Leifras SPORTS SCHOOL

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ラージハート

非認知能力

アスリートに学ぶ 精神力や気持ちをコントロールする方法

更新日: 2023.08.04
投稿日: 2023.08.25

集中力や感情のコントロールのコツを学ぶと、「試合の本番で力を出せる」「他人のプレーに影響されない」「リラックスして試合に臨める」などのメリットが多くあります。

大舞台で力を出せるアスリートたちは、どんなふうに気持ちをコントロールしているのでしょうか。

誰もが憧れるアスリートたちメンタルコントロール方法を、彼らの習慣や言葉をヒントに学んでいきましょう。

スポーツをする人の心にアプローチする「スポーツ心理学」とは


スポーツ心理学とは、「スポーツに関わる課題を心理学的に明らかにして、スポーツをしたり、スポーツを教えたりする時の科学的な知識や学問」のこと。

スポーツ心理学のなかにも様々な領域があり、なかでも「スポーツメンタルトレーニング」は、心を整えてリラックスしたり、イメージトレーニングをして実力を出せるようにする分野です。

生まれつき本番前でもいつも通りの精神力を保ち、大きな試合でも練習通りにできる子はいるでしょう。

でも、「どうしても試合で実力が発揮できない人(子)」や「本番前になると普段できることが、できなくなる」という人(子)でも、学習し練習すれば克服できるのです。

しかも自分でコントロールしている分、なにか予期しないことが起こっても、自分を落ち着かせ、気持ちを整える方法を知っている方が有利なこともあるはず。

そして自分の弱点を知ることで、人に優しくできたり、友だちに共感したり、コミュニケーションの助けになって非認知能力を鍛えることにもつながるでしょう。

アスリートたちの心(メンタル)に関する言葉の数々


オリンピックやワールドカップなど表舞台で活躍する選手たち、そしてプロフェッショナルとしてファンを魅了するアスリートたち。

彼らは厳しい練習を重ね、その力を本番で100%発揮するために、どんなふうにメンタルを整え、本番に望んでいるのでしょうか。

数々の言葉から、そのヒントを探りましょう。

プレッシャーがかかればかかるほど自分は力を発揮できる ― 長友佑都(FC東京所属・プロサッカー選手)

自ら「メンタルは弱い」と話す長友選手は、「でも強い心は折れてしまうが、スポンジのように柔らかく竹のようにしなやかなら、ストレスを吸収して逃がせるし、そのパワーを利用することができる」とも語っています。

プレッシャーや緊張を跳ね返すのではなく、それをしなやかに受け止めて力に変えているようです。

そのためには、プレッシャーや緊張を悪いもの・避けるものと考えるのではなく、「当たり前にあるもの」として受け入れているのでしょう。

実際、最もパフォーマンスが上がるのは、集中せずリラックスしすぎた状態と、緊張しすぎて力みすぎた状態のちょうど中間の適度な緊張があり、少し興奮した状態。

プレッシャーや緊張を完全に取り除こうとするより、一度受け止めて、味方につけた方が本番力がつきそうです。

“絶対大丈夫”とひと言言って打席に、マウンドに入ってください – ヤクルトスワローズ 高津臣吾監督(プロ野球)

「勝つぞ」でも「気合を入れろ」でもなく、「大丈夫」という言葉で選手を励ました高津監督。

選手が自分自身に対しても「大丈夫」と言い聞かせるように伝えています。

「自分ならできる」「心配しなくてOK」と自分自身に伝えることで、これから頑張って実力を出さなければいけないと考えるのではなく、「すでに自分にはやり切る力がある」と自分を信じる力、自信を持たせる言葉がけのように見えます。

大人が子どもに伝えることはもちろんですが、子どもが自分自身に向けて「大丈夫」と言えることが大切です。

体操の楽しさを忘れなければモチベーションなんかいらない ― 橋本大輝(体操選手・東京オリンピックメダリスト)

重要な試合やメンバー争いなど、つい結果に意識が向きがちな時こそ、「このスポーツが好きだ」「楽しい」という気持ちを思い出せば、リラックスできやる気も戻ってきます。

橋本選手は東京オリンピックの後に燃え尽きてしまい、長らく体操に対する意欲が出ずに悩んでいたのだそう。

そんな時、所属大学やクラブなど団体で日本一を競い合う、全日本体操団体選手権に出場。

チームメイトの思いを背負って戦うことで試合が楽しく、スポーツの本来の意味に気づいたと言います。

習い事を長続きさせるのも、子どもがスポーツで成長するのも、試合で実力を発揮できるのも、子どもの「好き」という気持ちが一番のエネルギー。

そして「好き」な気持ちに集中することでリラックスでき、試合や本番を前に「楽しむ」気持ちに切り替えられるでしょう。

最後に、このサイトを運営するリーフラススポーツスクールのアドバイザーである元オリンピック選手、有森裕子さんとヨーコ ゼッターランドさんのインタビューから、彼女らのメンタル・コントロール方法も見てみましょう。

マラソンの30km以降で考えるのは「しなかったこと」ではなく、「何をしたか」だけ。手持ちの札で何ができるか、プラスに働くことだけを考える。 ― 有森裕子(マラソン選手)
自分の力でコントロールできないことで悩んでも仕方がない、自分にできることを精一杯やるしかない。 ― ヨーコ・ゼッターランド(バレーボール選手)

