「笑い」が子どもの成長を促す!? 「笑いの力」で幸福度も学習能力もアップさせよう
更新日: 2023.04.25
投稿日: 2023.05.25
「笑い」や「笑顔」が人の体や心によいことは、科学的にも証明されています。
そして子どもの成長や脳の発達にも、笑うことはプラス面が多いこともわかっています。
楽しい・嬉しいと同義語の「笑い」が、子どもの成長や体にもよい効果が得られるのなら、日ごろから笑うことを意識してみてはいかがでしょうか?
「笑いの力」を子育てに取り入れるコツや、「笑い」についての基礎知識をご紹介します。
もくじ
「笑う」とはどういうことか
人間の行動は基本的に、刺激に対して脳が情報処理を行い、それに反応します。
つまり「笑い」も、
↓
② 脳が判断して体に笑えと命令(聞いた話が面白いと判断し命令する)
↓
③ 声に出して笑う(反応)
というプロセスを経て、私たちは笑っています。
笑うことより、脳は「自分が心地よくて楽しい状態だ」と認識し、私たちは幸福感を感じます。
逆に、楽しいことを夢中でしている時、嬉しいことがあった時、脳の中の感情をつかさどる神経細胞「扁桃体」が反応して、すぐ横の「前帯状皮質」を刺激し「笑い」が起こります。
つまり「楽しい・幸せだ」という実感と、「笑う」という行動は2つでセット。
感情がともなわなくても「笑顔を作ることで脳は幸せを感じる」といわれるのは、こういう理由があるのです。
そして面白いのは、痛みを和らげ、幸福感も得られる脳内モルヒネ「βエンドルフィン」は笑うことで分泌されること。
痛かった時に思わず「笑ってしまう」のは、その痛みや苦痛をやわらげようとするから働きなのです。
笑うと体にはどんなことが起こるのか
人が笑う時、脳は心地よく幸せでリラックスした「快」の状態です。
最近はプロのアスリートや高校球児などが、「ここぞ」という場面で笑顔を見せるシーンが増えています。
これはプレッシャーを感じる場面でも心が落ち着き、ポジティブな気持ちになってパフォーマンスが向上するため。
スポーツの世界でも利用されている「笑い」「笑顔」の効果はどんなものか、笑うとどんなことが体に起こるのかを調べてみました。
◯ 血流が増えて脳の動きが活発に
◯ ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化して免疫力アップ
◯ 自立神経が整う
◯ 腹式呼吸で内臓の運動にもなる
◯ 周囲とのコミュニケーション力がアップ
血流が増えて脳の働きが活発に
笑った時の酸素摂取量は深呼吸の約2倍、通常呼吸の3〜4倍ともいわれます。
笑うことで体は酸素を大量に取り込み、脳の血流が増えて脳の働きが活発になります。
注意力などを司る「前頭前野」や、記憶をコントロールしている「海馬」が活性化するので、集中力や記憶力もアップします。
「九九」や「漢字」など覚える勉強の前には、大笑いすると効果的かもしれません。
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化して免疫力アップ
NK細胞とは、体内のがんやウィルスなど悪い細胞だけを攻撃してくれるリンパ球のこと。
がん患者やリウマチ患者に落語や吉本新喜劇を見せたところ、NK細胞が活性化したという研究結果は有名です。(米国リウマチ専門雑誌『Journal of Rheumatology』など)
笑うことで免疫力がアップして、体が丈夫になり、病気を寄せつけない体になるでしょう。
笑うだけで病気になる確率が下がるなら、こんなに便利で手軽なことはありませんね。
自立神経が整う
人の体は、体が緊張モードになる「交換神経」とリラックスモードになる「副交感神経」が交互にバランスよく入れ替わることで保たれています。
笑うことで「交感神経」が優位になり、その後、急速に低下して「副交感神経」にスイッチします。
このスイッチの入れ替わりが笑いによって起こり、自律神経を正常な状態に整えてくれるのです。
腹式呼吸で内臓の運動にもなる
大笑いした次の日に、お腹が筋肉痛になった記憶はありませんか?
