世界で注目!STEAM教育って?非認知能力との関係は?
更新日: 2022.10.17
投稿日: 2021.03.26
世界的に注目を集めているSTEAM教育。教科を別々に学ぶのではなく、実社会での問題解決のため、教科横断的に想像的に学んでいく“次世代の教育”として知られており、欧米で盛んに行われてきました。
最近では日本でも少しずつ認知されるようになり、将来の日本の教育課程はSTEAM教育の方向にいくのではないかと論じられています。
正解がない課題に対して試行錯誤しながら学びを進めるSTEAM教育においては、幼少期に非認知能力を育むことが、非常に重要視されています。
それはなぜでしょうか。
STEAM教育と非認知能力の関係性について、解説します。
科学技術を利用して新しいものを生み出す力を養う「STEAM教育」
「STEAM教育」という言葉、聞いたことがありますか?
「STEAM教育」の「STEAM」とは、S=Science(理科)、T=Technology(技術)、E=Engineering(工学)、A=Arts(芸術)、M=Mathematics(数学)の略です。
これらの5つの要素を盛り込んだ教育手法を「STEAM教育」といいます。
世界のテクノロジーがどんどん進化し、私たち人間にかわってAIやロボットの活躍が予想される社会で必要となるのは、変化に流されるだけでなく、新たな変化を生み出せる能力を持つ人材です。
このような人材を生み出すために、それぞれの教科を別々に学ぶのではなく横断的に学ぶことを通し、科学技術の理解を深めることが大切といわれています。
それと同時に、それらを利用して新しいものを生み出す力を養うための教育として、「STEAM教育」は知られています。
ちなみに、「STEAM」という言葉は、アメリカのオバマ元大統領が、自身の演説でAIなどの科学技術を生かして革新を起こすような人材の育成を国家戦略のひとつとして掲げ、注目されるようになったと言われています。
日本では、これらの流れを受け、2009年頃から文部科学省主導により、
・スーパーサイエンスハイスクールの指定…先進的な理数教育を行う高校を全国で200校以上指定し独創性を育てる
・小学校でプログラミング教育の必修化…2020年度の学習指導要領の改定により、必修化が決定。インターネットツールを使いこなす基礎力を養う
・科学の甲子園…高校生が、理科、数学、情報の複数科目で競い合う大会を通して科学分野に関心を持つ生徒を増やす
などのSTEAM教育に取り組み始めています。
次のページでは、そんな「STEAM教育」と、教育界で求められているもう一つの力「非認知能力」の関係をご紹介します。
「STEAM教育」と「非認知能力」は密接に関係している
ところで、正解がない課題に対して試行錯誤しながら学ぶ「STEAM教育」と、幼児期から小学校低学年くらいまでの時期に、主に「遊び」を通して育まれる「非認知能力」が密接に関係しているということは、世界的な共通認識として知られています。
園では友達と積み木やブロック遊びをしながら、「皆でスカイツリーをつくる」などと、友達と目標の実現に向けて協力することをしあったり、学校ではおいかけっこやごっこ遊びをしながら皆で役割を考えたりすることなどを通し、非認知能力のひとつである「協調性」「コミュニケーション能力」が養われていきます。
園や学校以外でも、公園で異年齢の子と遊ぶんだり、スポーツ教室や習い事など集団で過ごす時間をもったりすることで、他者との協働や感情のコントロールができるようになっていきます。
このような幼児から小学生時代の「遊び」を通し、非認知能力が十分に備わった状態でSTEAM教育にふれることで、知性の扉がさまざまな方面に開かれ、非認知能力も認知能力も同時に花開いていくと考えられているのです。
“自信がない”日本の若者たちの自己肯定感を育むためにも必要なSTEAM教育
日本財団が令和元年11月に発表した「18歳意識調査-国や社会に対する意識」(9カ国の17〜19歳約1,000人を対象)によると、日本の若者たちは、
「自分を大人だと思う」
「自分は責任がある社会の一員だと思う」
「将来の夢を持っている」
「自分で国や社会を変えられると思う」
「自分の国に解決したい課題がある」
「社会議題について、家族や友人など周りの人と積極的に議論している」
以上6項目のいずれも、9カ国の中で最下位という結果となっていることがわかります。
また、国の将来像についても、「良くなる」という答えはトップの中国の10分の1です。
数字の低さが際立つ調査結果となっています。
日本には誇るべき「モノづくり」の歴史があり、その実力は海外からも認められているはずなのに、なぜこのような結果になっているのでしょうか。
その原因としてあげられるのが、日本独特の偏差値至上主義、学歴社会の中で育ってきた若者たちの「自信のなさ」です。
だからこそ、若者たちの貴重な学びの場である教育現場において、「これまで行われてきた『教科』による教育だけではカバーできない自己肯定感、自己受容力を高める必要がある」という声が広がり、従来の教育に創造性教育をプラスしたSTEAM教育の需要が大きく高まってきているといえます。
日本のSTEAM教育は、現時点で、世界の他の国と比べかなり遅れをとっています。
しかし、文部科学省や経済産業省を中心に、その普及が急ピッチで進められています。
STEAM教育により子どもの才能が開花できるよう、子どもの幼少期は、非認知能力の育成をしっかり行っていきたいものです。
・新しいものを生み出す力を養うのが欧米発の「STEAM教育」
・幼少期に非認知能力を養うことが、STEAM教育による才能の開花につながる
・日本のSTEAM教育は急ピッチで進められている
次世代の教育として、非認知能力を育むために、STEAM教育が注目を集めていること、また非認知能力とSTEAM教育が密接関係であることが分かりました。
この力をより効果的に身に付けるために大切になるものが、幼少期の非認知能力を高めることに繋がります。
今後社会を担っていく子ども達には、1つの分野のレベルを高めることも大切ですが、それ以上にさまざまな分野を学び、それらさまざまな角度から物事を見て、横断的に活用する力が大切になっていきます。
学校の学力や偏差値のみに着目するのではなく、さまざまな経験を用いて子どもたち自身が自信を持てる力を身に付けていける環境を大人たちは作っていきましょう!
(参考文献)
・AI時代を生きる子どもたちの資質・能力(赤堀侃司著・株式会社ジャムハウス)
・非認知能力を育むためには(無藤 隆著・朝日新聞Edua)
・STEAM JAPAN|STEAM教育って?
・絵本ナビ|AI時代の“頭のいい子”とは!? わが子に合う「STEAM教育」(監修・中島さち子)
・スタスタ|STEAM教育とは? 事例や課題、STEM教育との違いをまるっと解説(執筆・鈴木孝一)