子どもの人見知りは成長のサイン!親のための心配解消ガイド
更新日: 2024.04.22
投稿日: 2024.04.23
赤ちゃんが5〜6ヶ月になると始まる人見知り。これは、
・両親と他の人の顔が判別できるようになる。
・知らないことへの好奇心と恐怖心の心の葛藤。
が理由で起こるといわれます。
しかし、一時的なものだろうと思っている「人見知り」が、幼稚(保育)園・小学校と成長しても続いて、人と馴染むのに時間がかかったり、挨拶ができなかったりすると…。
「このままで大丈夫?」「友だちとうまくやれるかな?」と、心配になりますね。
今回は子どもの人見知りについて、一緒に考えていきましょう。
もくじ
わが子の人見知りで困ったことはコレ
子どもの人見知りに困っているお母さん・お父さんは意外と多いもの。
では子どもの人見知りで、親が困った例をいくつか見てみましょう。
0~3歳ごろに多く見られる人見知りの傾向とは
「人見知り」とひと言で言っても、その様子はさまざま。
最初の人見知りの時期には、どんな傾向があるのでしょうか。
親以外の存在を嫌がる
いつも馴染みのあるお母さんやお父さん以外の人の抱っこや交流を嫌がります。
お父さんと過ごす時間少ない場合などは、お父さんに対しての人見知り、いわゆる「パパ見知り」をすることもあります。
またメガネをかけたり、ヒゲを剃って人相が変わったりするだけで嫌がったり、泣くことも。
お母さん1人にしか懐いていない場合など、抱っこを交代したり、預けることができないため、お母さんの育児の負担が大きくなってしまいます。
子どもにとっての「抱っこ」は特別なもの。
大好きなお母さん、お父さんの抱っこならいいけれど、他の人が手を伸ばしても「NO!」を言われてしまうこともあるでしょう。
特におじいちゃん・おばあちゃんにとって、孫の抱っこは最上の楽しみでもあるので、親としては申し訳ない気持ちにもなりますね。
慣れない人の抱っこが嫌なだけなので、「会う回数を増やして慣れる」「最初は親が抱っこして顔を覚えてもらう」など、無理強いせずにゆっくり距離を縮めていきましょう。
人を見ただけで泣く・隠れる・逃げる
恐怖心や警戒心が強いタイプは、馴染みのない他人の存在を感じただけで泣いたり、隠れたりします。
特にお母さんやお父さんが「ほら、○○さんだよ〜」「抱っこしてもらったら」などと交流を促すと、言葉で「嫌だ」と言えない子どもは泣いたり、逃げたりすることで身の安全をはかろうとします。
親以外の人を嫌がる場合は、子どもの不安感が大きくならないよう、親が抱っこした状態で挨拶をする、子どもが慣れるまで人から距離を保つなど、工夫が必要です。
人と目を合わさない
人と目を合わせなくなるのも、人見知りの傾向です。
しかし同時に「好奇心」や「興味」もあるので、チラッと見ることがあるでしょう。
その時に大声を出して近づいたり、笑わせようと必死になると、余計に避けようとします。
子どもが視線を避けている様子が見られたら、大人側が「あえて見ないようにする」「目線が合った時だけ、微笑み返す」など、距離を保った対応がいいでしょう。
他の人がいると笑わない・話さない
赤ちゃんは人にお世話をしてもらわないと生きていられないので、基本的に「パーソナルスペース」は小さいといわれます。
パーソナルスペースとは、他人に入ってこられると不快に感じる空間のこと。
言葉で不快感を表現できない人見知り時期の赤ちゃんや子どもは、パーソナルスペースに他人が入ってきたことで思考停止になります。
そして今まで笑っていたのも忘れて真顔になったり、おしゃべりも止めて話さなくなったりすることも。
これは「怖い」「不安」といった気持ちを、表情や行動で表現しているのです。
無理に話しかけたり、距離を縮めようとせず、自然な態度で慣れるのを待ちましょう。
大人が苦手
人見知りの子どもの場合、大人が特に苦手というケースも多くあります。
特に大人の男性は総じて声が女性よりも低く、体も大きいので「怖い」と感じることが多いようです。
女性の場合は母親との共通点も多く、物腰や表情のやわらかさから、人見知りされることが少ないようです。
いずれにしても、時間をかけて接する時間を増やしていけば、自然と慣れていきます。
子どもの「人見知り」は成長の過程
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は、0.01〜0.02程度といわれ、明暗の区別はつくものの、ほとんど見えていない状態です。
そして6ヶ月くらいからお母さんやお父さんの顔を認識できるようになるため、見慣れない人やいつもと違う雰囲気(メガネやヒゲ)に対して警戒し、泣いたり嫌がったりする「人見知り」が始まるといわれます。
これは成長段階で起こる正常の反応であり、知能の発達によって警戒心や防衛本能が育っている証拠。
警戒心や防衛本能は、自分を守るために大切な機能なので、この時期の人見知りは「成長するために必要な過程」といえます。
子どもの人見知りは1歳半〜2歳頃まで続くといわれますが、思春期や大人になっても「人見知り」の人はいますね。
これは「他人から不用意に傷つけられた」「嫌な思いをした」という過去の経験から、人と関わることに恐怖心が生まれたり、自分に自信が持てなくなり人見知り傾向になるようです。
「人見知りの子は人付き合いが下手なのでは?」「周囲の人とうまくコミュニケーションが取れないのかも」と考えてしまいがちですが、人見知りの子は主義主張は強くない分、周囲をよく観察して、協調性のある子が多いもの。
「今は成長段階」と心配しすぎないようにしましょう。
子どもが人見知りする理由は?
