「勉強しなさい」と言われない子ほど、学力もやる気も伸びる!
更新日: 2023.01.04
投稿日: 2022.07.08
「宿題をしないでゲームばかり」
「自分から進んで勉強しない」
そんな子どもの行動を見ていると、思わず「宿題は?」「そろそろ勉強したら」と言いたくなりますよね。
しかし親からの「勉強しなさい」の声かけは、子どものモチベーションや勉強の質を下げてしまうことがあります。
子どものためを思ってのこの一言が、なぜ子どものやる気を削いでしまうのか。
今回は自分の子どもの頃を思い出しながら、一緒に考えていきましょう。
もくじ
「勉強しなさい!」「宿題やったの?」と言っていませんか?
親ならつい言ってしまう「勉強しなさい」という言葉。
「私が言わなきゃ」という責任感や、
「ここで勉強につまずいたら…」という不安から、
あまり深く考えずに子どもに投げかけていないでしょうか。
しかしこの親からの指示や命令が、子どものやる気をさせることが多いのです。
自分が子どもの頃を思い出しても、親や周囲から「やりなさい」と言われたことで、やる気が上がったことはありますか?
おそらく「今やろうと思ったのに」「やれ、と言われるとやる気がなくなる」と感じていたでしょう。
それは今も昔も変わりません。
人は自由を奪われたり侵害されると、その自由を取り戻そうという心理が働きます。
子どもが心の片隅で思っていた「この漫画を読み終わったら勉強しようかな…」「次のステージをクリアしたら宿題やらなきゃ」などの、ささやかなやる気の芽を、「勉強しなさい」の一言が潰しているという事実。
もし親の権限で、なんとか机の前に座らせることができたとしても、そこでイヤイヤする勉強の質がよくならないことは明白です。
子どもに勉強をさせたいなら、「勉強しなさい」は逆効果なのです。
「勉強しろ」と言われている子と言われていない子、なにが違う?
「将来のために勉強の習慣をつけてほしい」「勉強を進んでやってほしい」と思い、わが子につい言ってしまう「勉強しなさい」という言葉。
東進ハイスクール・東進衛星予備校が調査した「2022年東大現役合格者アンケート」の集計を見ると、親の「勉強しなさい」の声がけが子どもの学力向上には影響しないという結果が証明されています。
「両親から“勉強しなさい”とよくいわれた」という現役東大合格者は、わずか16.7%。
つまり約85%の子どもが、親から勉強に対してお尻を叩かれずに育ち、自発的に勉強に向き合ったということです。
「別に子どもを東大に入れたい訳ではない」という声が聞こえてきそうですが、それほどの勉強をこなす「やる気」や「忍耐強さ」「探究心」「折れない心」は、「勉強しなさい」という声がけからは生まれないことを示しています。
では逆に、学力の高い子たちはどんな環境で育ったのでしょうか。
・両親は自分の話によく耳を傾けてくれた…86%
・ほしい本は買ってくれた…88.7%
・自宅に百科事典や図鑑があった…73%
・本の読み聞かせをしてくれた…69%
など、「子どもを受け入れる親の姿勢」と「好奇心を満たす環境」が読み取れます。
もう一つ、面白いデータを紹介しましょう。
ベネッセ教育研究開発センターが実施した「第4回子育て生活基本調査」によると、「勉強しなさい」と言われた小学生の平均勉強時間は、わずかに言われた子の方が数分長いという結果でしたが、中学生になると言われた子の勉強時間の方が短くなっていました。
中学3年では、「勉強しなさい」と言われた子は、言われない子より約24分も勉強時間が短いという驚きの結果になりました。
小学生のうちは親の言うことを聞いても、より勉強が本格化する中学生では、明らかに逆効果になってしまうようです。
また親が勉強の意義や大切さを子どもに伝えている方が、勉強時間が長くなるというデータも出ており、勉強の意義や重要性を子ども自身が感じると、集中力ややる気が継続することがわかります。
子どもが勉強を自発的に頑張り、それが実を結ぶようになるには、
・子どもを信頼して、ある程度任せること。
・子どもの話や意見はよく聞くこと。
・本を読む習慣をつけること。
・子どもが探求したい分野を応援すること。
・命令や指示で勉強させようとしないこと。
・勉強する意義や大切さを理解させること。
などが鍵になりそうです。
「勉強しなさい」と言わずに、子どものやる気をオンにするには?
