AIには真似できない! 子どもの思考力・思慮深さを育てる
更新日: 2023.07.04
投稿日: 2023.07.25
人工知能(AI)やロボットの技術が日進月歩で進んでいます。
AIに取って代わられてしまう仕事がある一方、創造性や独創性のある仕事、思考力やコミュニケーションが必要な分野はまだまだ人間の力が求められるでしょう。
未来を担う子どもたちには、この独創性や思考力、コミュニケーション力をしっかり身につけてさせ、AIに負けない、なくてはならない人材に育ってほしいもの。
特に「あきらめずに根気強く考える力」や「思考力」は、これからの社会にますます求められます。
今回は「思考力」「思慮深さ」に着目して、保護者として何ができるか一緒に考えていきましょう。
もくじ
思考力のある子、思慮深い子とはどんな子か
辞書によれば「思考」とは、経験や知識をもとにあれこれと頭を働かすこと。
根気強く考えを巡らせて判断し、次を予測して行動できる子は、思考力があるといえるでしょう。
思考力がある子とは、
・的確で冷静な判断できる
・自信があり小さいことに動揺しない
・ユニークな視点を持っている
・他人に思いやりのある接し方ができる
・新しいアイデアを次々考えつく
・自分と違う意見にも耳を傾けたられる
・計画性がある
など、ひとことで「思考力」と言ってもさまざまな側面があります。
そもそも「思考力」は状況を把握し、ものごとをじっくり考えて判断する力であり、「知識が豊富」「記憶力がいい」「計算が早い」といった、いわゆる数値化できる「認知能力」とは異なる力です。
この「知識量」や「計算力」などの認知能力は、まさにAIの得意分野。
その代わり、自分の持つ知識や経験を総合して考えられる「思考力」を育てたいですね。
子どもに身につけさせたい思考力とは
東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏によると、思考力は考えるだけでなく、物事を考え続ける力=「思考体力」が必要なのだそうです。
そしてその「考え続ける力」「思考体力」は、以下の7つの基本的な考える力によって構成されているといいます。
2)常に思考の階段のもう一段先を考える「多段思考力」
3)あらゆることを疑ってみる「疑い力」
4)全体を俯瞰(ふかん)して見る「大局力」
5)物事を分類して選び取る「場合分け力」
6)思考の階段を何段も飛ばす「ジャンプ力」
7)物事を細分化して考える「微分思考力」
これらは大人の思考力についての話ではありますが、よくよく見てみると子どもにも大切な力であることがわかります。
子どもだけではなかなか鍛えられない「思考力」や「思考体力」を、日頃の接し方、声かけによって少しずつ養っていきましょう。
子どもの思考力には「練習」が必要
「子どもに思考力を持たせたい」と思っても、どうしたらいいのかわからないという人も多いでしょう。
幼い頃から何も言われなくても「よく考える子」もいますが、多くは保護者から「どう思う?」「一緒に考えよう」と促され、よく考える習慣の中で育まれるもの。
子どもと一緒に自分の思考力も磨くつもりで、日頃から親子で「思考の練習」をしてみましょう。
例えば、子どもと一緒に世界の紛争地域のニュースを見ているとしましょう。
「大変だね」と他人事で終わらせるのではなく、「世界地図でどこの国か探してみよう」「どうして紛争が起こったのかな」「あなたと同じ年齢の子たちは学校に行かれるのかな」と、一歩も二歩も近づいて想像力を働かせ、問題を考えてみます。
そして疑問について図書館で調べてみたり、報道写真を探してみたり、実際に寄付してみるなどのアクションを起こすこともできます。
そのニュースを追いかけて「日本からの支援が届いてる」「難民キャンプが隣国にできたみたい」と後日談を子どもに伝えていけば、点ではなく線でニュースを見る癖もつくでしょう。
社会問題のように難しい話ばかりでなく、隣の猫の話でも、新しくできたケーキ屋の話でも思考を巡らせるプロセスは同じ。
↓
それについて考え・調べ・想像する
↓
さらに数ステップ先まで予測して
↓
思考を深める
このプロセスを繰り返し、考える力を養っていきます。
子どものみならず、大人にとっても思考力を使う練習にもなりますね。
思考力を高めるために家庭でできることとは?