子どもはなぜ人見知りするのでしょうか。
もともと持って生まれた気質や性格、成長によるものなど、その理由を探ってみましょう。
心の葛藤としての人見知り
人の顔が認識できるようになって始まる「人見知り」。
警戒心や恐怖心、防衛本能が人見知りの主な原因といわれますが、それだけではありません。
警戒心がおこると同時に相手への興味や好奇心、「近づいてみたい」という気持ちが強くなるため、気持ちのバランスが崩れて泣いたり、グズったりするのです。
東京大学や同志社大学の研究(*)によると、人見知りが強い子は「相手に近づきたい・接近したい」という気持ちも強く、「近づきたいけど怖い」という心の葛藤を持ちやすいことがわかっています。
人見知りは単なる「怖さ」「警戒心」だけでなく、同時に「興味」「関心」といった二律背反の複雑な感情が交錯し、心が葛藤することで起こっているようです。
*JST戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究プロジェクト「岡ノ谷情動情報プロジェクト」(平成20-25年度)による研究論文“Shyness in early infancy: Approach-avoidance conflicts in temperament and hypersensitivity to eyes during initial gazes to faces”
個性としての人見知り
赤ちゃんの頃の人見知りとは違い、集団生活が始まっても「仲良くなるのに時間がかかる」「集団に入っていかれない」など、人見知りをする子も多くいます。
これは気質や性格からくる人見知りで、「本当は話しかけたいのに話せない」というケースや、「一人でいる方が楽」と好んで人と関わらない場合があります。
大人は子どもを心配するあまり、人見知りに対してネガティブな印象を持ってしまいがちです。
しかし最初は人見知りでも一度仲良くなるとその友だちを大切にしたり、落ち着いた性格で周囲から信頼されるなど、人見知りはデメリットばかりではありません。
子どもを社交的にさせようと過剰に働きかける必要はなく、「人見知りは個性」と捉えるといいでしょう。
経験不足による人見知り
子どもは初めて会う人と話しをしたり、見慣れない場所に行く経験が少ないために人見知り・場所見知りをすることがあります。
経験を重ねて「初めて会う人も怖くない」「いつもの場所でなくても大丈夫」という経験を重ねていくと、自然に緊張がほどけていきます。
また、子どもは親の言動をよく見ているので、親が周囲の人と仲良く笑顔で話していたり、知らない場所でもいつも通りの親でいることで安心できるでしょう。
「社会人になってから人見知りがなくなった」という人もいるので、のんびりと見守っていきましょう。
人見知りする子としない子の違いは
人見知りをするわが子を見ると、親は「育て方の問題?」「小さい頃に、もっと人に会わせればよかった?」などと、つい育て方や接し方を考えてしまいますね。
人見知りする子としない子の違いについて見ていきましょう。
気質や性格
同じ家に育つきょうだいでも、社交的な子もいれば、人見知りの子もいます。
人見知りは、気質や性格によるものが大きいといわれ、親や周囲がコントロールできない部分もあるのです。
ちなみに「気質」は、生まれ持った気性や気立てなどのことで、その子の持った本質的なの感情的傾向を指します。
それに対して「性格」は、気質を基盤にして育っていく性質や特徴のことで、成育環境や親のしつけなどによって形づくられていくものです。
傾向として「気質」は変わりにくく、「性格」は形成されていくものといわれるため、もともと人見知り気質であっても、親や周辺環境を整えることで人見知りの傾向をやわらげることはできそうです。
生活環境
子どもが暮らす生活環境も、子どもの人見知り傾向に影響があります。
例えば…
・大家族で祖父母や多くの兄弟姉妹などに囲まれて暮らしている。
・家にしょっちゅうお客さんが来ている。
・公園や児童館など、いつも違う相手と遊ぶ機会が多い。
など、幼い頃から親以外の多くの人と交流していると、他人に対する抵抗や不安が少なくなります。
反対に「家族だけで過ごすことが多い」「家にこもりがち」など、人との交流が少ない環境だと、人見知りの傾向が強くなるようです。
