを利用したパンやうどん、ケーキなどのグルテンフリー食品も増えているようです。

● オートミール ●

オートミールは、オーツ麦を脱穀して食べやすくしたもので、食べても急激に血糖値が上がらない低GI食品としても注目されています。

オートミール1食分30gをお茶碗1杯の白米と比較すると、食物繊維は1.3倍、カルシウムは3.1倍、鉄分は7.8倍が含まれ、低カロリーで栄養価が高い食品として人気が高いのです。

オートミールをおかゆにすれば栄養たっぷりの離乳食にもなり、ダイエットや美容を目的に食べる人も増えています。

ただしオートミールだけだとたんぱく質やビタミン類が不足しがちなので、ヨーグルトや果物と一緒に混ぜたり、オートミールがゆにしておかずと一緒に食べるのがおすすめです。

食べ方のポイント


朝食に限らず、食べる順番やポイントを知っておくと朝食がさらに効果的になります。

ここでは食べ方のポイントについて、いくつか紹介しましょう。

食べる順番

ダイエット中の人や糖尿病が心配な人などが提唱する、「ベジファースト(最初に生野菜などの野菜を摂る)」は、血糖値の急上昇を抑えたり、満腹感を得られたりとメリットもありますが、子どもの場合は少し体が冷えてしまうかもしれません。

子どもの場合は、「汁物を最初に」がおすすめです。その理由は…

・体温が上がり、内臓が食事の準備を始める
・汁物→おかず→ごはんの順番にすると血糖値の急上昇が抑えられる
・お箸の先を濡らすことで、米粒などが箸につきにくくなる

もともと「汁物からいただく」という和食のマナーとして知る人も多いですが、体への具体的な効果もあるのですね。

偏りのない食事

朝から手の込んだ料理を作る必要はありません。例えば…

・納豆卵がけごはん+具沢山味噌汁
・じゃこチーズパン+プチトマト+牛乳
・おにぎり+卵焼き+ヨーグルト

など、「簡単だけど、バランスが良い」食事は、少し気を付けるだけで実行可能なメニューばかり。

例えばたんぱく質が足りないと思ったら、牛乳・ヨーグルト・卵・豆腐を足す。

野菜が足りなければプチトマトや果物を食べる、などの「ちょい足し」で十分です。

「完璧を目指すがゆえに朝食を食べられない」よりも、「できそうなことからやってみる」姿勢が、子どもの体や脳の成長に差をつけます。

食事中の水分補給

食べ物を口の中でよく噛むことで唾液が分泌され、消化・吸収されていきます。

噛んでいる途中で水やお茶で流しこんでしまうと、唾液の分泌が減ってしまい、唾液腺の発達や噛む力を邪魔してしまいます。

唾液には、消化を助け、体の免疫力を保つという大切な役割があります。

また食事中に水分を摂りすぎると、それでお腹がいっぱいになってしまい、必要な食事が摂れなくなることも。

食事中はよく噛んで飲み込むを繰り返し、水分補給は食後にとっておきましょう。

また朝食後の水分補給を「牛乳」にすると、カルシウムやビタミンB群を同時に摂取できますね。

朝食を摂ることは学力、運動のアップにつながる


朝の子どもの体は、前日の夕食から栄養を摂っておらず「ガソリンの入っていない車」と同じ状態。

そんな状態でどんなに動かそうとしても、勉強や運動を頑張れるはずはありません。

事実、朝ごはんを毎日しっかり食べている子ほど、学力面・運動面の両方によい結果が出てるのです。

特に子どもは一度にたくさんの量を食べられないので、1回の食事を抜かすことが大きな影響を与えてしまいます。

「もともと朝が弱い子」「本人が食べたがらない」ということもあるでしょう。

そんな子には果物やヨーグルトなど、本人が少しでも食べられそうなものから始めて、ゆっくり朝食を摂る習慣をつけてみましょう。

子どもの体にしっかりエネルギーを充満させてから、元気に学校や園へ送り出したいものですね。

まとめ

・朝ごはんを食べる子は、学習力・運動力の両方でよい結果が出て、「食べない子」と差がついてしまう。
・朝ごはんは、子どもにとって「エネルギー補給」「生活リズムを整える」「脳の活性化」「体を温める」などたくさんのメリットがある。
・バランスのよい朝食は、無理せず簡単なものから取り入れてみよう。毎朝食が無理なら、少しずつからでも始めればOK。

(参考文献)

・文部科学省 | 生活リズムの確率と朝食
・「早寝早起き朝ごはん」全国協議会 | なぜ「早寝早起き朝ごはん」が必要なのでしょうか
・日本安全食料料理協会 | 幼児期の朝ご飯を
・ベネッセ教育総合研究所 | 【子どもと朝食のあり方】 子どもにとって朝食はなぜ大切か
・株式会社 明治 | 朝ごはんの大切さについて まずは朝食をとりましょう!
・LUCE |  あたま・こころ・からだ はぐくむ食事って? 朝食を食べると子どもの学力と体力がアップする!?
・テルモ体温研究所 | 睡眠と体温

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