子どもの「食べない」問題とどう向き合うか
投稿日: 2024.02.13
わが子には、「好き嫌いなく、たくさん食べてグングン大きくなってほしい」と思いますよね。
しかし「小食」や「好き嫌いが激しい」といった食事への悩みには、「栄養は足りているのか」「成長に影響はないのか」などの心配がつきものです。
子どもの「食べない問題」とどう向き合ったらよいのか、保護者ができる対応策なども考えていきましょう。
もくじ
子どもの「食べない問題」 なにに困ってる?
子どもの食事は、多くの保護者にとっては悩みの種。
食べすぎや肥満も気がかりですが、「食べない」「好き嫌いが多い」などの悩みは子どもの成長や健康に影響を及ぼすかも…と、心配している人も多いでしょう。
子どもの「たべない問題」の、主な悩みについてあげてみましょう。
とにかく量が少ない「少食」
「すぐにお腹がいっぱいになってしまう」「食に興味がなく、全体的に食べる量が少ない」など、子どもの「少食」は成長に影響してしまいそうで心配になるでしょう。
生活習慣の乱れや個食(一人一人が違う時間に食事をすること)が食欲の妨げになっているケースも。
子どもの少食が気になる時は、「お菓子を食べ過ぎていないか」「運動量が少なくないか」を見直してみましょう。
また食べる量は個人差があり、少なくても身長・体重が平均値の中に入っていれば栄養は足りていると考えていいでしょう。
栄養のバランスは1週間〜10日単位で考えて、子どもにプレッシャーをかけすぎないのも大切です。
食べたり・食べなかったり「食べムラ」
「大好きだったおかずを、なぜか今日は食べない」「食べる日と食べない日の差が激しい」など、食べムラがあると食事を用意する側は困りますね。
子どもの味覚は大人より敏感と言われるので、同じように作った料理でも味や食感が微妙に違ったり、季節によって素材の味が気になることがあるようです。
また子どもは「繰り返し」が好きなので、新しいメニューや見たことのない食事に対する警戒心が強くなることも。
新しいメニューや食材を出す時は、いつもの食事にちょっぴり追加するように、少ない量から始めてみましょう。
大人のように「あまり食欲がないけど、とりあえず食べておこう」という調整は、子どもはあまりできません。
子どもは身体に必要な適量を、その都度食べていると考えましょう。
「好き嫌い」と「偏食」
混同されがちですが、「好き嫌い」と「偏食」は違います。
好き嫌いは、特定の食品や味に対する個人の「好み」や「嫌悪感」のことで、「これとこれが苦手」のように嫌いなものは数えられる程度のものです。
偏食はある特定の食べ物だけを食べ、それ以外は食べないなど、「食べられるものの数の方が少ない」場合、栄養学的にも偏りのある場合のことを言います。
医学的な定義はありませんが、日本で偏食と呼ぶ場合、小児学の分野では「健康に影響するくらい食べられない子」のことを指します。
「好き嫌い」であれば、「親戚の家で食べたら好きになった」のように偶然食べられるようになったり、成長とともに減ることもあるので、さほど神経質にならなくても大丈夫でしょう。
「偏食」に関しては、長期間になると栄養欠乏の症状が出ることもあります。
代替食品を探したり、医療機関に相談するなど、子どもの様子を観察しながら対応していきましょう。
いつまでも終わらない「遅食」
食べ物をしっかり噛んでゆっくり食事することは大切ですが、あまり時間をかけ過ぎると満腹になってしまい、量が少なくなる傾向があります。
なぜ時間がかかり過ぎるのかを見てみると…
・食べることに興味が持てない。
・その子にとっては量が多くて食べきれない。
・そもそもお腹が空いていない。
などが挙げられます。
「集中できる環境を整える」「食事の量を調整する」など、その子の様子を観察しながら対応を変えてみると解決することもあります。
家ではゆっくり食べられても、給食などでは一定時間内に食べ終わる必要があるので、年齢とともにスピードアップする訓練ができるといいですね。
なぜ「食べない問題」が起こるのか?
