子どもの心を強くする スポーツを通じて身につける成長マインドセットとは?
更新日: 2023.09.07
投稿日: 2023.09.26
マインドセットとは、その人が育ってきた環境によって形成された考え方の癖や心の持ちようのこと。
失敗をした時やうまく行かない時に「次はどうしたらいいか」「この失敗を次に活かそう」と考えられる成長マインドセットになると、子どものスポーツや勉強に対する意欲も高まり、前向きな気持ちに変化します。
スポーツを通じて成長マインドセットを身につける方法を考えます。
もくじ
そもそもマインドセットとはなにか?
マインドセットとは、人が育ち生きてきた環境や経験、教育によって作られた、考え方の癖や思考パターン、心の持ち方のこと。
生まれついた性格も無関係ではありませんが、マインドセットは「習慣」なので、小さい頃から考え方の訓練をしておくと、一生涯維持できます。
アメリカの心理学者、キャロル・S・ドゥエック氏によると、マインドセットは固定マインドセット(フィックスト・マインドセット)と成長マインドセット(グロース・マインドセット)の2種類あります。
固定マインドセットの考え方は、
・人の能力は生まれつきで、努力しても意味がない
・変化や想定外のことを怖がる
・なんでも人のせいにする
・自分の意見は正しいと思い込む
それに対し、成長マインドセットの考え方は、
・人の能力は努力次第で変わる
・変化や想定外のことを受け入れる
・学ぶことや努力を惜しまない
・人の意見を聞きたがる
成長マインドセットは、考え方が柔軟で努力を惜しまない前向きな人間性、高い非認知能力があることがわかります。
保護者なら、子どもに成長マインドセットを身につけてほしいと思うでしょう。
そして成長マインドセットは、スポーツを通してなら自然なかたちで確実に「習慣」として身につけられ、子どもの心を強く成長させます。
子どもが成長マインドセットを身につけるにはスポーツが役立つ
人は失敗をした時「どうしてこんなことしちゃったんだろう」「もうだめだ」と失敗したことに気持ちが引きずられてしまいます。
特に子どもは経験が少ない分、気持ちを切り替えるのが難しく、落ち込んでしまうこともあるはず。
そんな時、「次はどうしたらいいか」「この失敗を次に活かそう」と考えられるようになると、失敗が失敗でなくなり、次へのステップになります。
そして失敗を恐れなくなったり、常に前向きな気持ちを持つようになり、自信を持てたり、周囲との関係性もよくなったりと、その子の成長の糧になってくれるでしょう。
ここで重要なのは、成長マインドセットは失敗から目を逸らすことではないという点。
一見失敗に見えることの原因を探し、次に役立てるヒントにできるのが成長マインドセット。
そしてスポーツではこの「失敗→原因を考える→次に活かす」のサイクルが見えやすいため、成長マインドセットへの練習がしやすいのです。
習い事や日常生活にヒントが!「成長マインドセット」の育て方
子どもの成長マインドセットを育てるには、スポーツや日常生活の中にヒントがたくさんあります。
そして成長マインドセットが身につくと、「感情コントロール」や「対応力」「自分を信じる力」「自己肯定感」「社会性」などの非認知能力も同時に高まります。
子どもが前向きに成長マインドセットを身につけるために、周囲が心がけることは、
○ 結果よりも「成長」に注目する
○ 失敗から目をそらさない
○ 学びのヒントを見つける習慣を
○ 障壁やハードルは「乗り越えるチャンス」
○ 一緒に挑戦体験をする
結果よりも「成長」に注目する
「試合で活躍できるか」「メンバーに選ばれるかどうか」は、子どもの努力よりも運やタイミングなどに大きく関係します。
結果に注目すると、子どもを「成功か失敗か」「勝つか負けるか」の白黒で評価することになってしまいます。
それよりも子どもが「練習を休まずに行った」「辞めたくなったこともあったけど、そのスポーツを続けた」という努力やプロセスに着眼し、子どもが頑張ったことや成長したことを認めましょう。
子どもは努力すれば成長できることを実感でき、「変われる自分」「伸びる自分」を信じられるようになります。
