子どもの忘れ物を減らす近道は「親が干渉し過ぎないこと」
投稿日: 2024.12.10
子どもの忘れ物は、親にとって悩ましい問題です。
なかなか忘れ物が減らないと心配になり、夜も朝も「忘れ物ない?」と声をかけたり、忘れ物をしないように手伝ってしまいますね。
しかし子どもの忘れ物を減らすには、少し距離を置いて見守る姿勢が大切です。
子どもはどうして忘れ物をしてしまうのか、その仕組みと対策を考えていきましょう。
もくじ
親がどこまで干渉すべきか悩んでいる保護者の方も多い
子どもが忘れ物をすると、先生から注意を受けたり、学校で子どもが困ったり、「なんとかしなくてはいけない」と思いますね。
確かに低学年のうちであれば、一緒に持ち物を確認したり、チェックリストを作ったりするサポートが必要かもしれません。
しかし中〜高学年になっても忘れ物の癖が治らないようなら、親が少しずつ手を離していくことも大切になってきます。
これから成長していく子どもに、親がずっと忘れ物を届け続けることはできないので、いずれ自分で「忘れ物をしないための行動」を身につけなくてはならないでしょう。
口や手を出しすぎないように、少しずつその準備を進めたいですね。
子どもはなぜ忘れ物が多いのか
いつまでも直らない「子どもの忘れ物クセ」に、頭を抱えている親は多いのではないでしょうか。
子どもはなぜそんなに忘れ物をするのでしょうか。
○ 連絡帳などを確認しない
○ 整理整頓が苦手
○ 時間や気持ちの余裕がない
○ 集中力が維持できない
○ 持っていくものを把握していない
○ やるべきことを後回しにするクセがある
○ 持ち物の重要性に気づいていない
連絡帳などを確認しない
忘れてはいけないものは、おそらく子どもが連絡帳に書いたり、メモを取ったりしているはず。
しかしその記憶を頼りに、書いたものを見ずに準備をしている可能性があります。
「人間の記憶は曖昧」「記憶違いもある」ということを理解して、連絡帳やメモを見る習慣を。
整理整頓が苦手
整理整頓ができていないと、どこに何があるか分からなくなって持っていくものを探せず、それが忘れ物につながることも。
また身の周りの整理整頓が苦手な子は、ものごとを順序立てて考えるのが苦手な子も多いため、「明日の持ち物」や「必要なもの」を落ち着いて考えられないのかもしれません。
まずはモノを減らして、整理整頓をする習慣から身に付けたいですね。
時間や気持ちの余裕がない
・夜、習い事や塾で準備の時間が少ない
・朝、出かける前に学校の準備をする
など時間や気持ちに余裕がないと、慌てて準備をするため、忘れ物をしやすくなります。
ゆっくり落ち着いて持ち物を準備できるようになると、忘れ物の回数が減るでしょう。
集中力が維持できない
翌日の準備をする間はさほど長い時間ではありませんが、子どもは集中力が維持できないことがあります。
注意力散漫で次の日の用意や宿題をしていると、必要なものを入れ忘れたり、準備途中で別のことをしてしまうこともあります。
持っていくものを把握していない
そもそも何を持っていくべきかを理解していない場合もあります。
「先生の話を聞いていなかった」「連絡帳の記入が間違っていた」「プリントをなくした」など、最初の行動にミスがあると忘れ物が増えてしまいます。
やるべきことを後回しにするクセがある
学校の準備や持ち物の用意を、「明日の朝でいい」「後でやろう」と後回しにすると、結局準備の時間が足りなくなります。
時間不足の中で準備を進めると、持ち物を取りこぼしたり、必要なものを見つけられなかったりと、忘れ物をしてしまいがちです。
持ち物の重要性に気づいていない
コンパスや分度器など、学習用具を忘れると授業への遅れも心配です。
また給食の白衣などを忘れると、他の人に迷惑をかけることもあります。
子どものうちは、持ち物の重要性が理解できていないので、忘れ物をしてしまいます。
子どもの忘れ物と深い関係がある「ワーキングメモリ」
