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非認知能力

10歳がターニングポイント 「10歳の壁」を成長につなげるために親ができること

更新日: 2023.01.04
投稿日: 2022.08.12

小学校3〜4年の中学年になると、

甘えん坊だった子が急に反抗的になったり、
友だちとトラブルを起こしたり、
勉強でつまづいたり…

それまでと違った問題や悩みが次々と出てきて、困惑することがあります。

これが世にいう「10歳の壁」。

しかしこれは、子どもの成長には欠かせないプロセスです。

「10歳の壁とはなにか」「親ができることはあるのか」、一緒に考えていきましょう。

「10歳の壁」とはなにか?

9歳〜10歳にさしかかると、子どもの成長は大きな転換期に入ります。

それまで理解できなかった抽象的な概念がわかるようになり、目の前にないことでもイメージして理解できるようになります。

また、自分を客観的に見られるようになるのもこの頃。

他者との差を理解するようになり、自分の得意分野もわかる反面、劣等感を持ったり、自己評価が低くなってしまうこともあります。

小学校低学年までは“自分は何でもできる!”という万能感があり、無条件で自分を信じられた子が、「あの子に比べて自分はできない」「自分はダメだ」と他者と自分を必要以上に比べてしまうことも起こります。

また学習面でも、分数や小数点などの抽象的な考え方の段階に入ることから、急に苦手意識を持つ子も…。

特に算数でのつまづきは「小4ビハインド」とも呼ばれ、それまでは算数が得意だった子も、急に「算数ぎらい」「難しくてわからない」となる可能性を秘めています。

基本的な語彙力や読解力が低くても、他者とのコミュニケーションがうまくいかず劣等感を強めてしまうこともあるようです。

しかし「10歳の壁」は子どもの発達の大切なプロセス。

それまで自分勝手だった子が周囲の意見を聞けるようになるなど、謙虚な気持ちが生まれたり、客観的に自分を見ることができるようになるので、一概に「壁」ととらえないことも大切です。

子どもがグンと成長するチャンスでもあり、悪いことばかりではありません。

「10歳の壁」では、どんなことが起こるのか?

「10歳の壁」は、幼児期の「イヤイヤ期」と思春期の「第二反抗期」の間にある、子どもの変化のプロセスです。

この時期の子どもの変化にはどんなことがあるのでしょうか。

「対人面」「学習面」「体力面」の3つの側面から、例をあげてみましょう。

対人面

・人と自分を比べて劣等感を持ち、自分の殻に閉じこもってしまう。
・周囲の反応を気にして、自信を喪失したりマイナス思考になる。
・親の価値観や意見を否定する。
・友だち同士のルールを必要以上に守ろうとする。
・友だちの好き嫌いが激しくなる。

学習面

・分数や小数点、四捨五入など抽象的な考え方が必要な算数問題が理解できなくなる。
・計算問題や漢字は得意だが、文章問題や意見を述べることが苦手になる。
・国語など読解力が必要な教科についていかれない。
・理科・社会がはじまり、覚えることが増えて混乱する。

身体・体力面

・足の速さや運動能力に差を感じて、劣等感や苦手意識を持つ。
・人と自分を比べて、体育やスポーツを楽しめない。
・「背が低い」「容姿がかわいくない」など、外見を気にする。

親からすると、「性格がガラリと変わった」「これって反抗期なの?」と不安や心配に感じることもあるかもしれませんが、成長の1ステップと考えて冷静に観察することも必要です。

「10歳の壁」を成長につなげるために親ができることとは?

自分の意識の変化や勉強が難しくなったことで、不安や劣等感を抱えがちな子どもたち。

それに対して親ができることはあるのでしょうか。

「非認知能力」を伸ばす対応で、「10歳の壁」を成長へのステップの機会に変えましょう。

ポイントは5つ。

◯ 毎日1回は子どもを認めてほめる【自己肯定感】
◯ 親の考えを押しつけない【考える力】
◯ 子どもの話をじっくり聞く【伝える力】
◯ 読書をする習慣をつける【抽象的考え方・語彙力】
◯ 子ども自身の模索を見守る【忍耐力】

