食事は楽しむ時間!子どもたちへの食育の基本と偏食や小食の子どもの食事の対処法
投稿日: 2024.03.26
「食育」という言葉が聞かれるようになってからずいぶんと時間が経ちましたが、具体的に何をしたら良いの?と思われる方も多いでしょう。
あまり知られてはいませんが、実は日本には「食育」に関する法律「食育基本法」が存在します。
平成17年に制定された「食育基本法」には、以下のように書かれています。
平成十七年法律第六十三号「食育基本法」
子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。
今、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。
「食育」はどの世代にも必要とされている考え方ですが、ここでは特に子どもたちに対しての「食育」についてお伝えしたいと思います。
もくじ
「食育」はなぜ大事なのか
食育基本法にも書かれている通り、食べることは生きる上での基本となり、学校へ行く、習い事をする、スポーツをする、など何をするにも食べたものからエネルギーを生み出して、活動をします。
人は当たり前のように1日3食を食べていますが、そもそも1日に何回食べるのか、いつ食べるのか、何を食べるのかなど食に関して基本的な知識を身につけ、食べても安心なものかどうか、健康に害はないか選ぶ力をも身につけていくことで、生涯健康な心と体を培っていくことができます。
特に子どもたちには、健康な心と体を培っていくために必要な食の知識、食の選択の仕方、判断する力を伝え、食を通じて健康な体づくりとそれを維持することの大切さを伝えていくことが大事とされています。
何をどれだけ、いつ食べるのかが大事
年齢や活動量などにより、どのような食材をどのくらい食べるのか、どのようなタイミングで食べるのかは、特に成長期の子どもたちにはとても大切なことです。
好きなものだけを好きなだけ食べる、お菓子でお腹がいっぱいになってしまう、ということにならないよう、基本的な栄養素を知り、バランスよく食事を用意しましょう。
栄養が偏っていないか、バランスが取れているかを判断する
栄養が偏っていないか、バランスが取れているかを判断するには以下の2つが良く知られています。
○ 食事バランスガイド
○ 一汁三菜
「食事バランスガイド」とは、厚生労働省と農林水産省が共同で策定したもので、健康的な食生活を実現するため、摂取する食品の組み合わせや摂取量の目安をイラストで示したもので1日に、「何を」、「どれだけ」食べたらよいかを考える際の参考になるよう、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したものです。(厚生労働省、農林水産省HP引用)
下記のイラストが食事バランスガイドです。バランスが取れていないとコマが倒れてしまうイメージとなっています。
「一汁三菜」は定食をイメージするとわかりやすいでしょう。メインとなる主食(白米や麺類)の他、1品以上の汁物、メインの主菜(おかず)が1品、副菜が2品の合わせて三菜を揃えます。
「一汁三菜」には乳製品、果物を添えるようにします。
忙しい毎日の中での食事の用意のたびにこれらを確認したり、品数を増やすのはなかなか大変なことです。
必ずしも「すべてを手作りしなくては。外食や中食は体に悪い、良くない。」と思わずに、それよりも子どもたちが大きくなるまでの末長い期間、バランスの取れた食事の用意が出来ることの方が大事です。
そのために、食事の用意をする人が一時的に無理することなく、出来る時は手作りで、しんどい時には外食や中食もOKとおおらかに考えておくことが良いでしょう。
バランスが取れているかを確認するシンプルな方法
食事のバランスが取れているのかを確認するとてもシンプルな方法としては、食事の「色」も参考になることを知っておきましょう。
具体的には、食卓にその日の献立がならんだ時の食材の色を数えます。
白米は白。
味噌汁は茶色、具にナスが入れば黒。
主菜や副菜にパプリカが入れば赤や黄色、レタスやきゅうりを使っていれば緑。
そこにトマトを加えると赤が入ります。
せめて5色以上の色で食卓を揃えましょう。
黒ゴマ、白ゴマ、貝割れの緑、パセリの緑、ミニトマト、ラディッシュ、レモンなどおかずが出来てから「かける」だけ、「添える」で色が増やせる食材を常備しておくと便利です。
どれだけ食べればよいのか
どれだけ食べるのか、量については農林水産省から出されている「一日に必要なエネルギー量と摂取の目安」が参考になります。
「一日に必要なエネルギー量と摂取の目安」には、年齢によって1日に必要な量がカロリーで示されています。