笑うことで、腹筋や横隔膜、肋間筋、顔の表情筋などの筋肉は想像以上に動きます。
これにより内臓も刺激されるので、「笑い」は内臓のジョギングと言われるほど。
また大笑いしている時は、自然に下腹部に力を入れて呼吸する「腹式呼吸」になるため、深くて大きな呼吸で酸素をたくさん取り込めるようになります。
周囲とのコミュニケーション力がアップ
ムスッとした顔の人より、ニコニコと笑顔でいる人やほがらかに笑う人の方が周囲は話しやすいですね。
心理学で有名なメラビアンの法則では、人と人がコミュニケーションを取る際、言葉からは7%、耳から入る情報は38%、そしてなんと目で見た情報は55%の割合で影響を受けると言われています。
笑顔は伝染するので、よく笑う人の周囲には明るい仲間が集まってきます。
また普段から笑い慣れていないと、急に笑顔をつくるのは困難です。
日常的に笑う機会を多くして、「笑う門には福来る」を実践しましょう。
「笑い」を日常に取り入れるには
「笑い」が体や脳によいことがわかっていても、意図的に笑おうとしても難しいもの。
笑うことを習慣化することで、自然と笑顔が溢れる毎日になるでしょう。
「笑い」を日常に取り入れるコツを、ご紹介します。
笑いのアンテナを張る
お笑い芸人たちの話が面白いのは、常に笑いのネタを探して「面白い出来事」「楽しい話」を敏感にキャッチできるから。
私たちも笑いのアンテナを張って、「面白いこと」をキャッチする力をつければ、笑うことの多い生活になるはずです。
おやつや夕食の時間に「今日の面白い話」を披露する時間をつくってお互い報告し合ったり、親子の「笑いのノート」を作って交換日記のように見せ合ったりしてみれば、「笑い」に溢れる毎日になること間違いなしです。
笑いの種は、意外に毎日の生活に転がっているものです。
子どもが笑っていること・面白がることを積極的に
楽しいことに夢中になっている時、大人も子どもも顔がニコニコしているはず。
子どもが好きなことを積極的に取り込んで、日常生活の笑顔の数を増やしましょう。
例えばそれが、赤ちゃんが見るようなアニメに夢中になったり、ベッドの下に潜り込んで出てこなかったり、裏庭の土を掘り返したり…大人は理解できないようなくだらないことでも、子どもにとっては「今、これが面白い!」なのだということ。
ならば、大人もわが子の面白がることに便乗すれば、「楽しい・ワクワク」を共有できるかもしれません。
「これって、どうなってるの?」「何か新しいこと発見した?」と、子どもが楽しんでいることのお裾分けをもらってしまいましょう!
笑顔のタイミングを決める
普段から笑っていないと、いざ面白いことが起きても、顔がこわばって笑えなくなってしまいます。
笑う筋肉をほぐしておくためにも、
・1日1回は鏡の前で歯を見せて笑う
・宿題が終わったら、ニカッと笑顔でガッツポーズを決める
「挨拶と笑顔」「ポーズと笑顔」など、行動と笑顔をセットにしてお約束にすれば、否が応でも笑顔のチャンスがつくれます。
顔の表情筋は、直接脳の感情中枢に刺激を与えるといわれ、口角を上げるだけで「楽しい」と認識され、ポジティブでリラックスした気分になれると言われます。
笑顔になるのを待つのではなく、積極的に笑顔をつくる機会を増やしていきましょう。
・「楽しい」「幸せだ」という気持ちと笑いはセット。
・笑顔や笑いは、脳を活性化させたり、免疫力をアップさせたり、自律神経を整えてくれる。
・笑顔が多い人は、周囲とのコミュニケーションも円滑になる。
・普段から「笑うネタ探し」「なんでも楽しむ」を習慣にしてアンテナを張っておくと、笑いが習慣化する。
(参考文献)
・のびこ | よく笑う子ほど、才能が開花する!茂木先生が解説する「笑顔の脳科学」
・サワイ健康促進課 | “笑い”がもたらす健康効果
・COE LOG | 笑顔の効果 ストレスが消え幸せになる「笑い」の6つの力
・健康長寿ネット | 人はなぜ笑うのか
・GQ Community | お笑いを化学する「人はなぜ笑うのか」澤口俊之
・臨床リウマチ | 笑う治療 菊池啓(近畿大学医学部堺病院整形外科)
・笑いの発生メカニズム 柴原直樹(近畿福祉大学)