親が子どもの時にしていたスポーツを教えるときの注意点
更新日: 2024.10.03
投稿日: 2024.09.10
「子どもにスポーツをやらせたい」と考えた時、親が子どもの頃にしていたスポーツをやらせる人も多いでしょう。
親がそのスポーツの経験者の場合、「そのスポーツの楽しさ」や「どうしたら上手くなるか」を知っているという利点もありますが、時にはその知識が邪魔になることも…。
親が取り組んでいたスポーツを子どもに教える際の、注意点やコツをご紹介します。
もくじ
スポーツを教える側の心構えとは?
大人と違い、心も体も成長途中の子どもにスポーツを教えるには、教える側が心がけるべきことがたくさんあります。
日本スポーツ協会がよい指導者に必要な心構えとして、「PATROL」という言葉を提唱しています。
結果ではなく経過を重視すること
A=Acknowledgement
相手を認めて、意思を尊重すること
T=Together
一緒に楽しみ、一緒に考えること
R=Respect
尊敬し、尊重すること
O=Observation
よく観察すること
L=Listening
よく話を聴くこと
これは相手が子どもであれば、より強く心がけたいポイントですね。
親が経験したスポーツを教えることの難しさ
子どものスポーツは低年齢化が進み、幼い頃からスポーツを始める子が増えています。
その影響もあり、親が子どもにスポーツを教える機会が増加しているのでしょう。
しかし親子関係でスポーツを教え・教えられるのは、難しさもともないます。
親が経験したことのあるスポーツなら、なおさらです。
その理由をあげていきましょう。
○ 親が主導になってしまう
○ 自分のやり方や練習法にこだわる
○ 先回り・ダメ出しが増える
○ 子どもの気持ちが後回しに
○ 期待し過ぎてしまう
親が主導になってしまう
子どもが自分と同じスポーツを始めると、
「自分が教えてあげられる」
「技術向上の方法がわかるから、早く上達する」
「一緒にプレーできたら楽しい」
などと考えて、張り切って教え始めてしまう親は多いようです。
子どもが夢中になる前に、親の方が熱くなりすぎたり、熱心になると逆効果になることも…。
子どもが取り組むスポーツは親が主導になってしまいがちです。
自分のやり方や練習法にこだわる
今はスポーツへの科学的アプローチが進み、昔ながらの練習に「あまり意味がない」「逆効果」であることが判明していることもあります。
しかし自分の記憶を頼りに、「この練習をしてから強くなった」「ここを鍛えると足が早くなる」といった我流の練習法などを押し付けてしまいがちです。
また子どもに合わない練習法を、本や動画などを参考に強引に取り組ませたりと、ひとりよがりな考え方に偏ってしまうこともあります。
自分自身や子どもを俯瞰して観察し、のめり込み過ぎない冷静さを持ちたいですね。
先回りやダメ出しが増える
親が経験したスポーツは次に何が起こるが予想しやすく、親が先回りして注意してしまい、子どもはただ言われた通りにするだけ…ということも。
スポーツは子ども自身が経験し、失敗を重ねて、自分で学ぶことが大切。
先回りのし過ぎは子どもの可能性を摘み取ることになりかねません。
また親が取り組んでいた当時は失敗したり、言われた通りにできなかったり、悩んだこともあったはずなのに…。
それを忘れて、子どもが失敗した時や何度言ってもできないと、「なんでできないんだ」「それじゃダメだ」とダメ出しが増える傾向があります。
子どものやる気を削がない工夫が必要です。
子どもの気持ちが後回しに
子どものスポーツは、「子どもがやりたい」「子どもが楽しんでいる」ことが前提。
しかし「自分がしていたスポーツをやらせたい」「一緒にそのスポーツを楽しみたい」「叶わなかった夢を子どもに重ねる」など、親の一方的な思いから取り組ませることも少なくありません。
親子といえども、同じスポーツを楽しいと思うかどうかは分かりません。
まずは色々なスポーツを体験させてみて、子どもの率直な気持ちを聞いてみるなど、子どもを置いてきぼりにしないようにしましょう。
期待し過ぎてしまう
親が経験したスポーツを子どもに教えると、「経験者がアドバイスで上達が速くなるはず」「親子で取り組んでいるから他の子より有利かも…」と、期待するレベルが上がりがちです。
特に親がそのスポーツを上手にこなしていたケースなどは、「わが子だからできるはず」と、必要以上に結果を求めてしまうこともあるでしょう。
しかし親子でも、得意・不得意や好き嫌いは違い、過剰な期待は子どもの本来の力を引き出せないことにもなります。
親がしていたスポーツを子どもに教える時はココに注意しよう!
