非認知能力が必要とされる理由
更新日: 2023.03.13
投稿日: 2019.12.03
自信、忍耐力、コミュニケーション力などといった非認知能力と呼ばれる一つ一つの力は、日本でも昔から大切にされてきた力です。保育園や幼稚園でも非認知能力を伸ばす教育がずっと行われてきました。
ところが、小学校に入学すると学力などの点数化できる認知能力を身に付けることが重視され、非認知能力を身に付けることはおろそかになっていく傾向にありました。
それが今、小学校以降の非認知能力の大切さが見直されています。
では、なぜ今非認知能力が注目を集め、重要視されるようになったのでしょうか。
それは、情報化やグローバル化が進み、これまでになかった時代の変化に柔軟に対応するためには、「非認知能力」を育むことが重要だと、言われはじめたことによります。
人生100年時代や人工知能(AI)との共存、VUCA時代など、新しい時代を表す言葉も次々と生まれています。
予測不能な未来を幸せに生き抜くために非認知能力が期待されているのです。
変化を恐れず、自ら考えて行動し、周囲の人々と力を合わせて生きていくために、今こそ非認知能力が必要なのです。
子どもたちの未来はどんな世界になっているの?
これからの社会はますますグローバル化や情報化が進み、より複雑な世界になっていきます。
100歳まで生きる人生100年時代の到来や学習機能を持つAI(人工知能)時代、予測不能なVUCA時代など凄まじいスピードで変化し、不確かな時代とも言われています。
不確かな時代を生き抜くためには、一人一人の力を最大限に発揮しつつも、周りの人々と協力して目標を共有したり、みんなで知恵を出し合ったりしながら、問題を解決していくことが大事です。
これからの教育に求められていることは、知識の詰め込みではなく、柔軟な発想やコミュニケーション力でどれだけ知恵を働かせることができるかということです。
そのような力が求められる時代になっていきます。
人生100年時代に向けて私たちができること
「人生100年時代」という言葉は、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの『LIFE SHIFT-人生100年時代の人生戦略』という本の中にある言葉です。
簡単に説明すると、「世界の長寿化によって100歳まで生きる時代になり、そこを生き抜くために、これまでとは違った人生設計をつくり出す力が必要である」と言うことが書かれています。
遠い将来の話のように聞こえるかもしれませんが、実はもう人生100年時代は始まっていて、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳以上生きると予測されています。
100歳まで生きるとすると、今の日本の「20年学び、40年働き、20年休む」という「教育→仕事→老後」の「老後」の後に、さらに20年多くある計算になります。
どうしたら人生100年時代を生き抜くことができるのでしょうか?
リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットは、充実した100年の人生を生きるためには、年齢に関係なく、夢や目標を持って、学び直しや転職をしたり、資産や健康について、柔軟に考えを見つめ直すことが必要だと言っています。
そして、生き方の選択肢はこれまでよりずっと多様化し、時代の変化に柔軟に対応しながら、自分で自分の生きる道を選択し続けていかなければならないとも語っています。
今の日本の現状でも、会社に入社すると今まで経験のない業務やプロジェクトをいきなり任せられることがあります。
その場合、イチから学び、上司や同僚とコミュニケーションを図りながら、やり遂げなければなりません。
つまり、勉強できる能力や行動力、コミュニケーション能力など発揮しながら、柔軟に対応しないと会社で生き残っていくことはできないのです。
そんな時代の中で子どもが自分で生きる道を決め、自信を持って、夢や目標に向かって生きていけるかどうかが重要です。
人工知能(AI)時代の到来で世の中はどう変わっていくか
自動学習能力を持つAIは、20年後には人間が行ってきた仕事の約49%を奪うとまで言われています。中でも単純な認知能力の仕事は、ほぼAIに変わるとも言われています。
およそ半分の仕事がなくなってしまうと聞くと、AIに対してネガティブな印象を受けます。
ですが、研究者でメディアアーティストとしても有名な落合陽一さんは、「AIと人間の得意不得意を的確に把握して区別すれば、AIと人間のポジティブな共存と協働は可能」だと語っています。
落合さんが提案しているポジティブな共存と協働の役割分担は次の通りです。
情報と状況を正確に管理して的確な指示を出す仕事
現場で実際に作業する仕事
さまざまな情報やアイデアを合成したり、そこから創造力を発揮して物事を成し遂げたり変えたりする仕事
ここで注目したいのが、「クリエイティブ・クラス」という仕事です。
このゼロからイチを生み出す仕事の根底には、「誰かを幸せにしたい」という想いや、「もっと幸せに、もっとよりよい世界に」などの意欲が存在しています。
この意欲の感情は人間にしか持てない力で、「人間らしさ」とも言えます。
クリエイティブ・クラスの仕事ができる人間になるためには、自分で問題を見つけ出したり、それを解決したりする力、そうです、非認知能力が必要になってくるのです。
予測不能なVUCA時代を生き抜くために
VUCA(ブーカ)とは、4つのキーワードの頭文字をとったビジネス用語です。元々はアメリカの軍事用語として使われていて「予測不能な状態」を意味する言葉でした。
- Volatility(変動性・不安定さ)
- Uncertainty(不確実性・不確定さ)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性・不明確さ)
現在では、複雑になりすぎた世界のビジネスや市場、個人のキャリアまでの社会経済環境を表す言葉として、注目されるようになりました。
この予測不能なVUCAの時代を生き抜くために求められるのは、変化する状況に合わせて考えて行動し続ける力や、主体性をもって諦めずにやり抜く力などです。
一人で乗り越えられない困難を、周りの人を巻き込んで解決していくリーダーシップも必要です。
変化することや予測不能なことが起きた場合に、受け入れることができる楽観性や柔軟性も必要となります。
- 100年時代やAI時代、VUCA時代を生き抜くために非認知能力が役立つ。
- 非認知能力は子どもたちが時代の変化に対応し柔軟に生きていくために欠かせない力。
- 将来に必要な力が認知能力から非認知能力に変わりつつある。
・学力の経済学(著者:中室 牧子、出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)
・学力で測れない非認知能力が子どもを伸ばす(著者:中山 芳一、出版:東京書籍)
・「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育(著者:ボーク 重子、出版:小学館)