読み聞かせはいつまで必要? 読み聞かせと非認知能力の関係
更新日: 2023.09.07
投稿日: 2023.09.08
子どもが大好きな、身近な大人による読み聞かせ。
小学校に入り、自分で本が読めるようになるとやめてしまう家庭が多いようですが、実は中学生でも「読み聞かせ」にはさまざまな効果があることがわかっています。
子どもの非認知能力を育てる「絵本(本)の読み聞かせ」について、さまざまな角度から考えてみましょう。
もくじ
読み聞かせ習慣が子どもの非認知能力を育む
子育てや仕事に忙しい毎日を過ごしていると、つい後回しになりがちな本の読み聞かせの時間。
子どもにプラスになることはわかっていても、「この時間に家事を終わらせたい」という思いから、読み聞かせをリクエストされても後回しにしてしまうこともありますね。
しかし絵本や本の読み聞かせは、非認知能力を身につける一番の近道。
幼い頃から読み聞かせの「種」を蒔いておくと、中学→高校→大学→社会人と子どもが成長していく間に、広く高く枝葉を伸ばし大きな実をつけることがわかっています。
読み聞かせによって得られる効果や身につく非認知能力についてみていきましょう。
○ ボキャブラリーや表現力など言語機能の発達・促進
○ 「考える力」が育つ
○ ストレスが緩和され精神的に安定する
○ 読書好き・本好きになる
○ 情緒豊かな感性が育つ
ボキャブラリーや表現力など言語機能の発達・促進
子どもは周囲の人たちの言葉や会話から語彙を増やし、表現力を学び取っていきます。
会話やテレビなどから習得する言葉に加えて、本からも言葉を吸収できたら、ボキャブラリーが増え、的確な使い方もより早く・より多く身につけられるでしょう。
オハイオ州立大学の研究チームによると、幼稚園入園前の子どもに週1〜2冊の読み聞かせをすると6万3570単語、毎日1冊では26万6600単語、毎日5冊では140万単語を耳にすることになるのだそう。
(https://news.osu.edu/a-million-word-gap-for-children-who-arent-read-to-at-home/)
ほんの小さな習慣が、子どもの言語習得に大きな影響を与えることを物語っています。
「考える力」が育つ
子どもは読み聞かせをしてもらいながら、
・次はどんなことが起こるだろう(想像力)
・もっとこうすればいいのに(分析力)
など、さまざまなことを考えながらストーリーを追っているので、自然と論理的思考や想像力、分析力、共感力、愛着といった非認知能力を身につけられます。
さらに読む側が「次はどうなると思う?」「どうして泣いているのかな」といった問いかけをしながら進むと、もう一段深く考えたり、想像する力がつくでしょう。
ストレスが緩和され精神的に安定する
「身近な大人が声を出して本を読んでくれる」「そしてその本を膝の上や間近な距離から一緒に見る」という時間は、子どもにとって大切なスキンシップやコミュニケーションの機会になります。
そして「自分は大切にされている」「愛されている」と感じることができ、安心感を得ることができます。
40組の親子を対象に8週間の読み聞かせをしてもらったところ、読み聞かせの前と後では、母親の「子どもの行動に対するストレス」が圧倒的に少なくなったというデータもあります。
これは本を読んで聞かせることによって子どもの精神面が落ち着き、母親がストレスに感じるような行動が減ったためと考えられるそうです。
つまり本の読み聞かせによって子どもの精神的な安定がもたらされ、それは周囲の大人にもよい影響があるのです。
読書好き・本好きになる
幼い頃から読み聞かせをしたり、親子の読書タイムを取り入れていると、読書の習慣は自然に身につきます。
子どもと行く場所の一つに「図書館」や「本屋」を組み込んで、ちょっと遊びに行く感覚で本に触れるようにしても読書が身近に感じられるようになるでしょう。
読書も勉強もスポーツも、「やった方が子どもにプラスになるもの」は習慣化さえしてしまえば、無理なく日常に取り入れられるもの。
生まれながらに「絵本好き」「読書が苦にならない」という子どももいますが、放っておいたらゲームやテレビなどに夢中になってしまうのも仕方ありません。
できれば「寝る前の15分は読み聞かせ」「宿題が終わったら読書タイム」など、毎日タイミングを決めて行うといいですね。
情緒豊かな感性が育つ
読み聞かせは読み手がストーリーを読んで聞かせていますが、子どもは自分の感性を働かせながら、主体的に物語の世界を旅しています。
映画やアニメなどの映像と違い、場面が動かず、限られた枚数の絵で表現される絵本は、子どもが想像力を羽ばたかせるには最高の教材です。
子どもが絵本や本の世界に没頭していたら、子どもが自由に物語の世界を堪能できるように、そっとしておく時間も大切ですね。
読み聞かせは何歳まで続けたらいいの?