経験のあるスポーツをわが子に教えることが、難しいことはわかりました。
それでもやっぱり子どもに教えたい、一緒にスポーツをプレーしたいという気持ちは大切なこと。
そんな時は、下記のことに注意しながら指導してみましょう。
○ 子どもをよく観察する
○ 熱くなり過ぎない
○ コーチと二人三脚で
○ すべてを教えない
○ ゴール設定を明らかに
子どもをよく観察する
子どもがそのスポーツを楽しんでいるか、自分から進んでやろうとしているか、子どもの様子をよく見ましょう。
「楽しいか?」「面白いだろ?」と親から聞かれてしまうと、子どもはYESと答えるしかありません。
一番大切なのは、子どもがそのスポーツを楽しむこと。
意識して子どもから距離を取り、子どもを観察してつまらなそうな様子や「言われてから動く」という様子が見られたら、もしかしたら楽しんでいないのかもしれません。
子どもの方から「教えて」「一緒にやろう」と言われるまで、親の指導は封印してみましょう。
親が熱くなり過ぎない
「上手くなってほしい」「レギュラーを取りたい」と、親の方が熱くなっているケースはよく見かけます。
しかし親が熱くなればなるほど、子どもの熱は冷めてしまうもの。
子どものやる気や集中力を司る脳の「線条体」は、親が「怒る・叱る・否定」をすると、動きが鈍くなることがわかっています。
つまり子どもを伸ばそうとして厳しい指導をすると、反作用でやる気はどんどん下がってしまうという仕組みなのです。
コーチの指導を共有する
そのスポーツを習っていたり、教室に入っている場合は、コーチや指導者の言っていることを親子で共有するようにしましょう。
親とコーチが違うことを教えてしまうと、子どもが混乱してしまいます。
またコーチの指導を子どもが理解できていない場合は、親が翻訳してあげることも必要です。
「コーチの指導は間違っている」「自分(親)の方が正しい」など指導者を否定するのは、子どもがやる気をなくし、スポーツの上達を妨げてしまうのでやめましょう。
すべてを教えない
手取り足取り教え過ぎてしまうと、子どもが動きを見て真似をしたり、失敗から学ぶチャンスを奪ってしまうことに…。
スポーツをするうえで、
自分でイメージした動きを実際にやってみる
↓
失敗を繰り返しながら少しずつできるようになる
↓
しっかり身につく
というプロセスが大事ですが、一から十まで教えてしまうとその過程が体験できず、自分の力で上達していくことができません。
親は「教えたい」「伝えたい」と思うことをグッとこらえて、見守りに徹しましょう。
ゴール設定を明らかに
例えば親は「ユースのチームに入ってほしい」と高い目標を持っていても、子どもは「楽しくプレーできればいい」と思っていたり…。
双方の目指すゴールにズレがあると、親子のやり取りや練習内容が噛み合わなくなります。
日頃から、子どもが何を目指したいかを確認しながら練習をしましょう。
「そんなに上を目指さなくていい」と言っていた子が、メンバーに選ばれた途端、「やっぱりもっと上手くなりたい」と変化するのはよくあること。
子どもは日々変化するので、時々気持ちを確かめることも大切です。
親は子どもの「好き」「楽しい!」が続くようにサポートしよう
技術向上だけを目指すなら、スター選手のプレーを見て真似たり、動画サイトで自分に合う方法を見つけたり、今はさまざまな方法があります。
また子どもがスポーツを習っているなら、そのコーチがその子に合った指導をしてくれるでしょう。
親の一番の仕事は、子どもがそのスポーツを好きでいられるようにサポートすること。
試合で活躍して喜んだり、メンバーに選ばれずに落ち込んだり、理由はないけれどやる気がなくなったり、子どもがスポーツをしていると気持ちの波が生まれます。
親は一緒に喜んだり、時には息抜きやストレス発散をさせながら、長くそのスポーツを続けられるようにサポートできるといいですね。
・子どものスポーツを始める年齢が早まっているため、親がスポーツを教える機会が増えている。
・親が経験しているスポーツを教える場合、その知識が邪魔になることがある。
・我流の理論や練習法にこだわったり、期待し過ぎたり、ダメ出しが増えてしまう。
・親が子どもの時にしていたスポーツを教える時は、熱くなり過ぎないように、少し引いた姿勢が大事。
(参考資料)
・日本スポーツ協会 | 求められるスポーツ指導者像〜よい指導者になるために
・すたベンドリル | 子どものスポーツの教え方のコツとは? 親が運動を教えるときの注意点も解説
・サカイク | 自主練しない息子。モチベーションアップは親の役目ですか問題
・コクリコ | 「3つの親ルール」スポーツで子どもと親が成長するための鉄則とは?