非認知能力を育むために必要な親子の「愛着」とは?
更新日: 2022.10.17
投稿日: 2021.04.16
乳幼児期は、養育者と子どもが深いところでつながる心の絆=「愛着」の形成が大切であると考えられています。
深い愛着関係を形成することで、生涯を通じた自己肯定感や周りの人への信頼感、感情を調整する力、やり抜く力など、「非認知能力」を育むといわれています。
アメリカやロシアなどで行われた研究結果をもとに、非認知能力と親子の「愛着」との関係について解説します。
もくじ
「愛着」って何? 愛着と非認知能力の関係とは
「愛着」とは、乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者の間で築かれる、心理的な結びつきのことです。
専門用語で「アタッチメント」とよばれています。
生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹がすいたときやおむつが汚れたとき、眠いときなどに泣くことで、自分の気持ちや欲求を表現します。
そんなとき、ママやパパは、かけよっておっぱいやミルクをあげること、抱っこすることや声をかけることをしますよね。
これを繰り返すことで、子どもは、ママやパパに対し、「この人は自分の要求を感じ取り、受け止めてくれる」「この人は自分によく声をかけてくれ、抱っこしてくれる」と認識するようになります。
これが、「愛着形成」の第一歩です。
子どもはこの「愛着」を土台に、ひとりで歩くようになり、言葉を話すようになり・・・と、日々成長していきます。
このような成長と共に愛着関係が継続されることで、子どもは「自分は愛されているんだ」と自信を持てるようになります。
「ママやパパはいつも自分を見守ってくれている」。
「何かに失敗したときも励ましてくれる」。
そうした安心感の中でさまざまな遊びを経験し、非認知能力が育まれていくのです。
子どもと大人との“関わり”が非認知能力に直結する
2000年代にロシアのサンクトペテルブルクで行われた研究において、「非認知能力」と「愛着」についての興味深い結果が出ています。
ポスト・ソビエト時代の社会や経済の崩壊により、ロシアでは、多くの乳幼児が孤児院に入ることを余儀されました。
とある孤児院では、スタッフが子どもたちに十分や食べ物や衣類を与え、清潔なベッド、適切な医療を整えたものの、子どもたちに接する態度は人間味に乏しく、“温かさ”はなかったそうです。
その様子をみたロシアとアメリカの科学者のチームが、スタッフに、もっと心のこもった世話をするよう教育しました。
ただ機械的に食事や入浴をさせるのではなく、子どもたちに声をかけたり、笑顔を向けたりするよう促したのです。
その9か月後に、子どもたちに大きな変化がみられました。
著しい社会性の発達、健全な体の発育が、顕著に表れたそうです。
スタッフである大人が行動や態度を改善したことで、子どもと大人との“心の関わり”が生まれ、非認知能力を高めることが証明されたのです。
また、1970年代にアメリカで行われた研究によると、1歳の時点で親との間に安定した愛着関係が形成された子どもたちは、幼稚園では注意深く物事に集中することができ、小・中学校では好奇心とレジリエンス(=しなやかな強さ)を示し、高校を中退することなく卒業する確率が、著しく高かったそうです。
次のページでは、親子の愛着関係を育むためのポイントをご紹介します。
親子の愛着関係を育む3つのポイント
親子の愛着関係を育む上で大切なポイントを3つ、紹介します。
母親、父親がリラックスしている
養育者である母親、父親がいつもストレスを感じているような状態だと、子どもは「自分は愛されている」という実感を味わうことができません。
仕事や家事で忙しい日々のなか、「常にリラックスしている」状態を保つことは難しいかもしれませんが、
⚫️子どもと遊ぶとき
⚫️いっしょにお風呂に入るとき
⚫️読み聞かせをするとき
などの時間は親自身がリラックスし、楽しいひとときを共有しましょう。
スキンシップを大切に
抱っこでスキンシップをとることは、とても大切なことです。
「何歳になっても抱っこばかりしていると、子どもを甘やかすことにつながる」などといわれることもありますが、子どもがスキンシップとして抱っこを必要としているときは、子どもの気がすむまで抱っこをしてあげましょう。
大切なのは、甘やかすのでなく、子どもが甘えたいときに、しっかり受け止められる環境を作ることです。
不安なこと、こわいことから守る
「明日は運動会だけど、かけっこでころんじゃったらどうしよう」「かみなりがこわい」など、子どもが不安がったりこわがったりするような言動がみられることがあります。
そのときは、「だいじょうぶ。もしころんじゃっても、ママは応援しているからね」「かみなり、こわいね。でも、おうちの中なら安全だし、もうすぐ遠くにいっちゃうよ」などと守ってあげましょう。
子どもが成長するにつれ、親はつい、「もうお兄ちゃん(お姉ちゃん)だから大丈夫」とつきはなしてしまいがちです。
子どもの気持ちを受け止め、不安な気持ちはその都度やわらげてあげることが、心の安定につながります。
本文
・ 赤ちゃん時代からの愛着形成が大切
・ 親や周りの大人と子どもが温かく関わることで、非認知能力が育つ
・ 親子のスキンシップを大切にし、不安なことやこわいことから守る
・ 親がリラックスした状態で、子どもと向き合う
親と子どもの関係が非認知能力に大きく影響を与えることが分かりました。
子どもは親が自分のことをどの様に受け止めてくれているかを知ることで、安心感や自信を持つことに繋がっていきます。
どんなに十分な食事や衣類などを与えても、そこに心を込めた行動がなくては、子どもの成長に繋がりません。
子どもが親を求めに来た時は、できる限り、リラックスした状態で話を聞いてあげることや直接体と体が触れ合うように接してあげ、子どもが安心した生活を送れる環境を作りましょう。
(参考文献)
・私たちは子どもに何ができるのか(ポーク・タフ著、高山真由美訳 英治出版)
・病児保育フローレンス保育塾|子どもの気持ちに寄り添う関わり方とは?
・たまごクラブひよこクラブ|非認知能力の発達に欠かせないアタッチメントとは(遠藤利彦・監修)