大人からすると、子どもが「なぜ食べ物に興味が持てないのか」「どうして美味しさが理解できないのだろう」と不思議に思うこともありますね。
人の口の中には、「味蕾(みらい)」と呼ばれる小さな器官があり、それが食べ物の味をキャッチして、神経細胞を伝わり、脳が「甘い」「苦い」などを知覚します。
この味蕾は生まれた時が一番多く、大人になると子どもの3分の1程度まで減るといわれています。
実は味蕾は「腐ったもの」や「毒」を体に入れないために、「酸っぱいもの(腐敗)」と「苦いもの(毒)」を感知するセンサーでもあるので、子どもは「苦さ」や「酸味」を嫌がる傾向があります。
また「新しい味」や「未経験の食材」に対しての警戒心が強く、なかなか新しいメニューに手が出ないこともあるでしょう。
過去に試して失敗した(まずかった)記憶が鮮明で、その食材やメニューを食べられなくなることもあります。
しかし多くの場合、成長とともに「友だちの家でご馳走になる」「テレビで美味しそうなメニューを見る」「家族が美味しそうに食べている」などで、自然に好き嫌いも減り、量も増えることが多いはずです。
プレッシャーをかけて食べさせようとしたり、専門機関に相談したりしなくても、焦らずに時期を待てば解決することがほとんどです。
子ども成長などに影響はあるの?
子どもの食事量が少なかったり、好き嫌いが多いと「成長に影響が出るのではないか」「脳の発達を妨げるのではないか」と心配になりますね。
子どもの背が一番伸びるのは、生まれてから4歳くらいまでの「乳幼児期」と小学校高学年頃から始まる「思春期」。
この時期にしっかり成長させるには食事が大切ですが、「少食」や「好き嫌いがある」場合は、栄養をまんべんなく摂れるように、なるべく色々な食べ物を少しずつ食べられるように心がけてみましょう。
例えば…
・野菜たっぷりの具沢山お味噌汁にする。
・おやつをナッツや小魚チップスにしてみる。
など、小さな工夫で子どもの栄養バランスが整うでしょう。
子どもの「食べない問題」に、大人はどう向き合うか
子どもが「食べない」「少食」「好き嫌いが多い」となると、食事を作る人は「作り方が悪いのかな…」「もっと料理が上手になれば…」と自分を責めてしまいがちです。
しかし食べないのは「子ども自身の都合」であり、どんなに工夫をしても、上手に作っても食べない時は食べません。
大人が食べさせようとキリキリしたり、プレッシャーを与え過ぎることで、食べること自体を嫌いになり、逆効果になることもあるので、ゆったり構えるのも大切。
子どもの食べない問題は、成長するにつれてほぼ解消すると考えて、少し肩の力を抜いて対応しましょう。
○ 子ども中心に食事を考えない
○ 食べなくても食卓に出す
○ 子どものサインをキャッチする
○ 好物の量を減らしてみる
○ 食への関心を高める
子ども中心に食事を考えない
子どもがいると無意識に、「子どもが好きな献立」や「子どもが苦手な野菜を克服するためのメニュー」など、つい子どもを中心にした食事を考えがちです。
また「今日何が食べたい?」などとリクエストを受けたり、「子どもが食べないから作らない」など子どもの“食べる・食べない”が食事の基準になると、メニューが固定化し、子どもの食事の幅が広がりにくくなってしまいます。
そして子ども中心の食事を作ることに、大人が疲れてしまうことも…。
食事は「大人が考える」と決めて、大人が美味しく・楽しく食事をすることが大切。
それを見た子どもは、「自分も食べてみたい」「美味しそう」と前向きに感じるようになるでしょう。
食べなくても食卓に出す
子どもが嫌いなメニューは、気が引けたり、無駄になるかも…と出さないようにしてしまいがちです。
しかし苦手なものでもくり返し食卓に出すことで、子どもが食べるようになるという研究結果も出ています*。
