親子で考える!子どもの成長に欠かせない睡眠と脳の関係
更新日: 2024.10.10
投稿日: 2024.10.22
「運動」「食事」「睡眠」は、子どもの成長に欠かせない大切な要素。
特に睡眠は体を休ませるだけではなく、脳の成長にも多大な影響を与え、学習能力や精神的な安定も左右すると言われます。
今回は子どもの睡眠と脳について調べてみました。
もくじ
親子できちんと睡眠をとれていますか?
睡眠をしっかり取ることが、子どもの成長に大事なことは誰もが知っています。
しかし日本小児保険協会が1980年以降10年ごとに子どもの就寝時間を調査したところ、22時以降に就寝する「遅寝する子」の割合は年々増加しており、子どもの遅寝が習慣化していることが明らかになりました。
その要因のひとつとして考えられるのが、近年の子どもたちの生活様式の変化です。
ひとつめは、塾や習い事のかけもちなどにより、帰宅時間が遅くなる傾向があること。
夕食、入浴などの時間が後ろ倒しになり、結果的に睡眠時間を圧迫しています。
また、スマートフォンやタブレット、ゲーム機などのデジタルデバイスの普及により、寝る前の時間まで画面を見てしまい、なかなか寝付けない子どもが増えているという報告もあります。
このような、子どもの生活様式の変化に加え、実は親の「夜ふかし」「夜型の生活」といった生活習慣に引きずられて、子どもが睡眠不足になったり、朝起きられないなどの問題を引き起こしていることがわかってきました。
例えば
・寝る時間になっても、親子でなんとなくリビングで過ごしてしまう。
・時間を忘れるくらい親子でゲームに夢中になってしまう。
など、大人の生活リズムに合わせることで、子どもが睡眠不足になっているケースも増えています。
これは「子どもを夜ふかしさせている」という意識がないために、知らず知らずのうちに起こってしまうこと。
「子どもが寝る時間になったら部屋を暗くしてテレビも消す」「〇〇時になったら布団に入る」などのルールを作り、大人も子どもが寝られるように協力することが大切です。
思い切って「大人も一緒に早寝をして早朝に残った家事や仕事を片付ける」という早寝早起きリズムににシフトさせると、大人も体調がよくなったり、家事や仕事がはかどる可能性も。
この機会に親子の生活習慣・睡眠習慣を見直してみるものいいですね。
生活習慣を振り返ってみましょう
子どもの健やかな成長に欠かせない「運動・食事・睡眠」の三要素。
それぞれの要素をチェックリストで確認しながら、子どもの日頃の習慣を考えてみましょう。
チェックが多いほど、良い傾向です。
運動
□ 息が上がるくらいの運動を毎日30分程度している
□ 友だちや家族と運動やスポーツを一緒にする習慣がある
□ 体を動かす遊びやスポーツが好き
子どもは運動することで体が健やかに発達し、心と脳も同時に成長していきます。
特に9〜12歳頃の「ゴールデンエイジ」の運動は、体の動かし方や技術が短時間に身につき、スポーツの楽しさを実感できるでしょう。
この時期に身につけた運動習慣は一生涯のものであり、大人になった時の健康や生活習慣、病気予防にも大きく影響します。
またチームスポーツや友だちとの運動遊びを通して、「協調性」「リーダーシップ」「意欲」「くじけない心」「課題解決力」などの非認知能力もしっかり身につきますね。
食事
□ 朝食でもパンやご飯以外のおかずも食べる
□ 給食はほぼ完食する
□ 食事が食べられなくなるほどお菓子やジュースを食べ過ぎない
□ 好き嫌いなくいろいろな食べ物を食べる
□ 家族や仲間と楽しく食事をしている
人は食べたものからしか体が作られません。
だからこそ3回のバランスのよい食事とおやつは、子どもの成長に非常に大切。
特に「朝ごはん」は体や脳を起こし、体内時計を合わせる大切な食事です。