子どもが忘れ物をしてしまうのは、脳の「ワーキングメモリ」と深い関係があります。
このワーキングメモリに関して、理解を深めていきましょう。
ワーキングメモリとはなにか
ワーキングメモリは、聞いたり見たりした情報を一時的に置いておく脳の中の作業台のような場所です。
数十秒から1分程度の間の短期記憶として覚えておくことができ、大切なものは長期記憶として振り分けられ、必要ないものは捨てられます。
例えば、
「へぇ、いいなぁ〜」
「私がチーズ苦手なのを忘れて、チーズケーキ買ってきたんだよ」
「○○ちゃん、チーズ苦手なの?」
という会話の中で、「お父さんがチーズケーキを買ってきた」ということをワーキングメモリが一時的に覚えていることで、次の会話が成り立ちます。
また「ケーキを買ってきてもらった」という情報はすぐに捨てられてしまっても、「友だちはチーズが苦手」という重要な情報は長期記憶に残されて、家に遊びに来る時に「チーズケーキは買わないでおこう」などと役立てることができます。
ワーキングメモリは、その取捨選択をして脳がさまざまな記憶を行う手伝いをしているのです。
ワーキングメモリはどう働いているのか
例えば学校で、「来週の図工の授業で牛乳パックを使います。家にある牛乳パックを集めておいてください」という先生の話があったとします。
話を聞いた時には、「来週・図工・牛乳パック」などの情報が一時的にワーキングメモリに置かれます。
そしてワーキングメモリの記憶を元に、「来週は図工か、楽しみだな」「そうだ、お母さんに言って牛乳パックをとっておいてもらおう」などと考えます。
しかし帰る頃になり、友だちと「今日、なにして遊ぶ?」と話したり、「宿題が終わったらゲームしよう」などと考えるうちに、ワーキングメモリ上の記憶は消えてしまいます。
その代わり、書いたメモを見たり、友だちと「来週の図工で何作るんだろうね」と話をすると、長期記憶の中から情報が引き出され、再びワーキングメモリの作業台に乗せられて「思い出す」という仕組みです。
ワーキングメモリと子どもの忘れ物の関係とは
子どものうちはワーキングメモリの量が小さいので、一度に覚えられる情報量が少なく、忘れ物が多くなってしまうことがわかっています。
また左脳で「言葉」や「文字」として認識しながら、右脳ではイメージをとらえるため、知らない言葉やイメージできないものを言われても、右脳と左脳がうまく結び付かず、記憶に残りにくくなります。
ワーキングメモリは子どもの学習能力や情報処理能力とは関係なく、成長するに従って大きくなるものです。
そしてその働きには遺伝的な要素もありますが、日頃の習慣で伸びることがわかっています。
忘れ物を減らすには…自分でできる仕組みが必要!
子どもは忘れ物をするものですが、「まだ子どもだから」「手伝わないと、もっと忘れ物が増えてしまう」と手厚くサポートしてしまうと、結局「いつまでも忘れ物が減らない」というスパイラルに。
子どもの忘れ物を減らすには、さまざまな仕組みづくりが大切です。
ここでは子どもが自分で準備を進めて、忘れ物を減らすためのポイントを紹介します。
○ モノの数を減らし、モノの居場所を決める
○ 準備する時間を確保する
○ メモ→チェックの習慣化
○ 「忘れ物をしない仕組みづくり」に協力する
○ 準備を手伝いすぎない
モノの数を減らし、モノの居場所を決める
散らかっていて、どこに何があるか分からない状態だと、持ち物を探すのに手間取るので準備自体が面倒に感じることもあるでしょう。
不要なモノは処分して、モノの居場所を決めてあげれば、自然と整理整頓ができるようになります。
すると子どもの周辺がすっきりして、忘れ物が自然と減少するでしょう。
準備する時間を確保する
「夜はいつも夜更かしをして準備をしない」
「いつも寝坊して朝の準備の時間が慌ただしい」
といった生活だと準備に時間がかけられず、結果、忘れ物が増えてしまいます。