*Carruth BR, et al. Prevalence of picky eaters among infants and toddlers and their caregivers’ decisions about offering a new food. J Am Diet Assoc. 2004 Jan; 104 (1 suppl 1):57-64
子どもは慣れ親しんだものが好きなので、初めて見るものへのハードルは高いかもしれませんが、見慣れてくると「食べてみよう」と思うかもしれません。
子どもが食べる・食べないに関わらず、いろいろな献立を食卓に並べるのは、子どもの食育にとってもよいことのようです。
子どものサインをキャッチする
子どもは語彙や経験が少なく、意思表示のバリエーションも豊かではありません。
例えば、子どもが食べたものを吐き出してしまう時は、「今の自分の感覚に合っていない」「まだ食べる準備ができていない」というサインかもしれません。
「嫌なら食べなければいいのに…」と思うのは大人の視点で、子どもは食べてみるまでわからないのです。
また子どもが泣き出してしまったり、怒り出すなら、「嫌いな理由が説明できない」ことへの悲しさやいらだちかも。
子どもが出しているサインを子どもの視点で想像してみると、何かのメッセージの可能性もあります。
サインをキャッチできれば、大人の心配やイライラは軽減されることもありますね。
好物の量を減らしてみる
白米やパン、うどんなど炭水化物が大好きで、おかずや野菜をあまり食べない…といった場合、炭水化物を減らすことで食事のバリエーションが増えることがあります。
炭水化物やジュースなどの高カロリーで糖質が多いものは、脳内ホルモンが分泌されて満足感が得られやすいため、「他のものを食べたい」という気持ちが起きにくくなります。
特に「食が細い」「好き嫌いが激しい」という場合は、好きなものを減らしてみると、自然と苦手なものにも手が伸び、食のバリエーションが豊かになることも。
大好きなものを減らすのは、かわいそうな気持ちがするかもしれませんが、食事はバランスが大事です。
「食べさせない」のではなく、好物の量を減らして他の食べ物の種類を増やしてみましょう
食への関心を高める
食べ物への興味や関心がわくと、食欲を刺激されることがあります。
・子ども目線でスーパーの買い物をさせてみる。
・袋に入れた食材を叩いて砕かせる。
・メニューを考えてもらう
・「卵を割る」「トマトの皮の湯むき」など、少し難易度の高いことに挑戦させる。
など、食に関する役割を果たしてもらうと、食事を作る楽しさ・大変さが分かり、食への興味や関心が養われるかもしれません。
また食事をしながら家族の会話が弾み、「これ美味しいね」「今は〇〇が旬なのよ」などと食べ物の話をすることで、食事の楽しさを実感し、食べることに前向きな気持ちになることも大切。
好き嫌いをなくし、食事を適量摂ることも大切ですが、まずは「楽しい食事」を心がけると、親子双方のプレッシャーがなくなりますね。
・子どもの「食べない問題」は、少食や食べムラ、好き嫌い、偏食、遅食など。
・子どもは味をキャッチする器官「味蕾」が多いので、食べ物に対して敏感になりがちだが、成長とともに解消することが多い。
・子どもの食事量が少ないと感じたら、少しずつ色々な食べ物を食べさせるようにする。
・大人は子どもの食べない問題に引きずられず、大人のペースで食事を用意し、食事時間を楽しく過ごすように気を付けるとよい。
(参考文献)
・PHP研究所 nobico | 子どもの「嫌いな食べ物が増えてしまう」3つのNG習慣
・Level Up | 成長期の栄養 不足しているかも?!〜親が心配になったときに考えたいこと〜
・こどもまなびラボ | 【年齢別】「子供がご飯を食べない」原因と対処法。好き嫌い・少食・偏食はいつ治る
・パルシステム KOKOCARA | 「味覚の発達は12歳がピーク」“世界のミクニ”に聞く、子どもの五感を開く味覚の育み方