スポーツや学びにも取り入れたい「プレイフルネス(遊び心)」の考え方
更新日: 2023.12.04
投稿日: 2023.12.12
ひと昔前はスポーツや勉強で、「楽しみながらやる」「遊び心を取り入れる」という取り組み方は、「不真面目」「真剣にやっていない」というような評価を受けがちでした。
しかし今は、「楽しむ」「前向きに」「ワクワク」といったキーワードはポジティブに捉えられ、イヤイヤ取り組むよりも効果的に上達し、結果を出せることがわかっています。
教育現場でも注目されている「遊び心=プレイフルネス」の考え方とは一体どんなものなのか、また日常生活への取り入れ方などを一緒に考えてみましょう。
もくじ
プレイフルネスとはなにか
「プレイフルネス」は、直訳すると「陽気さ」「楽しみ」「遊び」「面白い経験」などの意味です。
学びやスポーツ、日常生活でプレイフルネスを取り入れることは、遊び心を忘れずに何ごとも楽しんで取り組む心のあり方のこと。
幼い頃は公園での鬼ごっこやボール遊び、積み木、パズルなども、自由に楽しみながらできたはずですね。
しかし年齢を重ねると「うまくやりたい」「もっと技術を身につけたい」「いい点数を取りたい」と、より真剣に生真面目に取り組むようになってきます。
それはそれで良いことなのですが、「遊び要素」や「楽しむ心」つまり「プレイフルネス」が抜け落ちると、そのうち学ぶことや取り組んでいるスポーツ自体が楽しめなくなってくることも。
プレイフルネスを大切にしていると、「勝敗」「点数」「結果」が伴わなくてもやり甲斐を感じられ、そのスポーツや学ぶことのプロセスが楽しめるようになります。
そして楽しんで前向きに取り組むうちに、柔軟性や主体性、ポジティブな気持ち、折れない心、挑戦する気持ちなどの非認知能力も同時に鍛えられるでしょう。
またプレイフルネスを大切にした仲間との遊びやスポーツにおいては、怒りの気持ちやネガティブな行動が減少するという調査結果も出ています。(*応用心理学研究 2017年42号より)
「遊び心」や「楽しむ気持ち」を忘れずにスポーツや勉強に取り組むと、精神的にも落ち着き、前向きで積極的になれることを表しているといえます。
プレイフルネス 6つの要素
スポーツをすることや遊ぶことを、英語では「プレイ」といいますね。
そもそもスポーツとは、個人もしくは仲間と一緒にルールに従って行う、真剣で壮大な「遊び」なのです。
スポーツでも勉強でも、遊び心や楽しむ気持ちを忘れないことはとても重要。
プレイフルネスを構成する要素は6つあるといわれています。
・時間を忘れて集中できること
・邪魔されない状態
・安全であること
・自分の行動は自分で決めている
・自分の中からやりたいことが生まれている
・人に強制されたり、押し付けられていない
・上達している感覚
・その行動に価値があると思える
・役割を果たしている意識
・仲間や友だちへの思いやり
・集団内での協調性
・感情のコントロール
・友だちや指導者との共感
・仲間と一緒だから楽しい・嬉しい
・自由に行動できる
・工夫して創造的に行動する
・ストレスを感じない状態
プレイフルネスには幼少期・学童期の「自由な遊び」が鍵
楽しんだことがない人に「楽しめ」と言っても、どうしたらいいか分からないですよね。
心から楽しむ自由な遊びを経験しなければ、「遊び心」を取り入れることは難しいでしょう。
その点、子どもは「遊ぶ」「楽しむ」「没頭する」ことの天才。
小さい頃から自由に楽しく、自分で考えて工夫をしながら遊びを創造してきた経験は、「遊び心」を維持するには大切な要素です。
もちろん年齢が進むにつれて習い事や学校で、集団行動や授業など「やるべきこと」がどんどん増えていきます。
しかし幼い頃、自分の思うままに遊んだ経験は、プレイフルネスを活かすコツを習得しているのと同じ。
プレイフルネスを生涯にわたって活かすには、幼少期・学童期にどれだけ自由に楽しんで全力で遊んだかが鍵になります。
乳幼児期〜未就学期〜学童期くらいまでは、仲間と一緒に自由に遊ぶ時間を大切にしましょう。
その頃に経験した「遊び心」が、真剣勝負の場でもリラックスしてユーモアを持ち続けたり、肩の力を抜いてスポーツや勉強に取り組む下地になります。
プレイフルネスの取り入れ方
プレイフルネスを感じること、日常的に「遊び心」を取り入れることでポジティブな気持ちになり、前向きに取り組むきっかけになるようです。
ではどう日常生活に取り入れたらいいのか、いくつかアイデアを紹介します。
子どもや家庭によって楽しいと感じるものや、気持ちが切り替わる方法は異なるので、いろいろと試してみましょう。
○ タブーを破ってみる
○ 苦しい時にこそ「楽しい」と声に出す
○ 視点を変える(リフレーミング)
○ 伝えたいことをクイズ形式に
○ 堂々とした姿勢・態度を心がける
タブーを破ってみる
・床に新聞紙を敷き詰めて、手足を使って絵の具で絵を描く
・ホラー映画を観ながら大声を出す
・夜の公園で寝っ転がって星を見る
・欠けた食器類を思い切り割る
など、普段は「危ない」「汚れる」「うるさい」などの理由でなかなかできないことを、時間限定でやってみるのも楽しいですね。
ポイントは、「いつもはできないこと」にトライすること。