失敗から目をそらさない
・試合に負けても他の話題で話をそらす
・失敗してくやしがる子どもに「いつまでもメソメソするな」と言ってしまう
大人は落ち込む子を見ると、つい別の話題でごまかしたり、「次」を考えるように促してしまいがちです。
しかし「なぜ失敗をしたか」を分析して、「次はどうすればいいか」を冷静に前向きに考えることで、実は「失敗したことは大したことではなかった」と気づくことがあります。
失敗から目をそらすのは、「失敗は悪いこと」「失敗したら取り返しがつかない」と子どもに教えているようなもの。
例えば、大人が「今日の料理を失敗したのは、なぜなんだろう」と原因究明している姿を見せたり、一緒に考えてもらったり、大人が「失敗から学ぶ手本」を見せるのも手。
子どもがトライ&エラーを繰り返して成長していかれるよう、大人も一緒に失敗を振り返り、対策を考えてあげられるといいですね。
学びのヒントを見つける習慣を
うまくいかなかったことやマイナスの経験には「学びのヒント」がたくさん詰まっています。
しかし子どもはミスや失敗を「早く忘れてしまいたい」「振り返りたくない」と、あえて言葉にはしないでしょう。
そんな時は、
「パスがうまくつながらなかった時、チーム内で声は出てた?」
「チームメイトに嫌な態度をした時、どんな気持ちだった?」
など子どもが振り返り、考えるためのヒントや誘導を大人から投げかけてみてもいいかもしれません。
「そうか、声が出てなかったから連携がうまくいかなかったのかも」
「次からは試合前にお互い声を出そうと注意し合えばいい」
大人と一緒に思い出して、次につながる学びのヒントを見つける習慣が身につくと、次第に大人に促されなくても自分でも振り返るようになります。
障壁やハードルは「乗り越えるチャンス」
練習もスムーズで、メンバーにも選ばれて、試合でも活躍できれば、最高のように思いますね。
では逆に、練習でもうまくできずに、試合のメンバーにも選ばれず、試合で活躍できなければ、そのスポーツを頑張る意味はなく、楽しくないのでしょうか。
うまくいかないこと、理想通りに進まないことがあるからこそ、そのハードルを超えるにはどうしたらいいかと考えるもの。
障害やうまくいかないことこそが子どもの考える力、現状を打破する力を育ててくれるかもしれません。
子どもが「メンバーに選ばれなかった」「コーチが認めてくれない」などと不満を口にしたら、それは乗り越えるべき「チャレンジの機会」と考えてみましょう。
子どもはすぐに切り替えることができなくても、大人が「いい目標ができたね」「○○さんをお手本にしてみようか!」と前向きにとらえる姿を見せれば、子どもも少しずつ変化できますね。
一緒に挑戦体験をする
新しいことに挑戦するのは、大人でもドキドキするもの。
せっかくなら大人と子どもで一緒に新しい種目やアウトドア体験、マラソン大会などのスポーツに挑戦してみてはどうでしょう。
大人と一緒に知らないことにトライする楽しさ、初めてを経験するワクワク感を共有することで強いつながりを感じられます。
そして大人が悪戦苦闘する姿、勇気を出して挑戦する姿を見て、「頑張るってかっこいいな」「失敗しても楽しい」と肌で感じられるでしょう。
また新分野への挑戦で探究心や対応力、あきらめない気持ちなど多くの非認知能力も身につけられます。
・マインドセットとは、人が育ってきた環境や経験によって作られた、考え方の癖や思考パターンのこと。
・成長マインドセットを持つと、惜しまずに努力をしたり、変化を受け入れるなど柔軟性のある前向きな子に育つ。
・スポーツには成長マインドセットを育てるヒントがたくさん詰まっている。
・周囲の大人が、失敗から学ぼうという姿勢を見せたり、うまくいかないことを楽しむと子どもは成長マインドセットを身につけやすい。
(参考文献)
東京新聞 東京すくすく | 子どものスポーツで大切な「マインドセットとは」
KOKACARE | 失敗を成長に変えるマインドセット〜子どもの非認知能力〜
Global Indian International School | 成長マインドセットを身につける10の方法