密度のあるしっかりした骨を育てるには20歳頃までの食事(栄養)が重要で、それ以降の骨の丈夫さと深く関係していると言われます。
そして脳の発達には驚くほど大量のエネルギーを消費するので、「栄養バランスのよい食事」を「3食、ほぼ決まった時間」に食べることが、脳や体を作るためには必要になるのです。
睡眠
□ 眠りにつくまで時間がかからない
□ 9時間程度の睡眠時間は確保できている
□ 朝まで起きずにぐっすり寝ている
□ 朝は決まった時間にすっきり起きられる
□ 朝、起きてから行動が早い(機嫌が良い)
子どもの睡眠には、昼間活動した頭や体を休めたり、免疫力を高めたり、成長ホルモンを分泌させたりと、大切な役割があります。
夜寝る時間が遅くにずれ込むと、体は睡眠を確保しようとそれに合わせて生活リズムと体内時計が一緒にずれていきます。
乳幼児の頃はそれで問題がなくても、そのうち園や学校のリズムに合わせざるをえなくなります。
それが体に無理をさせることになり、朝からぼーっとしたり、遅刻が重なって不登校につながることも少なくありません。
「早寝・早起き・朝ごはん」とよく言いますが、これは、子どもを健康に育てるための「約束の言葉」なのです。
睡眠が重要な理由
運動・食事・睡眠は、子どもの成長には欠かせない重要な要素であることがわかりました。
なかでも睡眠には骨を丈夫に育てたり、新陳代謝を盛んにする「成長ホルモン」を分泌させたり、体を休ませる働きがあるため、特に心がけたいもの。
ここでは「子どもと睡眠」に焦点を当て、なぜ睡眠が大切なのか、睡眠が子どもの成長にどう影響するかについて解説していきます。
睡眠の4大効果
① 成長ホルモンの分泌
成長ホルモンは寝入ってから1〜2時間の時に最もよく分泌され、骨を伸ばして筋肉を増やし、新陳代謝を盛んにする働きがあります。睡眠不足になると成長ホルモンが出にくくなります。
② 記憶の整理
人は眠りの浅いレム睡眠の間に脳の不要な情報を削除し、必要な情報を定着させているといわれます。眠っている間は、この浅い・深い睡眠を繰り返して記憶を固定するので、睡眠が足りないと記憶力が低下します。
③ 脳や体の休息
睡眠中に疲れて傷ついた細胞が再生・修復されます。深くて十分な睡眠を取ることで、体がしっかりメンテナンスされるのです。朝すっきり起きられるのは体が修復された証拠です。
④ ストレス解消
睡眠が足りないと脳の機能が低下して、集中力ややる気がなくなります。ストレスは主に脳の疲れからくるもので、十分に休ませることでストレス解消になります。
子どもの睡眠不足や遅寝が続くと何が起こるか
① 肥満になる
睡眠不足になると、食欲をおさえるホルモン「レプチン」の分泌が減少し、反対に食欲を刺激する「グレリン」が増えるので肥満につながります。
② 免疫力が低下する
睡眠が足らないと、様々なホルモンの分泌が少なくなって免疫力が低下。ウィルス性の病気になりやすくなったり、アレルギー症状が出やすくなります。
③ 精神面が安定しなくなる
朝すっきり目覚めさせる「セロトニン」は、心を落ち着かせたり気持ちが明るくなる「幸せホルモン」とも呼ばれます。夜更かしや睡眠不足によってセロトニンが減ると、イライラしたり小さなことでキレやすくなります。
④ 遅寝・遅起きが習慣化する
幼児期の睡眠サイクルは、小学校・中学校と年齢を重ねても影響を与えるので、子どもが幼いうちから早寝・早起きの習慣を身につけておいた方がいいでしょう。
睡眠は「子どもの脳の成長」に影響する
睡眠不足は、子どもの脳が多くの回路をつなぎながら成長するのを妨げてしまうことがわかっています。
「脳をつくり、脳を育て、脳を修復」するのは睡眠です。
睡眠が「子どもの脳」に影響する仕組みを見ていきましょう。
ものすごいスピードで成長する子どもの脳
乳幼児期はものすごいスピードで脳が成長をしており、6歳頃までに脳の重さが大人の95%程度までになると言われます。
