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考える力が身につく!親子で学ぶクリティカルシンキング

更新日: 2024.11.25
投稿日: 2024.11.22

考える力が身につく!親子で学ぶクリティカルシンキング

最近、「クリティカルシンキング」という言葉をよく耳にするようになりました。

「クリティカルシンキングってなに?」
「批判的な思考を身につけたら、自分勝手な子どもに育つのでは?」

などの素朴な疑問を解消しつつ、親子で「よく考える習慣」を身につけられるよう、一緒に学んでいきましょう。

クリティカルシンキングとはなにか?


クリティカルシンキングとは、与えられた情報が本当に正しいかどうかを掘り下げて考え、自分なりの答えを導き出すこと。

日本語では「批判的思考」と訳されますが、決して否定的なのではなく、「本当にそう?」と疑問を持って、鵜呑みにしないという意味でとらえるといいでしょう。

これまでの価値観が通用しなくなり、自分のアイデアを持つことが求められる昨今。

子どものスマホ依存やSNSでの誹謗中傷などが問題になり、情報の受け取り方や発信についても自分の頭でしっかり考えることがさらに大切になっています。

新しい学習指指導要綱にも、「ものごとを多角的・多面的に吟味して見定めていく力(いわゆるクリティカル・シンキング)を育む重要性」という言葉が盛り込まれて、ますます「考える力」の重要性に注目が集まっています。

子どもには「よく考える子」に育ってほしいけど、自分は考えるのが苦手…というお母さん・お父さんは多いかもしれません。

家庭内の習慣を少し工夫して、親子でクリティカルシンキングの習慣を身につけましょう。

なぜ今、クリティカルシンキングが必要なのか


アメリカなどでは子どもの頃から当たり前に習得するべき「クリティカルシンキング」ですが、日本ではまだまだビジネスで使われるスキルと考えられているかもしれません。

しかしコミュニケーション力や粘り強さ、主体性、計画性などの非認知能力の下地に、クリティカルシンキングはなくてはならないもの。

ここでは、なぜクリティカルシンキングが必要なのかを考えていきます。

ポイントは5つ

○ 判断力が養われる
 
○ 自分を守る力がつく
 
○ 自己肯定感が高まる
 
○ 深い学びにつながり学習意欲も向上する
 
○ ものごとを客観視できる
 

判断力が養われる

インターネットやSNSの情報に触れた時、友だちからなにか聞いた時、それを鵜呑みにしてしまうと、間違った情報に振り回されることになります。

クリティカルシンキングが習慣化されていると、「それは本当か?」「ほかの情報はないか」「自分でも考えてみよう」と感情的にならずに、冷静な判断ができるようになります。