「知らない人でも仲良くなれる」「大人でも同じように話せた」という成功体験を重ねることで、積極的な人との関わりができるようになるでしょう。
人見知りの子をはじめての集団に入れる際の注意点
人見知りが強い子の場合、幼稚園や保育園、習い事などの集団に入れる時には心配になりますね。
人見知りをなおす必要はありませんが、このチャンスを上手に活かせば、子どもが「人見知りを克服できた」「苦手なことを乗り越えた」と大きな自信になるでしょう。
そしてその自信を基盤にして、協調性やコミュニケーション力、共感力などの非認知能力を育てることができます。
では、人見知りの子が集団に馴染めるポイントを紹介します。
親子で一緒に集団を体験する
幼稚園や保育園の1日登園やスポーツの体験会などに、親子で一緒に参加してみましょう。
人見知りではない子なら、1人で参加するものでも大丈夫ですが、人見知りの子は最初から1人ではハードルが高すぎます。
「親子参加OK」なものを選べば、安心して集団を体験することができますね。
子どもが安定した気持ちで集団に参加できれば、「人がいても怖くないんだ」「今度はお母さんがいなくても大丈夫かも」と少しずつ自信が持てるようになります。
また親子参加が不可な場合でも、先生やスタッフにあらかじめ知らせておけば許可が出る場合も多いので、一度問い合わせてみるといいですね。
子どもに合いそうな場所を探す
人見知りな子であればなおさら、子どもに合う雰囲気の場所を探すのがベター。
静かで落ち着いた雰囲気でないと馴染めないという場合や、本人は大人しいキャラクターでもにぎやかな雰囲気が好きな子もいます。
子どもによって好みや合う・合わないは全然違うので、子どもの様子を観察しながら探しましょう。
HPやSNSでチェックしたら、まずは足を運んでリアルな雰囲気を見たいですね。
子どもが嫌がったら無理強いしない
どんなに条件や雰囲気がよく、大人が気に入ったとしても、本人が嫌がったら無理強いはしないことが大切。
「楽しそうだよ」「お菓子を買ってあげるから」などと説得をしても、子どもにとっては「嫌」であることに変わりありません。
人見知りは「怖い」「苦手」「嫌だ」の意思表示なので、それを無視して押し付けると、さらに人見知りの傾向が強まり、集団への拒否反応が出てしまうかも。
ゆっくり気長に構えて、少しずつ慣れるのを待ちましょう。
早く馴染ませようと大人が焦らない
集団生活に「早く馴染ませよう」と大人が焦らないように注意しましょう。
子どもは大人の思惑を敏感に察知し、仕向けられると心を閉ざしてしまいます。
人見知りの子ならなおさら、馴染むまで時間をかけてゆっくり見守るのが正解。
自分のペースで周囲と打ち解けて心を開けば、きっとそこで自分の居場所が見つけられて、協調性や対応力などの非認知能力も自然に育まれるでしょう。
人見知りを乗り切るためにできる5つのこと
子どもの人見知りは成長過程で起きる必要なプロセス。
しかし子どもが感じている「不安」「恐怖心」を少しずつ取り除くことができれば、子どもは自信を持ち、成長しても環境に順応しやすい性格に成長していくかもしれません。
人見知りを乗り切るためにできるポイントを解説します。
○ 周囲を巻き込んで協力してもらう
○ 親が楽しんで人と交流する
○ 不安を取り除き、落ち着く方法を探る
○ 子どもが集まる場所を活用する
○ 成功体験を積ませる
周囲を巻き込んで協力してもらう
子どもがお母さんに対して人見知りをしないのは、慣れているから。
つまり他人と接することが「日常」「習慣」になってしまえば、人見知り傾向は弱めることができます。
周囲に「今は人見知りの時期」「少しでも人に慣れさせたい」と伝えて、接触回数を増やしてもらったり、会話をしてもらう機会を増やしましょう。
おじいちゃん・おばあちゃんに来てもらって、会う機会を増やしてもらうのもいいですね。
親以外の人と会話する時間が増えれば、少しずつ「人は怖くない」「他人もお母さんと同じだ」と理解できるようになるでしょう。
親が楽しんで人と交流する
子どもが一番安心できるお母さん・お父さんが、周囲の人たちと楽しそうに会話をし、笑顔で接している場面を見せれば安心します。
その会話の中に少しずつ子どもを巻き込んでいけば、自然に他人との心の距離が縮まります。
子どもは信頼する相手を通して、周囲の環境にその信頼を広げていくことができるのです。
不安を取り除き、落ち着く方法を探る