子どもは夜、眠っている間に脳内の神経細胞をつなげてネットワークを構築します。
新しく太い回路を作ったり、同時に不要なものを整理したりと大忙しで働くのです。
この頃の子どもの睡眠時間が大人に比べて長いことを見ても、脳の成長に睡眠が大きく関わっていることがわかりますね。
脳の発達は20代前半まで続くと言われますが、この時期に十分な睡眠が取れなかったり、眠りが浅くてよく眠れないと、脳が十分に成長し切れない可能性があります。
東北大学の瀧靖之教授らの研究によると、5〜18歳の290人に対して睡眠時間と脳の海馬(主に記憶を司る)の関係を調査した結果、睡眠が不足すると脳内の細胞が増えず、神経が新しく作られる作用が阻害されることがわかったそうです。
子どもの睡眠はダイレクトに「脳の成長」に影響するのです。
睡眠のメリハリで脳内ホルモンが活発に
朝目覚めて朝の光をしっかり浴びると、「セロトニン」という脳内ホルモンが分泌されます。
セロトニンは脳をすっきりと目覚めさせ、集中力を高めたり、精神を安定させる働きがあります。
セロトニンの分泌を増やすには、朝の光を浴びて体を動かし、朝ごはんを食べることが有効です。
また夕方以降になると体は体温を下げて眠る準備に入り、スムーズな入眠を誘う「メラトニン」というホルモンが作られます。
メラトニンは明るい環境では分泌されないため、寝る前には電気を暗くしたり、ゲームやスマホなどのブルーライトは遠ざけた方がいいでしょう。
メラトニンはセロトニンを材料に作られるため、昼間に運動や屋外活動でセロトニンをたくさん分泌させておくことが大事です。
そしてメラトニンをしっかり分泌させると、眠りが深くなり、睡眠の質が高まります。
これらの脳内ホルモンを分泌させるために大切なのは、「朝は眠くても決まった時間に起きて、朝食を食べる」「昼間は活動的に、夜は静かに過ごす」といった生活と睡眠のメリハリなのです。
子どもの睡眠に関する5つの疑問
子どもにとって睡眠が大切なことは理解できましたが、子育て中の保護者の中には、さまざまな疑問が頭に浮かびますね。
ここでは子どもの睡眠に関する5つの疑問をあげてみましょう。
Q:子どもは何時間くらい眠ればいいの?
その子に必要な睡眠時間には個人差がありますが、アメリカの国立睡眠財団が「子どもの年齢別に必要な睡眠時間の目安」を発表しています。
・幼児(1〜歳)→11〜14時間
・未就学児(3〜5歳)→10〜13時間
・小学生→9〜11時間
・中学生→10〜13時間
世界の中で日本は、子どもも大人の睡眠時間が短い傾向があるので、もう少し睡眠時間を長めにするように心がけるといいでしょう。
Q:子どもが睡眠不足かどうか、見分ける方法はありますか?
・毎日疲れた様子がないか
・食欲が減っていないか
・集中力や記憶力が落ちていないか
などをチェックしてみましょう。
また子どもは寝不足になると「週末に起きられない」「家でゴロゴロしたがる」などの傾向があります。
平日に比べ、週末に3時間以上、睡眠時間が長くなるようなら「睡眠不足」の可能性が高いでしょう。
Q:早寝、早起きって、大切ですか?
早寝早起きが大切なのは、「体内時計」を整えるからです。
体内時計とは体の中で刻まれているリズムのことで、体内時計があるから朝起きたら活動をして、夜になると眠くなるという1日の生活リズムに体が合わせられます。
この体内時計が規則正しく動かないと、成長ホルモンの分泌が減ってしまったり、自律神経が乱れるなど体が正常に働かなくなってしまいます。
早寝早起きのリズムを作りたい時は、「早起き・早寝」の順に整えるとスムーズになります。
まずはどんなに眠たがっても子どもを早く起こし続けていると、1〜2週間でリズムが整ってきて、早寝ができるようになります。
Q:子どもの寝つきをよくする方法ってありますか?