情報化社会・ネット社会において、選び取る力や判断力はとても大切な力になるでしょう。

自分を守る力がつく

間違った情報に振り回されなくなると、誤解や勘違いがなくなり、トラブルなどのリスクが減ります。

そして考える力を身につけると、何か言われても「それって、どういうこと?」という思考に向かうため、すぐ感情的になることも少なくなるでしょう。

また筋違いなことを言われたり、意地悪をされても冷静に反論できるので、結果的に自分を守ることにつながるのです。

自己肯定感が高まる

クリティカルシンキングでは、様々な思考をめぐらせるため、「正解は一つではない」ということも学びます。

すると◯か×かでしか答えがなかった時に比べると、「間違えた」「失敗だ」と感じることが少なくなります。

そして「よく考えたら、これもOK」「その考え方もいいね!」という柔軟な考え方になり、自分の答えに自信が持てるようになります。

結果的に自己肯定感が高まり、同時に相手のことも認められるようになって、他人とのコミュニケーションも円滑になるでしょう。

深い学びにつながり学習意欲も向上する

クリティカルシンキングの基本は、「深く考えて自分なりの答えを導き出すこと」です。

表面的なことにとらわれず、「これはどういうこと?」「根拠は?」と考えを深めていくため、調べて検証したり、分析することに苦手意識がなくなります。

この調査・検証・分析は、「学習」の進め方とほぼ同じ。

つまりクリティカルシンキングを身につけることは、学習習慣を身につけることになり、学びの意欲アップにもつながるのです。

ものごとを客観視できる

クリティカルシンキングを進めると、「これは本当か?」「なぜそう考えたか」など、ものごとや自分自身に疑問を投げかけることになります。

ものごとをよく精査し、自分の感情や思考にも焦点を当てて理由や原因を考えることで、分析が進みます。

それが習慣化されると、ものごと客観視できるようになるでしょう。

ものごとを客観的に見られるようになると、多角的な見方ができるので公平性が身につき、問題解決能力もアップします。

やってみよう! クリティカルシンキングの進め方


クリティカルシンキングが大切なことはわかりましたが、では実際、どのように進めていけばいいのでしょうか。

ここではクリティカルシンキングの実践方法を4つのプロセスに分けて、見ていきましょう。

例えば…小学生の娘が、「○○ちゃんが、意地悪だ」と言ってきたとします。

STEP 1:なぜ○○ちゃんが意地悪と思うか、を考える

つい鵜呑みにしてしまうわが子の訴えですが、ここは一歩引いて「本当に?」「どうしてそう思うか」に焦点を当てます。

「そう思う根拠」「誰が誰に何を言ったか」「そこに至るまでのいきさつ」など、感情を交えずに挙げてもらいましょう。

その前後のやり取りや状況をしっかり聞き、まずは事実のみを集めて、紙に書き出します。

STEP 2:本当に意地悪かを検証する

STEP1で事実だけを列挙してみると、別の視点が生まれる可能性があります。

例えば、
・○○ちゃんの不機嫌なことが多いだけだった
・仲の良い子が「○○ちゃんって意地悪だよね」と言っていた
・グループ内でそういう話になっている

など、直接意地悪をされたわけではないのに、イメージや伝聞で「意地悪」と感じていたのかもしれません。

反対に「仲間はずれにされた」「挨拶したのに返してくれない」など、子どもがそう感じる確かな根拠がある場合もあります。

ここでは実際にどんなことがあったかを検証し、「事実」と「噂・イメージ」とを切り分けて検証します。

STEP 3:どうしたいかを確認する

事実だけを抜き出した状態で、子どもがどうしたいかを聞いてみましょう。

勝手な思い込みが判明することや、うっすら感じていたことがはっきりすることもあります。

「不機嫌な行動を直してもらいたい」のかもしれないし、「やっぱり○○ちゃんと仲良くしたい」のかもしれないし、「実は前から好きじゃなかった」と気づくかもしれません。

大切なのは噂や事実以外のことに振り回されずに、子どもが自分自身に「どうしたいか」を問いかけることです。

STEP 4 どう行動するかを決める

最後は、行動についてどうするか決めます。

「周囲の声に関係なく、○○ちゃんに自分から仲良くする」のか、「友だち同士の気まずい雰囲気を仲介する」のか、子どもが自分で答えを出すのを待つのがベストです。

また、その行動について不安や気になることがないかも、聞いてみましょう。

このように、常に「事実は何か」という視点を持つようになると、イメージや印象、噂などに振り回されることが少なくなり、考える力が身につきます。

お家でできる!クリティカルシンキングを鍛える3つの習慣


クリティカルシンキングは、思考の習慣なので日常生活から取り入れるのが一番の近道です。

ゲーム感覚で取り入れたり、大人が質問を投げかけることで、子どもは考える力を自然に身につけるでしょう。

子どものクリティカルシンキング力を鍛える習慣を見ていきましょう。

事実を抜き出す練習をする

クリティカルシンキングでは、まず事実のみに焦点を当てます。

例えば、こんな子どもの話を聞いた時、

「今日ね、転校生が来たの。ハキハキしてて、すごく頭がよさそう。可愛い洋服を着てたから、お金持ちなのかなぁ。男の子とも恥ずかしがらずに話してたから、兄弟がいるのかも」

これだけを聞くと、活発で素敵な女の子が転校してきたような印象を持ちますが、この中で事実は「今日、転校生が来た」ということだけ。

「ハキハキしている」「頭がいい」「可愛い洋服」「兄弟がいる」も、全て主観的な意見・想像です。

一緒にテレビを見ている時、親子で話をしている時に、「事実と意見を分けるゲーム」をしてみるとよいトレーニングになるでしょう。

語彙を増やす会話を

言葉をたくさん知っていると、より深く・幅広く・複雑に思考を深めていくことができます。

例えば「頭にくる」という怒りの表現も、「うざい」「ムカつく」という単純な言葉ではなく、「胸がムカムカする」「頭に血がのぼる」「腹が立つ」「腸が煮えくり返る」など、さまざまな言い方がありますね。