1日1回は子どもを認めてほめる

人と比べて自信をなくしている子には、一番身近な親がほめて、認めてあげることが大切です。

でもこれまでのように「すごいね」「やったね!」などと幼稚なほめ方では、満足しないかもしれません。

「この前、間違えた問題ができるようになってるよ、成長してるんだね」
「お願いする前に手伝ってくれるなんて、頼れるなぁ」

などと具体的なポイントを挙げてほめるようにしましょう。

「別に…」「大したことないし…」などと、そっ気ない態度を取るかもしれませんが、小さなほめ言葉は少しずつ心の中に重なっていくもの。

きっと子どもの自己肯定感にプラスになるでしょう。

親の考えを押しつけない【考える力】

親子といえども、いつも意見が同じとは限りません。

小学校中学年だと、思春期の反抗期のような決定的な反発はないので、「それは違う」「直した方がいい」と親が強く言えば、子どもは聞き入れてしまいがちです。

しかし親の考えや意見を押しつけている限り、子どもが自分で考えて、答えに到達する力をつけることは難しいでしょう。

しかも親のことも客観的に見られるようになるので、「この前と言ってることが違う」「自分の考えを押しつけてばかり」と、親の信用をなくすことにもなります。

親の意見を言う前に、まずは子どもの意見に耳を傾けられるといいですね。

読書をする習慣をつける【抽象的な考え方・語彙力】

小学4年生になると、学習面では抽象的な考え方が求められます。

「りんご3個とみかん2個を買ったら、合計いくつ?」のような、目の前にあることをそのまま理解すればいい単純な思考から、実態のないものでも想像力を働かせて理解しなければなりません。

その考え方を助けてくれるのが「読書」です。

第三者の目線で、物語を読み進める。
登場人物の相関関係を理解する。
主人公の気持ちに共感する。

これらが抽象的な考え方の練習になり、「10歳の壁」でのつまづきをサポートしてくれるでしょう。

幼い頃から本を一緒に読んだり、図書館に通ったり…親に読書の習慣があると、子どもは本に親しみを持てます。

そして読書で培われた語彙力を使えば、周囲とのやり取りもスムーズになるはずです。

子どもの話をじっくり聞く【伝える力】

10歳の壁では、友だちとうまくいかなくなることや、周囲とのミスコミュニケーションが生じがちです。

そんなとき、必要になるのが自分の気持ちを「伝える力」。

語彙力はもちろんですが、それを相手にわかるように伝える技術が必要です。

普段から親子でたくさん話しをして、子どもの「伝える力」を鍛えたいですよね。

でも、子どもが考えながら話をしているときに、「◯◯ってこと?」などと先取りしてしまったり。

「結論から言って」と急かしてしまうと、子どもは「伝える力」を身につける機会を失ってしまいます。

子どもの話は、じっくりと腰をすえて聞くようにしたいですね。

子ども自身の模索を見守る【レジリエンス・やりぬく力】

人との違いや差がわかるようになると、劣等感を感じたり、自信を喪失をすることもあります。

でもそれは、「自分を冷静に分析する」「努力の方向を決める」ための、大きなチャンスでもあります。

仲良しだった友だちと最近ギクシャクしている、という心配ごとを、「この前自分が嫌な気持ちにさせたな…」と振り返ったり。

自分の足が遅いことに気づき、「速く走れるように練習してみよう」と努力したり、「他の得意分野で勝負しよう」と目先を変えたり。

振り返っての反省や発想の転換など、子どもの中に失敗からはいあがるレジリエンス(回復力)やあきらめずにやりぬく力が生まれます。

子どもが1人でもがいでいる時、自分で解決しようと模索している時は、安易に大人が助け舟を出さず、自分で答えに辿りつくまで温かく見守ることも大切です。

「10歳の壁」と聞くと、「障害」や「難しい時期」と考えてしまうかもしれませんが、実際は子どもが大きく成長できるチャンス。

子どもの力を信じて見守ることも、時には必要かもしれませんね。

まとめ

・「10歳の壁」とは、幼児期と思春期の間にある成長の1プロセス。
・小学校3〜4年生になると他者との違いがわかるようになり、劣等感や不安を感じやすくなる。
・学習面でも抽象的解釈を求められるようになり、特に算数は難しく感じることも。
・子どもを認めてほめたり、話をじっくり聞くことで、親も子も壁を乗り越えられる。
・読書は抽象的な考え方を身につけるのに最適。

編集部より

「10歳の壁」という言葉をご存知だったでしょうか?子どもの成長段階で欠かせないのが「10歳の壁」です。子ども自身が、自分を客観的に見る力や理解力が備わってくるからこそ、起こる壁ですね。親からしても子どもの突然の変化に驚かされることもあるようです。ですが、「10歳の壁」だということを知っていれば、不安になったり、焦ったりする必要はありませんね。「10歳の壁」を子どものあるべき成長と捉えて、親として子どもを心の底から受け止めて、認めてあげましょう!

(参考文献)
・文部科学省 | 子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
・『子どもの10歳の壁とは何か? 乗り越えるための発達心理学』(光文社) 渡辺弥生著
・こどもまなびラボ | 「10歳の壁」「9歳の壁」「しょうの壁」とは? 子どもの発達段階を意識した4つの対処法
・CHANTO WEB | 10歳の壁とは?劣等感に苦しむ子どもを救う方法

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