「学校(園)で友達とケンカした!」こんな時、どうする?
更新日: 2025.05.29
投稿日: 2025.06.10

「学校(園)で友達とケンカした」
子どもからこんな言葉を聞くと、親はドキッとしますよね。
学童期や幼児期、友達とのケンカは、「人間関係やコミュニケーション能力を育む大事な練習」といえます。
友達とぶつかりあいながら自分と相手との違いを受け入れ、そこで相手の気持ちを理解したりすることで、視野を広げていくことができます。
親は、子ども同士のケンカにどのように対処すればよいのでしょうか。
ケンカのあと、どのような言葉をかければ子どもの成長につながるのでしょうか。
非認知能力の視点も含めて解説します。
もくじ
小学校低学年のケンカって、多いの?
園時代は、子ども同士のケンカが起きても先生や保護者の目が行き届き、解決しやすい傾向にあります。
しかし、小学校に入ると、子どもたちの行動範囲が広がりクラスの人数も増えるため、ケンカが起きても大人の目が届かないことが多くなります。
特に低学年の子どもは、まだ精神的な発達が未熟で、「自己中心性」という自分視点から物事を捉える時期にあります。
そのため、お互いの気持ちのズレに気づきにくく、ケンカに発展しやすいのです。
また、感情をコントロールする「前頭葉」の発達が未熟なこともあり、ちょっとしたことで怒りが爆発しやすいといえます。
大人はハラハラしがちですが、この時期の子どもは怒りや苛立ちを我慢するのが難しいので、「ケンカは成長過程の一つ」として捉えるとよいでしょう。
小学校低学年のケンカあるある!
小学校低学年時代におこりやすいケンカには、どのようなものがあるでしょうか。
以下、代表的なものを紹介します。
モノの取り合い・貸し借り
「〇〇ちゃんが貸してくれない!」「僕の〇〇なのに!」。
友達が持っているモノが魅力的に見えたり、自分のものが勝手に使われたりすると、子どもたちは譲れません。
言葉よりも先に手が出たり、大声で泣いたりしてケンカにつながりがちです。
ルールを巡る意見の食い違い
鬼ごっこやドッジボール、カードゲームなど、遊びにはつきものの「ルール」。
でも、低学年の子どもたちにとって、ルールの解釈は千差万別。
「今のナシだよ!」「それ反則!」など、自分の有利なようにルールを主張し合い、ケンカになることも少なくありません。
ささいな一言や行動
「〇〇ちゃんの絵がヘン!」
「僕のことバカにした!」
大人から見れば取るに足らないような一言や行動が、子どもにとっては大問題に発展することも。
「相手の気持ちを想像することがまだ難しかったり、自分の気持ちをうまく言葉で表現できなかったりするがゆえのケンカと言えるでしょう。
ケンカはコミュニケーション能力や課題解決力を磨く絶好の機会
学童期や幼児期の子どもたちは、さまざまな体験を通して自分の感情や思考に気づき、「周りの人は自分とは異なる考えや感情を持っている」ということを理解していきます。
この心の発達を促すために最適な状況のひとつとしてあげられるのが、子どもが「コミュニケーションの当事者」となることです。
ケンカはまさに、当事者にならざるを得ない場面といえるでしょう。
わが子から「今日、学校(園)で⚪⚪ちゃんとケンカした・・」などと聞くと、親は心配になってしまいますよね。
しかし、子どもは友達とのいさかいを通し、「自分の意見が通らない、思うようにならないネガティブな感情をどうしたら解消できるのか」「自分が心の底から思っていることをどう伝えるか」「物の言い方や頼み方はどうすればいいのか」など、子ども自身が考えることにつながります。
友達とのトラブルは、非認知能力のひとつとしても知られるコミュニケーション能力や問題解決力を磨く絶好の機会ともいえるのです。
親はあまり深入りせず、「イヤだったのね」「悲しかったのね」などと共感し、そのときの様子を聞いたうえで、どうやったら仲直りできるか、どんな解決方法があるのかを一緒に考えましょう。