幼い頃は読み聞かせをする機会が多いものの、小学校に上がる頃から「自分で読めるようになったから」などの理由で、自然と読み聞かせ時間が少なくなる家庭が多いようです。
しかし中学生になっても「読み聞かせ」を行うことで、ストレスが緩和されたり、対人関係が安定したり、自己肯定感が高まるという調査結果があります。
読み聞かせをしてもらった中学生たちの感想を見てみると、「集中できるようになって、字もきれいになった」「読み聞かせの時間は自分の心を豊かにしたり、楽しませる時間だと思う」「国語の勉強のやる気に違いが出た」などとポジティブな気持ちになるようです。
本が読めるようになっても、自分で黙読するより、人に読んでもらった方が脳はリラックス状態になることもわかっています。
子どもの成長にともない、子どもが自分で本を決めたり、本人の好きなタイミングに合わせたりしながら、小学校入学〜高学年〜中学生になっても、引き続き読み聞かせの時間を持つのが理想です。
読み終わった後にお互いの感想を言い合ったり、「面白そうな本を見つけたよ」などと本を真ん中にした親子のやり取りが増えるといいですね。
本を介したコミュニケーションだからこそ伸びる「非認知能力」
読書量が多い子は、「想像力」「思いやり」「先読み力」「共感力」などの非認知能力が身につくと言われています。
本を子どもに読んで聞かせる「読み聞かせ」は、読み手からの一方通行の働きかけと思われがちですが、実は本を介した相互のコミュニケーション。
ストーリーを追いながら「次はどうなるかな」「なんでこんなことをしたのかな」という問いかけで、子どもの想像力・共感力・考える力も引き出すことができます。
また読んだ後に、「あの時主人公が別の行動をしていたら、何が変わっただろう」「一番好きなキャラクターは?それはどうして?」と振り返ることで、物事や事態、思考を全体的に見る力や分析力、客観的思考力を鍛えることもできるでしょう。
あえて「悪者の○○って、実はいい優しいかも」などと逆説を唱えて反論させ、相手を説得する力、自分の考えを伝える技術を養うのも面白いですね。
読み進めるスピードをゆるめて、絵をじっくり味わう時間を作り、子どもの観察力や感じる力を育む時間も大切。
「今日楽しいこと、あった?」「今日の宿題は何が出たの?」など、ダイレクトなやり取りはもちろん、一冊の本や絵本について親子で感想を言い合い、続きを想像し合うといった本を介したコミュニケーションが子どもの幅広い非認知能力を育むでしょう。
・読み聞かせは「非認知能力」を育てる近道。
・小学校高学年〜中学生になっても読み聞かせを続けると、集中力が高まり精神的にも安定し、ストレス軽減になる。
・読み聞かせは本を介した親子のコミュニケーションである。
(参考文献)
・文部科学省 | 平成30年度委託調査「子どもの読書活動推進計画に関する調査研究」
・中学生に対する絵本の読み聞かせの効果の研究 | 徳島大学(医学部保健学科非常勤師 森慶子)
・アクティブ・ブレイン・クラブ | 子どもだけじゃない!読み聞かせの大人の効用とは
・『「本の読み方』で学力は決まる」 松崎泰/榊浩平/川島隆太著(青春出版社)