「勉強しなさい」の声かけが、子どものやる気を失わせ、勉強の質も低下させることはわかりました。
ではどうすれば、子どものやる気をアップさせられるのでしょうか。
ポイントは5つ。
◯ 親がやる気スイッチを入れようとしない。
◯ 「命令・提案」を「問いかけ」に変える。
◯ 子どもに選択させる。
◯ 将来や進路についてたくさん話す。
◯ 自信を持たせる。
親がやる気スイッチを入れようとしない
「やる気」になるのも、実際に勉強するのも子ども本人です。
子ども自身が気づき、自分で自分のやる気スイッチを入れる以外に勉強に前向きになる方法はありません。
つまり親が入れてあげられる「やる気スイッチ」はないのです。
親は「それが親の役目」と思い込んでいるために、子どもに提案したり誘導しようとして、反作用が起こります。
親はいつ子どもにスイッチが入ってもいいように、環境を整えてあげるだけにとどまりましょう。
「命令」や「提案」を「問いかけ」に変える
「勉強しなさい」「宿題をやったら?」という命令や提案には、「勉強をやってほしい」「宿題を早く終わらせてほしい」という親の意向が大きく反映されていますよね。
子どもはその意向を無意識に感じ取り、自由を取り戻す方向へ気持ちが向かってしまいます。
「算数は今どこをやってるの?」「宿題って毎日出るの?」などの問いかけに変えてみると、子どもは命令されているとは感じず、子どもが感じていることや気持ちを話しやすくなります。
そこに「なぜ勉強に前向きになれないか」の答えが隠されているかも。
ポイントは、その質問によって子どもが行動を起こすと期待せず、あくまでも純粋な疑問として質問することです。
子どもに選択させる
ゲームの制限時間から、宿題をやる・やらないの選択まで、親が決めるのではなく、子どもに選択権を預けてみましょう。
その際、「もし宿題をやらないと、学校の勉強がわからなくなるかも」「人に迷惑をかけるのは嫌だよね」というアドバイスはしてあげましょう。
そのうえで子どもが選択したことには、「子どもに任せる」と腹をくくります。
子どもが「お母さんとお父さんは自分に任せてくれる」「自分を信頼してくれている」とわかり、自分の選択に責任を持つようになります。
それが前向きに勉強に取り組むモチベーションになるでしょう。
将来や進路についてたくさん話す
日常的に将来や進路について親子で話していると、子どもは将来像を具体的に描きやすくなり、勉強へのモチベーションが持てるようになります。
その際「◯◯大学へ入ったほうがいい」という指示や、「勉強しないと将来大変だよ」といった脅しは不要です。
子どもが興味を持っている分野や好きなことについて、その道を極めていくとどんな可能性があるかなどを話してみましょう。
例えばゲームが大好きな子どもなら、「ゲームを作るにはプログラミング技術を使う」→「プログラミングを習うとアプリやロボットも開発できる」など、子どもの視野を広げるような楽しい話もいいですね。
保護者の学生時代の話をしても、子どもは興味を持つかもしれません。
自信を持たせる
「どうせ自分はダメだ」「努力しても無駄」と思っている子は、勉強にもスポーツにも前向きになれず、意欲が持てません。
「この前のテスト、漢字は満点だったね」
「前に比べて字が丁寧で読みやすくなってるよ」
など、よい部分を抽出してほめたり、頑張っている姿勢を認めてあげましょう。
自信が持てるようになり自尊感情が育つと、精神的に安定し「勉強を頑張ってみようかな」というエネルギーが湧いてきます。
・子どもに「勉強しなさい」の声かけは、心理学的にも逆効果。
・勉強に前向きに取り組む子は、「親に話を聞いてもらった」「読み聞かせをしてもらった」経験が多い。
・「親が子どものやる気スイッチを入れられる」と思わない方がよい。
子どもに「宿題したの?」「勉強しなさい!」と言ってしまう親はたくさんいるのではないでしょうか?そして、おそらく自分たちが子どもの頃に親から言われて、やる気をなくした、嫌になったという経験もしているのではないでしょうか?言ったら、ダメと分かっているのに、子どものことを思って言ってしまうのが親ですよね・・・ですが、データでも証明されているように自主的に勉強に取り組んでいる子の方が目標達成していることが分かりましたね。これは勉強ができる、できないではなく、物事に対して主体的に取り組めるかどうかの力なのかと思います。その力を育むために、宿題や勉強をツールとして活用するにはうってつけですね。子どもの成長につなげるためにも「宿題やったの?」「勉強しなさい」と言わないようにするトレーニングだと思って、家庭でチャレンジしていってはいかがでしょうか?気づいたら子どもが真剣に物事に取り組んでいるかもしれませんね。
(参考文献)
・(株)ナガセ 東進ハイスクール・東進衛星予備校アンケート結果
・ベネッセ教育総合研究所 第4回子育て生活基本調査(小中版 2011年)
・こどもまなび☆ラボ | 「勉強しろ」は逆効果! 統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと
・個別指導学院Hero’s | 「〜しなさい」と言われるとモチベーションが下がるのはどうして?