もちろん、「子どもが普段の様子と違う」「トラブルが毎日続いているようだ」など、心配なことがあれば、早めに学校(園)に相談しましょう。
子どもからケンカの報告を受けたときの親のOK対応、NG対応
子どもから「友達と学校で(園で)ケンカした」という報告を受けたときの、親の良い例と悪い例を紹介します。
・寄り添い、共感し、子ども同士で解決できるよう導く
・「そのとき、あなたはどう思ったの?」
・「それは悲しかったね。そのときどんな行動をとったの?これからどうしたらいいと思う?」
・「お友達とケンカして困っているのね。どんなことができるか、いっしょに考えてみようか」・・・など
まずは子どもに寄り添い、共感し、なるべく子どもどうしで解決できるような関わりを心がけましょう。
その子の思いを言葉にして共感することを繰り返していくことで、成長するにつれ、相手がわかりやすい言葉でコミュニケーションを取れるようになっていくでしょう。
・介入しすぎ、解決へ手を出しすぎは子どもの成長につながらない
・「そんなお友達と遊ぶのは、もうやめなさい!」
・「何があったの? ママが解決してあげるから、くわしく教えて」
・「先生はケンカを止めてくれなかったの? 学校(園)に電話して聞いてみるね」・・・など
親が介入しすぎたり、相手の親と連絡をとって解決の段取りをしたりなど、手を出しすぎるのは、子どもの成長にはつながりません。
親が解決してしまうのではなく、子ども自身が感じて動く時間をゆっくり待ちましょう。
子ども同士のケンカ。親の対処法は?
ケンカは子どもの成長にとって大切な経験。
親としてどう関わるべきか、4つのポイントに絞って紹介します。
まずは「子ども同士の解決」を見守る
ケンカは子どもの問題であり、状況や原因を一番よくわかっているのは当事者同士です。
親は心配でもぐっとこらえ、まずは子ども自身が「どうすればよかったか」を考え、自分たちで解決することを見守りましょう。
ただし、相手の子や保護者が感情的になっているなど、子ども同士での解決が難しい場合は、話し合いの場作りのサポートを。
子どもの「気持ち」を聞く
ケンカの事情よりも、まずは子どもの「気持ち」を聞いてあげましょう。
「今どんな気持ち?」「どうしてそう思ったの?」など、感情に寄り添う問いかけで、子どもが冷静にケンカと向き合う手助けをします。
「あなたが悪い」「謝りなさい」など、評価や指示をしないことが大切です。
親が子どもの心の安全基地になる
ケンカで落ち込んだり、悔しかったり、子どもは様々な葛藤を抱えています。
そんな時こそ、家庭は「安心できる場所」として、子どもの気持ちや言葉を丸ごと受け止めましょう。
それにより、子どもは安心感を得て、相手の気持ちを想像する余裕も生まれます。
「これだけはやらない」ことを意識する
子どもが冷静さを取り戻し、解決に向けて行動できるように背中を押す際、親は「これだけはやらない」ことを意識しましょう。
具体的には、「先回りして解決しようとしない」「謝って丸く収めさせようとしない」「悪者探しをしない」「関係のない人を巻き込まない」ことです。
子ども同士のケンカは大人よりも早く解決することが多いため、数日様子を見ることも大切です。
友達づきあいに大切なのは、「伝える力」と「聞く力」
子どもは、園(学校)で友達とのいざこざを経験しながら成長し、友達づきあいの方法を学んでいくといっても過言ではありません。
友達づきあいに大切なのは、自分の気持ちを「伝える力」と相手の気持ちを「聞く力」です。
特に「聞く力」は、「伝える力」と比べると見過ごされがちですが、臨床心理士の「幼児期が大切です 聞く力で伸びる7つの能力」を執筆した河井英子さんによると、
なかでも、思いやりの心、共感する心は、友だちづきあいを円滑にするのにとても有効です。
聞く力が身についている子どもは、相手の話に共感し思いやりをもって耳を傾けることができます。