実際には年齢によって一律の量ではなく、その子その子の活動量によって、食べてほしい必要な量は変わります。
学校の登下校だけの子と、放課後や週末にクラブチームやスポーツスクールなどの習い事、学習塾などに行く子とではその必要量が大きく変わりますよね。
お子さんの活動量に応じて、また成長に応じて必要な量は増えていきます。
活動量が多いのに食事量が少ないと成長が遅い、大きくならない。
その逆で、
活動量が少ないのに食事量が多いと子どもの肥満につながります。
子どものころの食生活がその後の健康を脅かすことを理解し、適切な食事の量を用意することが大事です。
子どもにとって必要な栄養素とは
これだけを食べておけば良い、という栄養素はまずありません。
基本的にはどの栄養素もバランスよく摂取する必要があり、背を伸ばすためにはこれ、増量するためにはこれ、と決まった栄養素があるわけではありません。
そんな中でも子どもたちの長に欠かせない重要な栄養素を上げるとすると、
①たんぱく質
たんぱく質は体の構成要素です。筋肉や、骨、血液等を作る材料となっています。細胞を作るにも必要で、良質なたんぱく質といわれる肉、魚、卵、豆腐などがその代表です。
②カルシウム
カルシウムは骨や歯を丈夫にします。パセリやモロヘイヤ、水菜や小松菜などの野菜、小魚、牛乳、ヨーグルト、チーズなどがおすすめです。小魚は粉末になっている出汁なども上手に利用しましょう。
③鉄
鉄は血液を作るのに重要な働きをしていて、赤身の肉や魚、レバーの他、パセリやほうれん草、枝豆、ネギなどの野菜、大豆製品に含まれています。
④マグネシウム
マグネシウムは筋肉の収縮や骨、歯の構成に関わっています。マグネシウムは魚介類、ひじきや昆布、わかめなど海藻類に多く含まれています。野菜ではバジルや切干大根にも含まれています。
⑤ビタミン類
ビタミン類は免疫力向上や視野を良くする働きをし、カラフルなフルーツや野菜に多く含まれています。
上記①~⑤の栄養を含む食材を組み合わせ、バランスの取れた食事を用意してみましょう。
偏食や小食のお子さんの対処法
偏食や小食のお子さんは、疲れやすい、寝て起きても疲れが取れていない、体力がない、成長が遅いなどの症状が出ることがあります。
お子さんにしっかりごはんを食べてもらいたい時に出来る事は
①よく噛むこと
偏食や小食であまり量を食べられないのであれば、食べた食材はせめてしっかり消化吸収出来るよう、良く噛んで食べたものの消化吸収をしやすくします。
②食事を楽しく食べる時間となるよう工夫する
「食べること」はもちろん、「料理を作ること」から楽めるイベントをすることで、子どもが食事を楽しむ時間にすることができます。苦手な食材も一緒に料理する際に使ってみる、料理の際には目で見て「美味しそう」と思えるカラフルな食材選びやお皿選び、かわいいピックなどを使用しても良いでしょう。
③1日3食ではなく何回かに分けて食べる
1度に大量の食事よりも、何回かに分けて頻繁に食べる方が食欲がわきやすいといわれています。3食の他に、補食を取り入れて1日トータルでの食事の量をみていきましょう。その際に、3食以外に食べるものはお菓子ではなく、ごはん(食事)であることが重要です。
④好みに合った味付けや食材を選ぶ
偏食のお子さんの場合は特に、子どもの好きな食材や料理、味付けを取り入れます。
嫌いなものを食べられるようになるのは、しっかり食事の量を摂れるようになってからでもOK、とおおらかな気持ちで用意をします。
一緒に好きな食材や味付けの話をしたり、好きなレシピ本を見たり、一緒に作ったりしてごはんを楽しく食べる場にしましょう。
⑤少量でも栄養価の高い食材を選ぶ
少量でも栄養価の高い食品を摂るようにします。たんぱく質やビタミン・ミネラルが豊富な食品を選び、必要な栄養を確保しましょう。
ごはん(白米)を多く食べられないのであれば、もちやさつまいもなどを取り入れてみる。
さつまいもは野菜の中でも良質なたんぱくを含む野菜となっています。またブロッコリーは抗酸化ビタミンを多く含むほかたんぱく質、食物繊維をも含む食材です。
⑥スポーツのあとの食事に注意する
習い事やクラブチームなどの練習後は特にエネルギー補給が大事です。
一生懸命動いた後は体が電池切れをおこしています。
早めに水分と体のエネルギーとなる糖質を取りいれてあげましょう。
・食育は子どもが健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるもの
・食事を用意する人が無理をせず末永く子どもたちの食事のサポートをすることが大事
・食事バランスガイドや一汁三菜、食事の色の数でバランスの取れた食事になっているか確認
・子どもにとって必要な栄養素が取れる食材を使う
参考文献)
食事バランスガイド|農林水産省
実践食育なび|農林水産省