お風呂の後や布団に入る前など、翌日の準備の時間を決めて、準備の時間をしっかり確保するように習慣づけましょう。
できれば朝の忙しい時間ではなく、前の日のうちに準備を済ませるようにスケジュールした方がいいですね。
メモ→チェックの習慣化
忘れ物を減らすには、持っていく物のメモを取り、それをチェックするという一連の流れが必要です。
どんなに記憶力がいい人でも、メモを取らずに全ての持ち物を忘れない人はいません。
「持ち物を書く→準備の時にそれを見る」という習慣さえ身につけば、忘れ物が減り、「叱られなくなった」「忘れ物をしないと気分がいい」と成功体験として子どもの記憶に残ります。
それを繰り返すことでプラスのスパイラルになり、習慣がより強化されるでしょう。
「忘れ物をしない仕組みづくり」に協力する
例えば子どもには、
「用意はするけど、家を出る時に忘れてしまう」
「朝、急いで支度をする時に忘れ物をする」
など、忘れ物のパターンがあるはずです。
そのパターンを見極めて、「前日の準備時間の確保」や「チェックリスト作成」「持ち物置き場の設置」など、子どもの忘れ物を減らすための仕組みづくりを一緒に行いましょう。
「玄関に置き場を作る」や「持ち物チェックボードを作る」など、子どもだけではできないこともあるはずなので、大人も協力して「連絡帳などをチェック→実際に準備→準備したものを忘れず持っていく」という流れを作れば、少しずつ忘れ物が減っていくはずです。
準備を手伝いすぎない
忘れ物を心配して大人が手伝っている間は、「最終的にやってもらえる」と甘えの気持ちが芽生え、いつまで経っても身につきません。
忘れ物をしないための仕組みづくりを手伝ったら、大人は手を離して見守りに徹しましょう。
最初は完璧に忘れ物がなくならないかもしれませんが、子ども自身が気づいて工夫し、自分のやり方で忘れ物を減らせるはず。
自ら考えて工夫し、身につけたものは大人になっても習慣となり、一生涯の宝物になるでしょう。
子ども自身が考えて行動する習慣が大切
子どもの忘れ物防止には、「ワーキングメモリ」が重要だということが分かりました。
脳の機能であるワーキングメモリをしっかり育てるには、子どもの「考える力」も同時に育てる必要があります。
普段の生活から、自分で行動を決める、着ていく洋服を選ぶなど、子どもに決定権を渡してみましょう。
また子どもの忘れ物を減らすには、子どもの行動パターンに合った「忘れない仕組み」を作り、それを繰り返して習慣化することが一番の近道。
大人が忘れ物をしないように手伝いすぎると、子ども自身が考えて工夫をするチャンスを奪うことになってしまいます。
忘れ物をすることで、子どもなりに「大変な思い」や「恥ずかしい気持ち」を経験し、意識が変わることもあります。
反対に大人が叱りすぎると、子どもの気持ちが萎縮してしまい、「考える力」がうまく育ちません。
子どもの考える力を伸ばしながら、忘れ物をしない習慣も同時に身につけさせたいですね。
・子どもが忘れ物をするのは、脳の一時的な情報の置き場所である「ワーキングメモリ」の機能が関わっている。
・子どもが忘れ物をするのは、整理整頓が苦手だったり、集中力が維持できない、持ち物の重要性に気づいていないなどの理由がある。
・忘れ物を減らすには、大人は仕組みづくりを手伝うだけにして、あとは見守ることが大切。
・脳の機能を伸ばすために「考える力」を育てることが、子どもの忘れ物防止への近道。
(参考文献)
・学研 | 困った! 小学生の「忘れ物」その原因と対策について解説します
・ウチコト | 【専門家に聞く】子どもの忘れ物が多い時の対策は? 親のNG行動も解説
・朝日新聞 EduA | 子どもがよく忘れ物をするのはなぜ? 原因は「脳の中の黒板」、記憶を定着させるポイントは
・プレジデントオンライン | 「何度注意しても忘れ物を繰り返す」子どもをそう育ててしまうダメな親の“ある口癖”