準備や後片付けが大変ですが、それこそが非日常の醍醐味。
「タブーを破っている感覚」は大人も子どももワクワクして、遊び心が刺激されます。
苦しい時にこそ「楽しい」と声に出す
これは自己暗示ともアファメーション(肯定的な自己宣言)ともいわれ、言葉にすることで「そうかもしれない」と脳に思わせる方法です。
あえて声に出すことで、耳からもポジティブなメッセージが入り、気持ちの切り替えがしやすくなります。
ミスをした時や不安を感じた時、パニックになった時など全然楽しめないシチュエーションでこそ、「楽しい」「面白い」とあえて言葉にしてみましょう。
「意外と面白いかも」「こんな時に楽しいなんて変なの」と、別の視点が生まれて、風穴が開くかもしれません。
視点を変える(リフレーミング)
ネガティブな気持ちの時、気分が乗らない時は、視点を変えたり、逆の考え方をしてみると見え方や考え方がくるりと変わるかもしれません。
これは心理学用語で「リフレーミング」と呼ばれる手法。
一番有名な例えでは、コップ半分の水を「もう半分ない」と考えるか、「まだ半分残っている」と考えるか、同じ「コップ半分の水」をどう捉えるかで、楽観的にも悲観的にもなれるという話。
・試合でボールを取られたら「自分のミス」ではなく → 「相手の技術がすごい」
・コーチにプレーの注意をされたら「失敗」ではなく → 「私のことよく見てくれてる」「期待されてるんだ」
・内気で引っ込み思案な性格は、「慎重で思慮深い性格」
・友だちに意地悪をされたら、「私ってヤキモチ焼かれるくらい人気者なのかも」
など、マイナスに見えることも視点(フレーミング)を変えて、別の視点でポジティブとらえる癖をつけてみましょう。
さまざまな事象は受け取り方次第で、プラスにもマイナスにもなることがわかりますね。
伝えたいことをクイズ形式に
子育てをしていると子どもに注意することや、伝えなくてはいけないことはたくさんあります。
つい語気強く言ってしまいがちなことを、あえてクイズ形式にするとユーモアが加わって子どもも受け止めやすくなります。
「ではクイズです! ゲームの残り時間はあと何分でしょうか? 0分・10分・3時間、さぁどれだ!」
「今、お母さんに一番必要なものは何でしょう…答えは“肩をもんでくれる優しい子ども”です」
「もうゲームの時間は終わりよ」「あぁ疲れた」とただ口に出すだけよりも、子どもを巻き込んだクイズにすると、ギスギスした雰囲気はなくなります。
「どんなクイズにしようかな」と考えるうちに、子どもに怒りたい気持ちが鎮まって穏やかな気分になれるかも。
怒った時、イライラした時こそユーモアが自分の気持ちを助けてくれます。
堂々とした姿勢や態度を心がける
これも「楽しい」と言葉にするのと同様、心配な時、暗い気持ちになった時こそ胸を張り、上を向いて大股で歩く、笑顔になるなど、堂々とした姿勢や態度をキープしましょう。
実際、姿勢が悪いと深い呼吸がしづらくなって自律神経が乱れたり、目から入る太陽光が少なくなってホルモン分泌に影響したりと、前かがみで姿勢が悪いと暗い気分なると言われています。
姿勢や態度をシャッキリさせることで、気分も上がり明るい気持ちになってきます。
「笑顔」がスイッチになって楽しい気持ちになるように、堂々とした姿勢から前向きで明るいプレイフルネスを感じやすくなります。
スポーツでも勉強でも「遊び心」を忘れずに
子どもがワクワクと楽しみながらスポーツや勉強をすると、イヤイヤ取り組むよりもよい結果が出ることは、誰もが知るところです。
スポーツや勉強に懸命に取り組んでいると、壁にぶつかったり、成長を感じられなかったり、不安になったりすることもあります。
でもそんな時、少し風穴を開けてプレイフルネスの視点を持てれば、「もう少し頑張ってみよう」と心の余裕が生まれるかもしれません。
そのためには日々の生活に「遊び心」や「プレイフルネス」を取り入れて、その行動やプロセスそのものを楽しむ習慣を身につけたいもの。
子どもが深刻になり過ぎている時、視野が狭まって緊張している時は、大人が冗談を言って笑わせてみたり、肩の力を抜く手伝いをしましょう。
大人も子どももプレイフルな人になって、毎日を前向きに楽しみながら送りたいですね。
・プレイフルネスとは、遊び心やワクワク感を忘れずに何ごとも楽しむ心のあり方。
・プレイフルネスを大切にすると、結果や勝敗ではなく、その行為行動自体にやりがいを感じられる。
・幼少期の「自由な遊び」の経験が生涯のプレイフルネスに影響する。
・日常にユーモアや面白みを加えて、遊び心を刺激するとよい。
・大人も子どももプレイフルな人の周囲は明るく前向きな雰囲気になる。
(参考文献)
応用心理学研究 2017年42号 | 遊びが子どもの社会的行動に与える影響〜プレイフルネスと衝動制御に着目して〜
日本体育協会スポーツ医科学研究報告 | 社会心理的側面の強化を意図した運動・スポーツ遊びプリグラムの開発および普及・啓発
・Creatibe mental view | ポジティブ感情を高めるプレイフルネス(遊び心)を取り戻そう
・青森県教育委員会 | 運動プログラムガイドブック
・プレジデントオンライン | なりたい自分になる「脳のだまし方」