「大人の男の人が怖い」「初めての場所ではドキドキしてしまう」など、子どもなりに人見知りをする理由があるはずです。
子どもの様子をよく観察し、子どもが落ち着いている時に「どんな気持ちだった?」「○○が怖いの?」などと、子どもを不安要素になっているものを理解しましょう。
どんな場所、どんな人、どんなシチュエーションに警戒心が強くなるかが分かれば、それを取り除いたり、事前に準備することもできます。
そして「事前にどんな場所かわかっていれば安心できる」「あまり近距離にならなければ大丈夫」など、落ち着く方法も理解しておくと対策が取れますね。
子どもが集まる場所を活用する
人見知りは「慣れ」の問題がほとんど。
他人が大勢いるような場所に行く機会を増やせば、その分人に慣れるはずです。
その際、「早く慣れさせよう」と急に他人との距離を縮めたり、「行っておいで」と突き放してしまうと、子どもの心の準備ができずに逆効果になってしまうことも。
公園や児童館など子どもが集まる場所に連れて行き、最初はお母さん・お父さんと一緒に見ているだけでもOK。
徐々に親から離れられるようになれば十分と考えましょう。
成功体験を積ませる
子どもが人見知り時期だと、「気まずい」「相手に申し訳ない」といった理由から、あまり人と交流させないようにしようと考えてしまいますね。
しかし「警戒心」「恐怖心」を克服して「他人は怖い存在ではない」と理解するチャンスを逃してしまうと、自分に自信をつけられないまま、人見知りが長引いてしまうことも。
例えば…
・遊びに行った公園で順番待ちをしている時、「お先にどうぞ」ができた。
・友だちのお母さんに「おはよう」が言えた。
・知らない子と隣になった時に、怖いと感じなくなった。
など、少しずつ心を開いてコミュニケーションが取れるようになると、あっという間に人見知りを乗り越えられるでしょう。
「怖かったけど言えた」「不安だったけど頑張れた」という小さな成功体験を重ねることが、自信につながり、積極的で協調性のある子どもに育っていくはず。
大人はその経験をサポートできるよう、根気よく付き合っていきたいものですね。
親が子どもの安全基地になる
子どもが人見知りをするのは成長過程であり、知能の発達によって「不安」「恐怖心」「警戒心」といった生きるために必要な気持ちが育っている証拠です。
「人見知り」自体をなくす必要はありませんが、少しずつ外界との距離を縮めていくことも大切なプロセス。
人見知り期の子どもにとって「知らない人と話をする」「大人に挨拶する」という行動は、信じられないくらいの大冒険のはずです。
その勇気を絞り出せるかどうかは、「いつでも戻れる安全基地」「安心できる場所」があるかどうかにかかっています。
そして子どもにとっての「安全基地」はお母さん・お父さんであり、温かい家族の存在。
無条件で愛情を感じられ、どんな時でも受け止めてもらえ愛情をもらえる「安全地帯」の存在は、子どもを無敵にします。
心の中に安全地帯がある子どもは、初めての場所でドキドキする時も、進級や進学で不安な時も、がんばるパワーがチャージされた状態です。
親が子ども心の安全地帯になれれば、子どもはそこを基盤に周囲と交流しながら、協調性や共感力、コミュニケーション力や柔軟性といった非認知能力をぐんぐん伸ばすことができるでしょう。
・人見知りは誰もが通る大切なプロセスであり、子どもが成長している証。
・人見知り期は慣れない人に会った時や近くに来た時に、泣いたり隠れたりすることがある。
・子どもの人見知りには、心の葛藤や個性、経験といった原因がある。
・人見知りを解消しようと無理強いしたり、突き放すと逆効果になることも。
・知らない人と交流できる機会を増やすと、人見知り傾向がやわらぐこともある。
・子どもの心の中に安全基地があると、他人との距離を縮める勇気が出る。
(参考文献)
・サイエンスポータル | 赤ちゃんの人見知りは心の葛藤だった
・伸芽’s クラブ | 子どもの人見知りは成長の証! 日々の生活に取り入れる克服法
・ベビーパーク | 乳幼児の人見知りが始まったなら、それは喜ばしいこと
・BRAVA | 人見知りでおとなしい子ども「小学校で不安」でも大丈夫!な理由を先輩ママ・パパが回答!
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