二人とも、本番では「自分がやってきたこと」「コントロールできること」に集中すると話しています。

オリンピックのような極度の緊張を強いられる場面で、ベストなパフォーマンスを出すには、いろいろなことを考えすぎてしまうと逆効果。

目の前の「できること」に集中することで、試合相手や応援の声などに惑わされることなく、力を出し切れるようになります。

世界を舞台に活躍するアスリートたちは、独自の自分に合った考え方で集中力を高めていることがわかります。

子どもの心がいつでも整う! メンタルを鍛えるためにできる5つのこと


本番で高いパフォーマンスを発揮するアスリートたちの言葉は心に響きますが、少しでも近づくため、「日頃からできること」や「本番前にできること」があります。

自分に合う方法を見つけて、実践してみましょう。

◯ ノートをつける

◯ 呼吸法をみにつける

◯ ルーティンを決める

◯ イメージトレーニングをする

◯ 筋弛緩法を使う

ノートをつける

サッカー解説者として活躍する本田圭佑選手は、小学3年生から起床・就寝時間や脈拍数、食事内容、練習の内容と振り返りなど、細かな事象をノートに記録し続け、これが有名な「本田ノート」と呼ばれるものです。

この振り返りノートは、スポーツ心理学における「セルフモニタリング(自分を観察する)」にあたるのだそう。

このセルフモニタリングで得られることは、「気づきが得られること」と「自分を客観視できること」。

ただやみくもに頑張ったり、反省するのではなく、「試合の前日は◯◯をしたら、調子がよかった」「○◯は失敗したけど、着眼点は悪くなかった」など、冷静かつ第三者的に振り返り、次に活かすことができます。

セルフモニタリングをする癖がついていると、緊張している自分や落ち着かない気持ちをも客観的に捉えることができ、リラックスできるのです。

その場で言葉に出して「◯◯選手、緊張して手に汗をかいてきました」「昨日の練習は今日に活かせるでしょうか、期待しましょう」などと自分の状況を実況中継しても、第三者的視点に立てるので落ち着くとも言われています。

呼吸法を身につける

ドキドキしている時などに効果的なのが呼吸法です。

心拍数は呼吸と連動しているので、意識してゆっくり呼吸をするだけで、気持ちが落ち着いてきます。

これは本番前の緊張時はもちろん、感情的になった時や怒りが抑えられない時にも有効なので、身につけておくと心強いですね。

最初は大人が子どもと一緒にやって見せてあげましょう。

呼吸法のやり方

① お腹に手を当てて、3秒間で息を吸います。この時、お腹が膨らむように吸うこと。

② 息を吸い切ったところで2秒間、息を止めます。

③ お腹をひっこめるように、5秒かけてゆっくり息を吐きます。

目を閉じてゆっくり5〜6回ほど行うと、気持ちが落ち着いてきます。

ルーティンを決める

プロスポーツ選手やアスリートたちが、大事な試合前や練習前によく行うというルーティン。

大袈裟な儀式でなくても、

・シューズを左から履く
・決まった朝ごはんを食べる
・ストレッチの順番を決めて行う

など小さな約束ごとを決めておくと、心を落ち着ける効果があります。

また普段からルーティンを決めておいて、試合や本番前に同じことをすることで、「練習と同じ」「いつものようにやればいい」と気持ちが安らかになるでしょう。

試合前・本番前にルーティンを行うことでモードが「オン」に切り替わり、やる気のスイッチも入りやすくなります。

イメージトレーニングをする

「失敗するんじゃないか」「できるか不安」といったネガティブな気持ちで緊張してしまっているなら、イメージトレーニングが有効です。

脳は非常に優秀な機関ですが、「実際に起こっているいること」と「頭の中でイメージしていること」の区別はできず、脳にとってはどちらも同じこととしてみなされます。

つまり「シュートを決めている自分」や「試合に勝って喜んでいる仲間」をイメージするだけで、脳はうまく行っている状態を何度も体験した状態になり、安心感を得られるようになるでしょう。

またイメージトレーニングを日常的に行なっていると、潜在意識にも影響を与え、「なりたい自分」「目標にする自分」に近づく行動を自然に取るようになるそうです。

「こうなりないな」という自分の姿や、将来の夢を叶えている自分をただイメージするだけで、緊張がほどけてプラスに向けた行動ができるなら、こんなに手軽なことはありません。

日頃から良い結果や楽しんでいる自分を想像しておくと、自分でも気づかないうちに精神的に安定しポジティブな気持ちになるのかもしれません。

筋弛緩法を使う

筋弛緩法とは、あえて体や顔に力を入れて、その後一気に力を抜くことで、リラックスした状態を作り出すという方法。

① 全身に力を入れて、緊張状態を作ります。両肩に力を入れて首につけるように持ち上げたり、手をギュっと握ります。
② 息を吐きながら、ストンと肩や全身の力を抜きます。
③ 力の抜けた感覚を味わいます。これがリラックスした状態です。

とても簡単な方法ですが、緊張していた体から自然に力が抜ける感覚を味わえます。

まとめ

・スポーツ心理学の世界では、メンタルを鍛え整えるのは「技術」であり、練習さえすれば上達すると考えられている。
・アスリートたちはそれぞれのやり方でプレッシャーを受け入れたり、跳ね除けたりしながら、自分のメンタルを整えている。
・練習ノートをつけたり、ルーティンを決めたり、呼吸法を身に付けたり…普段からメンタルを整える練習をしておくと、本番にも強い精神力が養われる。

参考文献
スタディハッカー | 弱メンタルを改善する。一流スポーツ選手に学ぶメンタルの鍛え方
OMOYOGA | 日本代表アスリートから学ぶ!メンタルを強くする方法
日本スポーツ振興センター(ハイパフォーマンススポーツセンター) | メンタルトレーニング技法
NHK | アスリート × ことば
『教養としてのスポーツ心理学』大修館書房| 徳永幹雄(編)
『スポーツメンタルトレーニング教本 三訂版』日本スポーツ心理学会編
森永乳業 | 長友流「心」との付き合い方

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