子どもの「ほめられ中毒」拡大中!?「えらいね」って正しいほめ方?
更新日: 2025.02.06
投稿日: 2025.02.07

「えらいね!」「すごいね!」などと子どもをほめるのは、成長を促す良いことと思っていませんか?
以前より、「子どもはほめて育てる」という意識が定着し、子どもを叱らない保護者が増えたといわれています。
しかし、最近の研究では、安易なほめ言葉が子どもの自信過剰や失敗を恐れる心を生み出す可能性があることが指摘されています。
真の意味で子どもを伸ばすための「ほめ方」とは?
「ほめられ中毒」と呼ばれる現象や、効果的なほめ言葉の選び方など、子育てのヒントを探ります。
もくじ
「ほめられ中毒」とは?
「お、よくできてるね!」
「えらいよ!」
「さすが○○ちゃん!」
「才能あるね!」
これらは、子どもをほめるときによく使われる言葉です。
しかし、ポジティブで子どもの自信につながるように聞こえるこれらの言葉は、子どもの成長にとって、必ずしもよい影響があるとは限らないのです。
「ほめられ中毒」という言葉、聞いたことはありますか?
子どもにとって、ほめられることはポジティブな強い刺激になります。
そのため、子どもの思考の中に、「ほめられると嬉しい」→「もっとほめられたい」→「ほめられることを率先して行動にうつす」という思考パターンが生まれやすいのです。
さらに、「ほめられればやるけれど、ほめられなければやらない」という行動パターンが醸成される可能性もあるといわれています。
これが、「ほめられ中毒」です。
「ほめられ中毒」になると、より強いほめ言葉でないと反応しないようになり、学校で休み時間のたびに教員のところへやってきて、「僕は(私は)こんなことできるんだよ」など繰り返し報告し、「すごいね」「えらいね」とほめてもらわなければ気が済まない・・・といった子どもが増えています。
ここで、わが子が「ほめられ中毒」傾向にあるかどうか、客観的にみてみましょう。
以下、あてはまる項目をチェックしてみてください。
⚫園・学校での様子
⬜「先生に認めてもらいたい」という欲求が強い。
⬜周りの友達の失敗を責める。
⬜少しハードルが高そうなことに挑戦しようとしない。
⬜ほめられないと活動や課題に取り組まない。
⬜勝ち負けへのこだわりが強い。
⚫家庭での様子
⬜親の顔色や反応をうかがう態度が見られる。
⬜周りの友達の悪口を言うことが多い。
⬜ほめても、物足りなさそうな様子が見られる。
⬜「できた」「できない」で物事を判断する傾向が強い。
⬜失敗することをおそれる傾向が強い。
いかがですか?
3個以上あてはまる場合は要注意。お子さんは、「ほめられ中毒」傾向にあるかもしれません。
ただし、関わり方や言葉のかけ方をシフトチェンジすれば大丈夫。
これからいっしょに学んでいきましょう。
過度な「ほめ」は逆効果!ほめすぎに潜む4つのリスク
人からほめられて、いやな気持ちになる人はいませんよね。
私たち大人も、周りの人からほめられたら嬉しい気持ちになります。
だからこそ、かわいいわが子の良いとこを見つけたら、ほめたくなるのは当たり前。
ただし、過度な「ほめ」は、注意が必要です。
以下、過度なほめにより起こりうるリスクを紹介します。
「ほめられ中毒」になる
前述したように、ほめられないと自信がもてず、外部からの承認でしか自分の価値を見いだせなくなります。たとえば工作して親に見せたときに、「上手!」「すごいね!」と言ってもらえないと、「自分の工作はダメなんだ」と思うようになります。
また、「常に認めてもらいたい」「ほめてほしい」という承認欲求が強くなるため、ほめられなかった場合に不機嫌になったり、不安になったりする「ほめられ中毒」になってしまいます。
興味を失いやすい
過度にほめられすぎると、子どもはほめられること自体に快感を覚え、「ほめられるための行動」をするようになり、せっかく楽しいと思っていたことに対しても興味が薄れてしまう傾向があります。
たとえば、自分が作った工作を「上手ね」と言ってもらえなくなったとたん、「ほめられないなら、もう工作はしなくてもいいや」など、本来は好きだったはずの工作をやめてしまうこともあります。
新しい課題に挑戦する意欲が低下する
過度にほめられ続けているうちに、「常にほめられる自分でいなければいけない」と無意識のうちに思い、「親ががっかりするような自分は見せたくない」と考える傾向が強くなりがちです。
そのため、失敗をおそれるようになり、新しい課題に挑戦する意欲が低下しがちです。
やる気がダウンする
努力の有無にかかわらず、いつも「上手!」「すごいね」などと言われてばかりいたら、反省したり、「次はどうしたらだろう」などと課題解決のために考えたりする必要がなくなります。