その結果として、友達とのやりとりを円滑に進ませ、友達づきあいもスムーズになるのです。
学童期・幼児期に「聞く力」をしっかり育んでおくことが、集中力、想像力、思いやりの心、共感する心、コミュニケーション能力などの成長に欠かせないそうです。
「伝える力」や「聞く力」を育む方法
ケンカを子どもの成長につなげるためには、「伝える力」と「聞く力」を育むことが重要です。
家庭でできる3つのポイントをご紹介します。
子どもの話を「しっかり聞く」
前述したように、親が子どもの話を真剣に聞く姿勢を見せることが、「聞く力」を育む第一歩です。
子どもが話し終えるまで口を挟まず、最後まで聞くことを心がけましょう。
「うんうん」「そう思ったんだね」と相槌を打ち、共感することで、子どもは安心して話せます。
自分の気持ちを「言葉で伝える」練習を
自分の気持ちを明確に伝える練習をすることで、「伝える力」は育まれます。
相手を責めるのではなく、「私は~されて嫌だった」など、「I(アイ)メッセージ」で自分の気持ちを伝えるよう促しましょう。
さらに、必要に応じて「何がどう嫌だったのか」を具体的に言葉にする手助けができるといいですね。
日常会話で「伝える力」と「聞く力」を育む
特別な時間を設けなくても、普段の会話で「伝える力」と「聞く力」は自然と育ちます。
親子で一日の出来事を話し合う時間を持ち、お互いの気持ちや考えを伝え合う機会を作るようにしましょう。
「伝える力」と「聞く力」は一朝一夕には身につきませんが、日々の積み重ねと親の継続的な関わりが、子どものコミュニケーション能力を大きく伸ばします。
子ども時代のケンカの経験が将来の豊かな人間関係につながる
子どものケンカは、社会性を学び、成長していく上で大切な経験です。
ケンカを通して相手の気持ちを知ったり、自分の感情をコントロールすることを学んだり…。
まさに、人間関係の土台を築く貴重なステップと言えるでしょう。
親としては、子どものケンカを見るとハラハラしたり、どうすればいいか悩んだりすることもあるかもしれません。
しかし、子どもたちはケンカというぶつかり合いの中で、やられたら嫌なことはしない」「どうしたら仲直りできるか」といった大切なルールや知恵を学んでいきます。
もちろん、必要に応じて大人が見守り、気持ちを「聞く」ことで、子どもは安心してケンカに向き合い、乗り越える力を育むことができます。
子どもが経験する一つ一つのケンカが、将来の豊かな人間関係へとつながる大切な芽だと信じて、温かく見守ってあげてくださいね。
・子どものケンカに親はあまり介入しすぎない
・子どもの言葉に共感し、仲直りするにはどうしたらよいか一緒に考える
・「聞く力」を育てることが、友達づきあいをスムーズにしていくことにつながる
友達とのケンカも、子どもたちの非認知能力を伸ばすために必要なきっかけや環境のひとつであることが分かりました!
親としては、子どもの園や学校での人間関係が悪くならないかなど、不安な気持ちや心配な気持ちが生まれてしまうかもしれませんが、一呼吸して見守ってあげることや話を聞いてあげることで、自分で物事を考えて、解決しようとする力を育むことに繋がります。
また、相手の気持ちを汲み取る力を育むためには子ども自身が聞く力を身に付けることも大切になります。
親が寄り添い共感しながらも、親の話や気持ちを伝えるコミュニケーションを子どもと一緒に取っていきましょう!
(参考文献)
・すぐに止めない!? 子どものけんか(松井智子監修、「エデュカーレ」/臨床育児保育研究会)
・叱りゼロで子どもは自分でできるようになる!(原田綾子著、PHP研究所)
・幼児期が大切です 聞く力で伸びる7つの能力(河井英子著、PHP研究所)
・子ども同士のけんかにどう対応する?子どもの問題解決能力を育てる導き方とは(出典:学研教室)
・お友だち同士の喧嘩、親はどう対処すればいい?(出典:ベネッセ教育情報)