子どもに思考力を身につけさせるには、とにかく「子ども自身に考えさせる」ことが大切です。
大人はつい「教えるのが親の役目」「恥をかかせないように」と、聞かれたことにすぐに答え、わからなければ調べて教えようとしてしまいます。
それ自体は悪いことではありませんが、親が一度立ち止まって待てば、子どもが思考を巡らせる余裕が生まれるかもしれません。
家庭でできる「思考力のある子ども」を育てる接し方のポイントは5つ。
◯ 食事は一緒に摂る
◯ 子どもの自由時間をしっかり確保
◯ 「サポート」は本人が求めてから
◯ 根拠を説明させる
◯ 子ども先生の時間を設ける
食事は一緒に摂る
子どもの思考力を育むのに一番大切なこと、それは「対話」です。
子どもからの疑問を親子で一緒に考えたり、大人から質問に答えを探したり、親子の対話は考える力をぐんぐん育てます。
なにかと忙しい保護者世代ですが、食事の間はゆっくり向き合って対話の時間を持ちたいもの。
塾などで時間がずれる場合でも、お茶を一杯淹れるなどして一緒に食卓につきましょう。
子どもの自由時間をしっかり確保する
塾や習い事、宿題など「やるべきこと」に追われる子どもたちは、思考力を深める時間そのものが不足していることもあります。
テレビやスマホなどの電子機器を遠ざけ、大人の干渉からも自由になれる時間を確保しましょう。
子どもがぼーっとしていても大人は話しかけず、子どもの自由時間を大切に扱ってください。
「サポート」は本人が求めてから
子どもが困っていたり、迷っていたり、答えを探せないでいると、保護者なら「助けてあげたい」と思うでしょう。
しかし、自分の力でなんとかしようとすることから「思考力」は育ちます。
大人がよかれと思って助け舟を出すことが、子ども自身の考える力を奪っていることもあるのです。
子どもがSOSを出してきたら、「どんな情報がほしいのか」「何をサポートしてほしいのか」を具体的に聞き、最低限のサポートにとどめましょう。
自分の力で解決した時の喜びを、子どもに経験させることも大切です。
根拠を説明させる
例えば、一番好きな歌(曲)のどんな部分が好きなのか、なぜそのスポーツ選手がカッコいいと思うのか、子どもの口から子どもの言葉で説明させてみましょう。
自分でも「なんとなく好き」という曖昧な状態から、気持ちを深掘りするよい機会になります。
また「今日は習い事に行きたくない」と言ったり、兄弟姉妹に意地悪をしたり、学校の先生から困った報告の電話がかかってくる時もあるでしょう。
そんな時も、その言動の根拠を自分の言葉で説明させてみましょう。
大人はフラットにその意見に耳を傾け、子どもの正直な気持ちに「それでいい」とOKを出してあげることが大切です。
子どもが自分の気持ちに向き合い、考えを深めることを好きになれるよう助けてあげたいですね。
「子ども先生」の時間を設ける
自分以外の人に教えなくてはいけないと思うと、子どもは懸命に学び、物事の理解度が深まります。
そしてインプットしたことを、一度頭で咀嚼してからアウトプットすることで、知識や考え方が定着すると言われます。
週1〜2回、食事の時でもいいので、「子ども先生の時間」を設けて、子どもにいろいろなことを教わりましょう。
例えば、学校で習ってきた物語のあらすじを教えてもらい、「おじいさんは、どうして鉄砲で撃っちゃったんだろう」「もっといい結末があるかなぁ」と一つの議題に対して、多方面から考えてみます。
わざと悪役の味方になってみたり、通説とはあえて違う意見をぶつけてみたら、意外にも鋭い反論が返ってくるかもしれません。
子どもの知らない一面に触れられるかもしれませんね。
・思考力は数値では測りにくい「非認知能力」であり、AIが不得意な分野。
・思考力がある子は、「的確で冷静な判断できる」「自信があり小さいことに動揺しない」「計画性がある」などの特徴がある。
・考える力をつけるには、考え続ける力=「思考体力」が大切。
・子どもの思考力を鍛えるには、「練習」が必要である。
・家庭で親子の対話時間を作り、働きかけによって思考力を身につけられる。
(参考文献)
・ダイアモンドオンライン | 「深い思考ができる子」の親がしている4大習慣
・Domani | 【100人に聞いた】思考力が高い人の特徴とは?思考力を鍛える方法も体験談から紹介
・『東大教授の考え続ける力がつく思考習慣』西成活裕著(あさ出版)
・CARPEDIA | 思考力は生きる力!子どもの思考力を鍛える環境のつくり方