その結果、努力をして何かを成し遂げることの大切さを体感できず、「この程度でよいのだ」と思いこみ、上を目指すことをしなくなりがちです。
状況別の○×行動(セリフ)、言い換え
ここまで記事を読んだ皆さんは、
「子どもをほめられ中毒にさせないためにも、ほめないほうがいいの?」と思うことでしょう。
大切なのは、「ほめてはいけない」のではなく、「ほめ方」を工夫することです。
何も考えずに「すごいじゃん!」「えらいね!」などと言うのではなく、状況に応じて言い回しや伝え方を変えてほめることで、子どもはのびていきます。
以下、状況別に、良いほめ方、残念なほめ方を紹介します。
絵を描いたり何かを作ったりしたとき
「あなたは絵の才能があるね!」
「⚪⚪のところと△△のところが、ママはとてもいいなと思ったよ」
その結果、「これ、上手?」と常に承認を求めるようになり、「絵を描く」という本来の楽しさを見失ってしまうかもしれません。
子どもが絵を描いたり何かを作ったりしたときは、その作品で、「工夫されている」「個性がある」と感じた部分を具体的に言葉に表し感想を伝えましょう。
スポーツの習い事で結果を出したとき
親が子どもの自発性を認めてほめることで、子どもは「自分ががんばったことを、お母さん(お父さん)が認めてくれた!」と感じ、自己肯定感が育まれていきます。
お手伝いができたとき
「お手伝いできて、すごい!」
「○○ちゃんが片付けのお手伝いしてくれたから、お部屋がきれいになったね。助かったよ」
保護者が素直に「ありがとう」「助かったよ」と感謝の気持ちを言葉にすることも、子どもにとってはうれしいほめ言葉となり、「またがんばろう」という気持ちになります。
日常のささいなことでも、こまめに感謝の気持ちを伝えるとよいでしょう。
テストの点数がよかったとき
「えらいよ!」
「苦手な計算も間違いが減ったね」
ほめることの重要性
いかがでしたか?
子どもの「ほめられ中毒」が心配だからといって、「ほめてはいけない」のではなく、「ほめ方」を工夫することが大切だということがおわかりいただいたと思います。
子どもは、親の付属品ではなく、対等な一人の人間です。
その子の個性を認め、ほめて、励まし、勇気づけることが大切です。
繰り返しになりますが、抽象的にほめるのではなく、
・内面的な良さを発見してほめる
ことで、自主性が育くまれ、子どもたちが主体的に取り組むができるようになります。
この意味においても、「ほめ方を工夫してほめる」ということが大切なのです。
以下、子どもの成長の糧となるほめ方をおさらいしましょう。
・ 笑顔で喜びを伝える
ほめるときは、笑顔で感謝や喜びを伝えましょう。自分ができたことを認めてもらったと感じるようです。
・ 子どもとの遊びを大切にする
子どもと遊ぶことで、気持ちを共有できます。気持ちを共有できれば、「認められている」と感じることができます。
・ 子どもを尊重する
子どもは命をもった尊い存在です。認めてほめることで、子どもはその尊い存在を認識するでしょう。
・ 子どもに協力をお願いする
家族の一員として、お手伝いなど子どもに協力をお願いしましょう。
・ 子どもに「ありがとう」という
人は、「ありがとう」と感謝されると嬉しくなります。自分が認められたと感じ、「社会の一員」と自覚できるようになります。
・ 結果だけに注目しない
結果だけではなく、子どもが一生懸命取り組んでいることに注目しましょう。
・ 子どもに「どうすれば・・・」と聞く
何か失敗してしまったときは、「どうすればよかったかな」と聞きましょう。そして、ゆっくり答えを待ちましょう。
・ 当たり前にできていることに注目する
「おはようの挨拶ができた」「一人で起きることができた」など、当たり前にできていることに注目しましょう。
わが子がいいことをしたら、めいっぱいほめてあげたいのが親心。
ただし、これまで説明したように、間違ったほめ方を繰り返すと「ほめられ中毒」になることも。
「ほめてあげなきゃ」と考えるよりも、子どもの普段の様子をよく観察し、「頑張っているな」「成長したな」と思える部分に着目した声かけを心がけましょう。
・「ほめられ中毒」になると、チャレンジ精神ややる気がダウンするリスクがある。
・「ほめてはいけない」のではなく、「ほめ方」を工夫することが大切。
・ 子どもを一人の人間として認め、ほめて、励まし、勇気づける。
参考文献)
「【チェックリストつき】ほめられ中毒から子どもを守る! 自信を育む4つのほめ方」(出典:こども学びラボ)
「子どもにとって糧となる、ほめる、叱るとは(出典:PHP研究所 のびのび子育て)
「安易なほめて伸ばすがかえって子どものやる気を奪ってしまう理由」(出典:のびこ)
「根拠あるほめ方で、子どもの成長のチャンスを逃さない!」(出典:Z会)
「上手だねはNG! 自由な発想と創造力のある子がAI時代に強いわけ」(出典:こども学びラボ)