家族で目一杯外で遊んだ日や、朝早く起きて活動的に過ごした日、子どもの寝つきがよくありませんか?
逆に、朝は寝坊をして家でゴロゴロ動かずに過ごしたりすると、その夜はすんなりと眠れなかったり…。
寝つきをよくするためには、メリハリのある活動や生活のリズムがとても大切。
・よく噛んで朝ごはんを食べる
・昼間は学校で友だちと、休日は家族でスポーツなど、活動的に過ごす
・ゲームやテレビは寝る1時間前まで
・夜は照明を少し落とし気味にして、静かに過ごす
単純に見えますが、続けてみると驚くほど子どもの寝つきがよくなります。
Q:子どもの睡眠で心配なことは、どんなことですか?
子どもの睡眠時間が不足すると、昼間の活動時間に子どもが「体のだるさ」「眠気」「イライラ」を感じるようになり、それが不登校につながってしまうことも…。
また十分な睡眠が取れないと体や脳の発達を妨げてしまうため、集中力や認知能力が低下して、学習にも影響が出ることがあります。
そして一番心配なのは、一度習慣化された遅寝・遅起きの生活リズムは変えるのが難しいため、中高校生、大学生と成長し、大人になっても生活リズムが乱れたまま…という可能性があること。
生活リズムが乱れている人は「うつ」や「がん」の発生リスクが高まるという研究結果もあるので、子どもの睡眠習慣はなるべく幼いうちから整えたいですね。
スムーズで深い睡眠のために運動を取り入れよう
夜の寝つきをよくして、深い質の良い睡眠を取るには、昼間活動的に過ごして「セロトニン」を分泌させ、夜ぐっすり眠るための「メラトニン」に備えたいもの。
そして保護者の夜ふかしが子どもの睡眠を阻害しないように、週末は親子でスポーツをするなど、大人も適度な疲労を感じて早寝をするリズムを作ってしまいましょう。
大人は運動不足解消になり、子どもは運動によって体も脳も刺激され一石二鳥です。
実は脳の「海馬」は、大人になっても成長させられる数少ない部位。
その成長に必要なのは「運動」と言われています。
いつもの生活に運動を取り入れるだけで、子どもの脳だけでなく、大人の脳も活性化できるなら嬉しいですね。
健康な体づくりのためにも、脳のためにも、いつもの生活に「運動」を取り入れましょう。
・ 親の夜更かしが子どもの睡眠不足につながることがある。
・ 睡眠には「成長ホルモンの分泌」「記憶の整理」「脳や体の休息」「ストレス解消」などの効果がある。
・ 子どもの睡眠不足は、肥満や免疫力の低下を引き起こし、精神面が不安定になってしまうこともある。
・ 子どもの睡眠は、子どもの体と心、脳の成長のために大切。
・ 夜ぐっすり眠るには、昼間にしっかり体を動かしたり、スポーツをするなど活動をしておくことが大切。
参考文献
・日本学校保健協会 | 学校と家庭で育む子どもの生活習慣
・厚生労働省 e-ヘルスネット | 子どもの睡眠
・こどもまなびラボ | 「食事」「運動」「睡眠」を改めて考えてみたら、子どもの将来が不安になってきた—
・弥彦村 | すこやか やひっこ「子どもの睡眠」
・幻冬舎オンライン| 東北大教授が解説!子どもの能力を高める、効果的な「食事・睡眠・運動」
・子どもの睡眠と脳の発達―睡眠不足と夜型社会の影響(大川匡子)
・ノーベルファーマー | 子どもの眠りの問題に気づく 教えてドクター! 子どもの睡眠 5つの質問