語彙を増やすには絵本や本を読む習慣をつけることが一番の近道ですが、「読書は苦手」という子どもが多いのも最近の傾向です。

子どもとの会話で大人が意識をして多様な表現を使うことで、子どもは新しい言葉に興味を持つでしょう。

親子の対話を増やして、子ども同士では得られないさまざまな表現に触れさせましょう。

子どもに「なにが」「どうして」「どうやって」の質問を投げかける

親子の会話も、普段は「○○だったよ〜」「へぇそうなんだ」で終わりがちですね。

しかしもう一歩踏み込んだ質問をすることで、子どもの思考はその先に進みます。

例えばテレビで「野菜の値段が高くなった」というニュースを見たとして、

「なんで高くなったと思う?」
「わかんない」
「台風が来てダメになった野菜が多かったでしょ。それに、畑から市場に運ぶ時にかかるガソリン代も上がってるからね」
「なんでそれで値段が上がるの?」
「ほしい野菜が少なくなると、“高い値段を出してもほしい!”という人が次々に現れて、どんどん値段は上がるんだよ」

など、一つ質問を投げかけるだけで、これまで聞き流していた話を掘り下げることができます。

ここでは子どもに考えさせることが目的なので、子どもの答えに意見を言ったり、アドバイスをしないこともポイントです。

今ある事実を検証し、「なにが」「どうして」「どうするか」に考えを巡らせることで、考える力やクリティカルシンキングの習慣が身につくでしょう。

「考えない大人」にならないために


「うちの子は考えるのが苦手だから…」「まだ小さいから…」と、子どもに考えさせない大人は意外と多いものです。

しかし子どもには年齢に合った「思考の道すじ」というものがあるので、考えることに早いも遅いもないのです。

そして思考は「習慣」なので、考える癖さえつけておけば、一生涯、思考を巡らせる人でいられるということ。

反対に「考えない大人」になると、

・想像力がないため人の気持ちがわからない
・先を読まないので計画性がなく行き当たりばったり
・思考を巡らせないので、現状把握や問題解決が苦手
・相手の迷惑を考えないので自分勝手

など、「困った人」になりがちです。

数ある情報から事実は何かを抜き出し、「本当にそう?」「何かおかしいのでは?」と批判的・多角的に見る視点はこれからさらに必要になるでしょう。

わが子を「考えない大人」にしないために、親子で一緒にクリティカルシンキングの習慣を身につけたいですね。

まとめ

・クリティカルシンキングとは、ものごとを否定的にとらえるのではなく、与えられた情報が正しいかどうかを多角的に考え、自分なりの答えを導き出すこと。
・クリティカルシンキングを身につけると、判断力が養われ、自分を客観視することができるようになり、結果的に自分を守ることにつながる。
・実践するには、事実の抜き出しや情報の精査、そして次の行動をよく考えて決めるなどのステップがある。
・「考えること」は習慣なので、日常生活を変えるとクリティカルシンキングが身につく。
・日頃から大人が一歩進んだ質問をしたり、語彙を増やすような会話を心がけていると、クリティカルシンキング力が鍛えられる。

(参考文献)
・こどもまなびラボ | 情報をすぐに信じてしまう子は危険! 我が子の「考える力」を育てる3つの問い
・oriori | 情報に踊らされない子育てをするには?親が身につけるべきクリティカルシンキング
・yawalogi | 自分で答えを出せる8つのチェックリスト【ロジカルシンキングコラム】

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執筆者プロフィール

元井 朋子(モトイ トモコ)

編集ライター

コメント

実用書の編集・ライティング、人物インタビューを中心に活動中。子育てや街紹介のポータルサイトでは1000件以上の学校や教育施設、子育て支援施設を取材。「学業とスポーツは必ず両立する」を信条に、息子2人を大学まで野球漬けに育てあげる。趣味は、はた織り・耳かき・スポーツ観戦。好きな言葉「中庸」。

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